スーパーマーケットの生産性を上げる7つの方法|「時間泥棒」を減らし、売上・粗利益・人時生産性を高める

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの業務改善

スーパーマーケットの生産性を上げるには、人を増やす前に「時間泥棒」を減らすことが重要です。
作業の見える化、標準化、適正な人員配置、在庫・ロス削減、KPI管理など、売上・粗利益・人時生産性を高める7つの改善策を解説します。

スーパーマーケットの生産性向上とは

スーパーマーケットの生産性向上とは、単に作業時間や人員を減らすことではありません。

ムダな作業を減らし、限られた人員と時間を、売上・粗利益・顧客満足につながる仕事へ振り向けることです。

具体的には、次のような状態を目指します。
・同じ労働時間で売上高を増やす
・同じ労働時間で粗利益高を増やす
・欠品、値引き、廃棄ロスを減らす
・売場に出る時間を増やす
・店長やチーフが改善を考える時間を確保する
・従業員の負担や残業を減らす
・お客様が買いやすい売場をつくる

全国スーパーマーケット協会の「2026年版スーパーマーケット白書」でも、経営コスト上昇がスーパーマーケット経営に与える影響が重要課題として取り上げられています。

人件費や仕入原価、物流費などの上昇が続くなか、生産性向上は単なる効率化ではなく、店舗と会社の利益を守るための経営課題です。
参考:全国スーパーマーケット協会「2026年版スーパーマーケット白書」

スーパーの現場にも「時間泥棒」がいる

もし、家に泥棒が入ってきたら、あなたは必死で抵抗するでしょう。
ところが、
店舗や会社の大切な時間を奪う「時間泥棒」に抵抗している経営者や店長は、決して多くありません。

スーパーマーケットの現場には、次のような時間泥棒が潜んでいます。
・商品や備品を探す時間
・指示を待つ時間
・売れない商品をつくり過ぎる時間
・商品を何度も移動させる時間
・売場とバックヤードを往復する時間
・やり直しや手直しに使う時間
・目的の曖昧な会議
・その都度発生する急な相談
・同じ内容を何度も説明する時間
・必要以上に細かい報告書をつくる時間

一つひとつは、5分、10分の小さなムダかもしれません。
しかし、
従業員20人が毎日10分ずつムダな作業をしていれば、1日で200分、1か月では膨大な時間になります。

