スーパーマーケットの価格競争から抜け出す 商品価値の伝え方で売上と粗利益を高める方法

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーマーケットのマーケティング戦略

商品や売場にこだわっているのに、お客様へ十分に伝わらず、結局は価格で比較されていないでしょうか。スーパーマーケットが価格競争から抜け出すには、品質を高めるだけでなく、その理由を具体的に伝える必要があります。現場の当たり前を顧客価値に変える方法を解説します。

商品価値は理由まで伝えて初めて伝わる

結論から言えば、価格以外の比較軸をつくるには、単に「良い商品です」「新鮮です」と主張するだけでは不十分です。

なぜ良いのか、どの工程が品質を支え、その結果としてお客様にどのような利点があるのかまで具体的に示す必要があります。

売り手にとって毎日の作業は当たり前です。
しかし、お客様は仕入れ、検品、温度管理、加工、陳列、追加製造の現場を見ていません。伝えていない価値は、存在していても比較材料になりにくいのです。

新鮮という言葉だけでは違いが見えない

スーパーマーケットの売場では、「新鮮」「厳選」「こだわり」「手づくり」といった言葉が多く使われています。

どの店も似た表現を使えば、お客様には違いが見えません。
抽象的な言葉だけでは、商品を選ぶ理由になりにくいのです。

たとえば、鮮魚売場に「鮮度自慢の刺身」と書かれていても、何をもって鮮度が良いのかは分かりません。

お客様が目にするのは、商品の外観、価格、量目、消費期限などです。入荷後の検品や温度管理、加工時間、追加製造の方法までは見えません。

そこで、
「入荷時に温度と状態を確認」
「販売時間に合わせて少量ずつ加工」
「夕方にも刺身を追加製造」
のように、実際の作業を具体的に伝えます。
すると、お客様は鮮度を守るために店が何を行っているのかを理解できます。

さらに、
「食べ頃の状態で選びやすい」
「夕食の時間にもできたてを買いやすい」
など、作業がお客様にもたらす利点まで示します。

現場で行っている仕事の意味を、お客様が判断できる言葉へ変えることが重要です。

共通の工程でも顧客価値として説明できる

業界で一般的に行われている工程を、自社だけの技術であるかのように見せる必要はありません。

事実に反する独自性をうたえば、信頼を失います。
大切なのは、日常的な工程であっても、その目的とお客様の利点を正確に説明することです。

たとえば「鮮度管理を徹底しています」では、競合店との差が分かりません。
「入荷時に温度と状態を確認し、販売時間に合わせて少量ずつ加工しています」と伝えれば、鮮度を守る行動が見えます。

さらに「食べ頃の状態で、必要な量だけ選びやすい」と顧客の利点まで結びつけると、価値が理解されやすくなります。

スーパーマーケットの現場には伝えていない価値がある

商品価値の材料は、特別な設備や珍しい商品だけではありません。

日々の標準作業、品質管理、加工の工夫、売り切る努力の中にもあります。
次の項目は、実際に行っている事実がある場合に、売場で伝える価値へ変えられます。

青果部門

・入荷時に鮮度、傷み、熟度をどのように確認しているか
・産地、生産者、品種、糖度、食べ頃をどう見極めているか
・用途に合わせて少量、食べ切り、家族向けをどう用意しているか

「新鮮な果物」よりも、
「食べ頃を確認し、今日おいしく食べられるものをご案内します」の方が、担当者の仕事とお客様の利点が伝わります。

鮮魚部門

・産地や市場から、いつ、どの状態で入荷したか
・店内での加工時間、温度管理、刺身の追加製造をどう行うか
・魚種に合わせて、切り方、厚さ、盛り付けをどう変えているか

「鮮度自慢」だけで終わらせず、「夕方の需要に合わせて刺身を少量ずつ追加製造」など、販売時間と作業を結びつけて示すと説得力が増します。

精肉部門

・料理用途に合わせて、厚さ、部位、脂肪の整形をどう変えているか
・少人数世帯から家族世帯まで、量目をどう設計しているか
・産地や飼育方法など、確認できる情報をどう選びやすく示すか

「上質なお肉」ではなく、「生姜焼きで硬くなりにくい厚さにスライス」など、食卓での成功につながる説明に変えることが大切です。

惣菜部門

・店内調理、小分け調理、揚げ上がり時間をどう管理しているか
・だし、衣、味付け、食感のためにどの工程を守っているか
・昼食、夕食、少人数など、食べる場面にどう合わせているか

