安売りを続けても利益は残らない|スーパーマーケットが「価格以外の来店理由」をつくる方法

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの営業戦略

スーパーマーケットが価格競争から抜け出すには、安売りではなく、お客様の生活上の悩みを解決する価値づくりが必要です。
惣菜部門を事例に、
選ばれる店になるためのポジショニングと売場改善の考え方を解説します。

特売を増やしても、お客様は定着しない

競合店が価格を下げると、自店も価格を下げる。
チラシ商品の価格をさらに安くし、ポイント倍率を上げ、特売日を増やす。
このような施策によって、一時的に客数や売上が伸びることはあります。

しかし、
値下げによって増えたお客様は、さらに安い店が現れれば、そちらへ移ってしまう可能性があります。

その結果、
売上は上がっても、粗利益額や営業利益が残らないという問題が起こります。

スーパーマーケットが安売り競争から抜け出すために必要なのは、単に価格を下げることではありません。
「この店に来ると、どのような悩みが解決するのか」
という、価格以外の来店理由を明確にすることです。

ポジショニングとは「誰に、どのような価値を届けるか」を決めること

ポジショニングというと、目立つキャッチコピーや広告表現を考えることだと思われがちです。

しかし、
本来のポジショニングとは、
「自店は、誰の、どのような困りごとを解決する店なのか」
を決めることです。

例えば、
同じスーパーマーケットでも、地域によってお客様の生活環境は異なります。

高齢者が多い地域では、少量商品、食べやすい商品、大きく読みやすい表示が求められます。

子育て世帯が多い地域では、価格だけでなく、ボリューム、栄養、調理のしやすさが重要になります。

共働き世帯が多い地域では、短時間で食事を準備できる商品や、夕方でも十分に選べる品揃えが必要です。

すべてのお客様に、すべての価値を提供しようとすると、店の特徴は見えにくくなります。
まずは、自店が最も役に立てるお客様を明確にすることが重要です。

【改善事例】惣菜部門を「商品を製造する部門」から変える

惣菜部門の仕事を、どのように説明しているでしょうか。

「弁当をつくる」
「揚げ物を製造する」
「商品をパックして陳列する」

これらは、すべて必要な仕事です。
しかし、
これは店舗側の作業内容を説明しているだけであり、お客様にとっての価値は十分に伝わりません。

惣菜部門の仕事を、
お客様への価値で考えると、次のように定義できます。

「忙しいお客様の食事づくりの負担を減らし、短時間でおいしい食卓を整える部門」

このように仕事の定義を変えると、品揃えや売場づくりも変わります。

例えば、
共働き世帯が多い店舗であれば、夕方の来店時間に合わせて、主菜、副菜、ご飯ものを選べる状態にしておく必要があります。

単に揚げ物を大量に並べるのではなく、
「今日の夕食を短時間で完成できる」
「家族の人数に合わせて選べる」
「温めるだけですぐに食べられる」
といった、購入後の生活が想像できる提案が重要です。

POPについても、
「店内手づくり」
とだけ表示するのではなく、
「忙しい日の夕食を、短時間でおいしく整えられます」
と伝えた方が、お客様が得られる価値が明確になります。

価値は売場で証明しなければならない

「おいしい惣菜の店」を掲げても、夕方に商品が少なく、売場に空きが目立っていれば、お客様からは評価されません。

価値は、キャッチコピーだけでつくるものではありません。
商品の味、鮮度、製造時間、品揃え、盛り付け、温度管理、補充のタイミングまで、日々の現場で証明する必要があります。

特にスーパーマーケットでは、
企業理念や広告よりも、目の前の売場がお客様の評価を決めます。

そのため、
ポジショニングを決めた後は、その価値を次の要素に一貫して反映させることが重要です。
・品揃え
・商品開発
・売場レイアウト
・陳列とPOP
・接客
・製造計画
・従業員教育
・数値管理

経営者や幹部だけが価値を理解していても、現場の行動が変わらなければ、お客様には伝わりません。

価格ではなく「利用する理由」をつくる

価格競争から抜け出すためには、
「何を販売するか」
だけでなく、
「お客様の生活をどのように良くするか」
を考える必要があります。

惣菜を販売するのではなく、食事づくりの負担を軽くする。
商品を並べるのではなく、献立を決めやすくする。
安さだけを訴えるのではなく、便利さ、おいしさ、安心、健康、楽しさを具体的に伝える。

この視点が明確になれば、
商品政策、売場づくり、販促、作業方法、従業員教育の方向性が一本につながります。

中小スーパーマーケットには、
地域のお客様との距離が近く、要望を商品や売場に反映しやすいという強みがあります。

すべての分野で競合店に勝つ必要はありません。
自店が最も強みを発揮できる部門と、お客様に約束する価値を明確にすることが、価格以外の来店理由をつくる第一歩です。

よくある質問

Q.価格競争から抜け出すために、最初に何を確認すべきですか

自店を利用しているお客様の年齢、家族構成、来店時間、購入商品、生活上の不便や悩みを確認します。そのうえで、自店がどの悩みを解決できるのかを明確にします。

Q.ポジショニングを決めれば、すぐに利益は改善しますか

ポジショニングを決めるだけでは不十分です。商品、売場、販促、接客、作業方法を一貫させ、お客様が実際に価値を感じる状態をつくる必要があります。

Q.中小スーパーマーケットでも差別化できますか

可能です。地域のお客様の要望に合わせて、商品や売場を柔軟に変更できることは、中小スーパーマーケットの大きな強みです。得意部門や重点商品を明確にし、価値を集中して高めることが重要です。

まとめ

価格を下げるだけでは、一時的に売上が増えても、継続的に利益を残すことは難しくなります。

価格競争から抜け出すために必要なのは、
自店が役に立てるお客様を明確にし、
そのお客様の悩みを解決する商品、売場、サービスをつくることです。


価格ではなく、
価値と信頼で選ばれる店を目指すことが、粗利益額と営業利益を改善するための重要な経営課題です。
(文:新谷千里)

本記事の詳しい解説、具体的な改善事例、実践方法は、
サミットリテイリングセンター公式サイトの「経営のヒント」で紹介しています。
こちらから⇒ 価格競争から抜け出すポジショニング|スーパーマーケットの価値を高める4つの視点

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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