問題は、働いている本人も管理者も、その時間を「仕事」だと思っていることです。

生産性が上がらないスーパーの共通点

業績が伸び悩んでいるスーパーマーケットでは、従業員が怠けているのではありません。
むしろ、
多くの人が真面目に、忙しく働いています。

それでも生産性が上がらないのは、個人の努力ではなく、店舗の仕組みに問題があるからです。

作業が標準化されていない

担当者によって、加工方法、品出しの順番、発注方法、値引きのタイミングが違います。

作業方法が統一されていなければ、教育に時間がかかり、作業品質にもバラつきが生まれます。

売上に合わせた人員配置になっていない

売上や客数の少ない時間帯に人が余り、ピーク時間には人が足りない。

月間や週間のシフトは組んでいても、時間帯別売上や作業量まで考えた人員配置ができていない店舗は少なくありません。

売れない商品をつくり過ぎている

加工や陳列に時間をかけても、売れなければ値引きや廃棄が発生します。

過剰製造は商品ロスだけでなく、製造、包装、値付け、陳列、値引き、廃棄という複数の作業を発生させます。

店長やチーフが作業に追われている


本来、店長やチーフが行うべき仕事は、問題の発見、数値分析、販売計画、人材育成、作業改善です。

ところが、
欠員対応や品出し、電話、会議、急な相談に追われ、改善を考える時間がなくなっています。

スーパーマーケットの生産性を上げる7つの方法


1.作業と時間を見える化する

最初に行うべきことは、「誰が、いつ、どの作業に、何分使っているか」を確認することです。

例えば、青果部門で次の作業時間を計測します。
・商品の荷受け
・開梱と仕分け
・加工
・袋詰め
・値付け
・品出し
・補充
・鮮度チェック
・値引き
・清掃

時間を計測すると、探す、待つ、運ぶ、やり直すといった、売上につながらない作業が見えてきます。

感覚ではなく、事実と数字から改善を始めることが重要です。

2.売上と作業量に合わせて人員を配置する

人員配置は、従業員の希望だけで決めるものではありません。

時間帯別の客数、売上高、入荷量、加工量、品出し量、レジ通過客数などに合わせて組み立てます。

特に重要なのは、次の3つです。
・開店前の品出し・製造時間
・昼と夕方のピーク時間
・ピーク前の最終補充時間

売上の高い時間帯に商品と人員を集中させれば、欠品を減らし、販売機会を増やせます。

「人を減らす」のではなく、必要な場所と時間帯に人を移すことが生産性向上の基本です。

3.3Sで作業を標準化する

私が現場改善で重視しているのが、次の3Sです。
①標準化:最も良い作業方法を決める
②単純化:複雑な手順を減らす
③専門化:必要な技術を整理し、習得しやすくする

加工手順、盛り付け量、使用するトレー、陳列位置、値引き基準などを標準化すれば、誰が作業しても一定の品質とスピードを維持できます。

中小機構が運営するJ-Net21でも、小売業の生産性向上策として業務の標準化が挙げられています。
参考:J-Net21「小売業の生産性向上」

4.過剰製造と在庫を減らす

売上を増やそうとして商品を大量に並べても、売れ残れば利益は減少します。

特に、生鮮食品や惣菜は、つくり過ぎが値引き、廃棄、作業時間の増加に直結します。

改善のポイントは次の通りです。
・曜日別・時間帯別の販売実績を確認する
・ピーク時間から逆算して製造する
・一度に大量製造せず、小ロットで追加する
・最終製造時間を決める
・値引き率と廃棄率を単品別に確認する
・売れない商品を定番だからという理由で残さない

重要なのは、たくさんつくることではありません。
必要な商品を、必要な数量だけ、必要な時間に売場へ出すことです。
ジャスト・イン・タイムの考え方と行動が重要です。

5.売場とバックヤードの動線を短くする

よく使う商品、トレー、包材、器具が離れた場所にあると、歩行と運搬のムダが増えます。

一日に何度も繰り返す作業では、数メートルの差が大きな時間差になります。
・使用頻度の高い備品を作業台の近くに置く
・商品の保管場所を固定する
・台車に必要な資材をまとめる
・品出しの順番に商品を積む
・売場とバックヤードの往復回数を減らす
・作業場のレイアウトを工程順に組み替える

また、機器やデジタルツールの導入も有効です。
埼玉労働局は、小売業の改善事例として、在庫管理システムによる棚卸作業の削減や、自動釣銭機による精算時間・会計ミス・レジ待ちの削減などを紹介しています。
参考:埼玉労働局「卸売業、小売業の生産性向上の事例」

ただし、非効率な作業をそのまま機械化しても、十分な効果は出ません。
先に作業を整理・標準化し、その後に機器やシステムを導入することが重要です。

6.店長とチーフの時間を守る

急な相談、目的の曖昧な会議、欠員対応、細かな承認作業で一日が終われば、改善を考える時間は残りません。

そこで、先に「誰にも渡さない時間」を確保します。
・毎週月曜日の午前中は数値分析に使う
・毎日30分、売場確認と改善提案に使う
・会議には目的、議題、終了時間を設定する
・社員からの相談時間をまとめる
・現場で判断できる基準を明文化する