「手づくり」だけでは、何を手作業で行うのか分かりません。
「店内でだしを取り、売れ行きを見ながら少量ずつ仕上げています」のように、味につながる工程を示します。

商品価値を伝える5つの手順

1 現場の当たり前を書き出す

仕入れ、検品、保管、加工、陳列、補充、値引きまでの流れを確認します。
担当者へ
「毎日必ず行っていること」
「品質を守るために省かないこと」
を聞くと、価値の材料が見つかります。

2 顧客の利点に置き換える

工程を説明するだけでは、専門知識の紹介で終わります。
その作業によって、お客様が
「おいしく食べられる」
「選びやすい」
「調理に失敗しにくい」
「必要な量だけ買える」
など、何を得られるのかを明確にします。

3 抽象語を具体的な事実に変える

「新鮮」
「高品質」
「こだわり」
といった言葉を、時間、回数、産地、工程、担当者の判断基準へ置き換えます。

数値を使う場合は、実際に確認でき、継続して守れるものだけを表示します。

4 売場全体で一貫して伝える

POPだけに頼らず、商品名、写真、陳列、試食、関連販売、担当者の声かけをそろえます。

価値を伝えた商品が欠品していたり、鮮度や陳列状態が説明と一致していなかったりすると、信頼は続きません。

5 POSと現場で効果を検証する

売上高だけでなく、販売数量、買上率、平均単価、粗利益額、売切率、値引率、廃棄率を確認します。

結果を見て表現、商品、陳列位置、製造量を修正し、D-CAPで改善を続けます。

POPは短くても理由まで伝える

POPの役割は、商品を褒めることではなく、お客様が選ぶ理由を短時間で理解できるようにすることです。

基本は、次の順番で組み立てます。



一枚のPOPに情報を詰め込みすぎると、主張がぼやけます。
重点商品ごとに最も強い価値を一つ決め、根拠と利用場面を添えてください。

詳しい背景は、別の説明POP、動画、売場の写真、従業員の声かけへ分ける方法も有効です。
伝えるときに避けたい4つの失敗
・最高、厳選、こだわりなど、根拠のない抽象語だけで終わる
・担当者には分かる専門用語を使い、お客様の利点を説明しない
・一枚のPOPへ情報を詰め込み、何を選ぶ理由にしてほしいのか分からなくなる
・広告やPOPの説明と、実際の鮮度、品切れ、接客、売場状態が一致しない

価値訴求は、表現だけのテクニックではありません。
現場の事実を確認し、約束した品質を売場で実現し続けることが前提です。

価格競争から抜け出すために店長が始めること


まず一部門一商品から始めてください。店長と担当者が売場とバックヤードを一緒に見て、次の四つを確認します。
・この商品について毎日必ず行っていることは何か
・その作業は品質の何を守っているのか
・その結果としてお客様にどのような利点があるのか
・時間、回数、産地、写真など、示せる根拠は何か

答えを一枚のPOPと売場で表現し、販売数量と粗利益額、値引き、廃棄の変化を確認します。成果が出た方法は標準化し、他の商品や部門へ水平展開します。

この積み重ねが、価格以外の理由で選ばれる店をつくります。

よくある質問

Q.他社も行っている工程は差別化になりますか
他社も行っている工程は差別化になりますか
工程そのものが独自でなくても、その目的と顧客の利点を具体的に説明することで、選ぶ理由をつくれます。ただし、自社だけの技術であるかのような表示は避け、確認できる事実を正確に伝える必要があります。

Q.POPには何を書けばよいですか
最初に顧客の利点を書き、次にそれを裏づける工程や数値、最後に利用場面を示します。一枚につき主張を一つに絞ると、短時間で理解されやすくなります。

Q.効果はどの数値で確認すればよいですか
売上高だけで判断せず、販売数量、買上率、平均単価、粗利益額、売切率、値引率、廃棄率を確認します。価値が伝わっても製造量や在庫が合わなければ、利益にはつながりません。

まとめ

お客様は、売り手が当然だと思っている仕事を知りません。
だからこそ、現場にある事実を掘り起こし、その仕事が品質をどう支え、お客様にどのような利点をもたらすのかを言葉にする必要があります。

商品の価値を正確かつ具体的に伝えれば、価格だけの比較から一歩抜け出せます。
まずは重点商品一品について、現場の当たり前を一つ見つけ、顧客価値として伝えるところから始めてください。
(文:新谷千里)

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