空いている時間は、誰かの予定で埋まります。
改善の時間は、空いたら取るのではなく、先に確保することが必要です。

7.KPIを決めて毎週改善する

生産性向上は、「忙しくなくなった」「作業が楽になった」という感覚だけでは判断できません。

次のKPIを継続的に確認します。
①人時売上高
人時売上高=売上高÷総労働時間
1時間の労働によって、どれだけの売上高を上げたかを示します。

②人時粗利益高
人時粗利益高=粗利益高÷総労働時間
1時間の労働によって、どれだけの粗利益高を生み出したかを示します。

③労働分配率
労働分配率=人件費÷粗利益高×100

生み出した粗利益高のうち、どれだけを人件費として使用しているかを確認します。

その他の重要KPI

・値引率
・廃棄ロス率
・在庫金額
・在庫回転日数
・欠品率
・残業時間
・部門別作業時間
・時間帯別売上高
・製造数量と販売数量

KPIは毎月見るだけでは不十分です。
週単位で確認し、問題があればすぐに作業方法、製造数量、人員配置を修正します。

生産性向上は「作業を減らすこと」が目的ではない

作業を効率化して生まれた時間を、そのまま人員削減だけに使うと、従業員の不安や反発を招きます。

生み出した時間は、次の仕事に振り向けます。
・売場の鮮度管理
・欠品商品の補充
・お客様への声掛け
・試食販売
・商品説明や提案
・売場演出
・従業員教育
・新商品の開発
・販売計画と数値分析

生産性向上の本当の目的は、従業員を忙しく働かせることではありません。
ムダを減らし、お客様にとって価値のある仕事を増やすことです。

30日で始めるスーパーの生産性改善

第1週:作業時間を計測する
まず、1部門を選び、誰がどの作業に何分使っているかを記録します。

第2週:最大のムダを一つ減らす
探す、待つ、運ぶ、つくり過ぎるなど、最も時間を使っているムダを一つ選びます。

第3週:改善した作業を標準化する
作業手順、使用器具、保管場所、完成基準を決め、写真付きの作業手順書にします。

第4週:KPIで効果を確認する
作業時間、人時売上高、人時粗利益高、値引率、廃棄率などを改善前と比較します。
効果が出た方法は、他の曜日、他部門、他店舗へ水平展開します。

よくある質問

Q.人を減らせば生産性は上がりますか?
単純に人員を減らすだけでは、欠品、売場の乱れ、残業、接客力低下につながる可能性があります。先にムダな作業を減らし、必要な時間帯へ人員を再配置することが重要です。

Q.どの部門から改善すべきですか?
作業量が多く、値引きや廃棄ロスが発生しやすい惣菜、鮮魚、青果などは改善効果が見えやすい部門です。ただし、店舗ごとに課題が違うため、作業時間と数値を確認して決めます。

Q.設備やシステムを導入すれば生産性は上がりますか?
導入するだけでは上がりません。現在の作業を見える化し、ムダを減らし、作業を標準化したうえで導入する必要があります。

Q.最も重視すべき数値は何ですか?
売上高だけでなく、人時売上高、人時粗利益高、値引率、廃棄率、在庫金額を組み合わせて確認することが重要です。

まとめ|時間泥棒を減らせば、スーパーの利益は変えられる

スーパーマーケットの生産性を上げるために、最初から大規模な設備投資を行う必要はありません。

まず、店舗の中にある「時間泥棒」を見つけることです。
①作業を見える化する
②売上に合わせて人員を配置する
③3Sで作業を標準化する
④過剰製造と在庫を減らす
⑤売場とバックヤードの動線を短くする
⑥店長とチーフの改善時間を守る
⑦KPIを使って毎週改善する

忙しさは、成果ではありません。
同じ時間で、どれだけお客様に価値を提供し、売上と粗利益を生み出せたかが重要です。

あなたの店舗では、従業員の大切な時間が、何に使われているでしょうか。

その作業は、本当に売上、粗利益、顧客満足につながっているでしょうか。

一つのムダを発見し、
一つの作業を変えることが、
スーパーマーケットの生産性と営業利益を高める第一歩になります。

サミットリテイリングセンター
代表 新谷千里

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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