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スーパーマーケットの作業改善は、人員や作業時間を削減することだけが目的ではありません。
生産性向上によって生み出した時間と利益を、発見とワクワク感のある売場づくりへ再投資する方法を解説します。
目次
スーパーマーケットにおける作業改善の本当の目的は、単に作業時間や人件費を減らすことではありません。
無駄な作業を減らし、
生産性を高めることで生み出した「時間」と「利益」を、お客様が楽しめる売場づくりへ再投資することです。
バックヤードや日常業務は徹底して効率化する。
一方、
お客様が買い物をする売場には、
発見、驚き、季節感、提案、楽しさをつくる。
この両立こそが、これからのスーパーマーケットに必要な経営戦略です。
効率化だけでは、実店舗の魅力は高まらない
現在、あらゆる業界で「時間効率」が重視されています。
ネット通販、セルフレジ、キャッシュレス決済、ネットスーパー、AIによる商品提案など、お客様が欲しい商品を短時間で購入できる仕組みは急速に進化しています。
スーパーマーケットでも、
・品出し時間を短縮する
・発注作業を簡素化する
・レジ待ち時間を減らす
・商品を見つけやすくする
・少ない人員で店舗を運営する
といった効率化が進められています。
もちろん、これらの改善は必要です。
しかし、
買い物が「必要な商品を最短時間で購入するだけの行為」になれば、実店舗はネット通販との差別化が難しくなります。
便利さだけで競争すると、
価格、品揃え、物流、システム投資、店舗数など、資本力のある企業ほど有利になります。
中小スーパーマーケットが考えるべきことは、効率化そのものではありません。
重要なのは、
効率化によって生み出した時間と利益を、
何に使うのか ということです。
カルディコーヒーファームがつくる「発見する楽しさ」
カルディコーヒーファームの売場には、一般的な食品スーパーとは異なる魅力があります。
店内には、コーヒー、輸入食品、調味料、菓子、ワインなど、国内外のさまざまな商品が高密度に並んでいます。
通路を歩いていると、
「こんな調味料があったのか」
「この商品は、どのように食べるのだろう」
「珍しいお菓子を見つけた」
「以前買っておいしかった商品が、また並んでいる」
という『発見』が次々に生まれます。
お客様は、あらかじめ決めていた商品だけを購入しているのではありません。
売場を歩きながら、今まで知らなかった商品や食べ方に出会い、予定になかった商品を手に取っています。
カルディコーヒーファームが提供しているのは、単なる食品の販売ではありません。
世界の食文化や『新しい味を発見する買い物体験』です。
この体験があるからこそ、お客様は、
「今日は何があるだろう」
「新しい商品が入っているかもしれない」
という期待を持って来店します。
IKEAが提供するのは「商品」ではなく暮らしのイメージ
IKEAの売場も、商品を効率よく選ぶだけの場所ではありません。
ソファ、テーブル、照明、収納用品、食器などが、単品で並んでいるだけではなく、実際のリビング、寝室、キッチンのように組み合わせて展示されています。
お客様は売場を歩きながら、
「このような部屋にしたい」
「この収納方法なら、自宅でも使えそうだ」
「この照明と家具を組み合わせると雰囲気が変わる」
と、『自分の暮らしを想像』します。
最初は家具を見るために来店したお客様が、売場を見ているうちに、クッション、収納用品、照明、小物、キッチン用品などにも興味を持つことがあります。
これは、
商品単体ではなく、「商品を使った後の生活を具体的に見せている」からです。
IKEAが販売しているのは、家具や生活用品だけではありません。
商品を使うことで実現できる『暮らしのイメージ』を販売しています。
カルディとIKEAに共通する売場戦略
カルディコーヒーファームとIKEAは、業態も商品も異なります。
しかし、売場づくりには共通点があります。
それは、
必要な商品を並べるだけではなく、店内を歩く過程に、
・発見
・比較
・想像
・驚き
・新しい用途
・衝動的な欲求
を生み出していることです。
カルディでは、知らなかった食品や海外の商品に出会います。
IKEAでは、商品を組み合わせた暮らしの場面に出会います。
どちらも、買い物の途中に「予定外の出会い」があります。
この予定外の出会いが、 お客様の感情を動かし、買上点数や滞在時間、再来店意欲を高めています。
ただし、
表面的に商品を多く並べたり、売場を複雑にしたりすればよいわけではありません。
大切なのは、
お客様に何を発見してもらいたいのか
どのような生活を想像してもらいたいのか
を明確にした上で、売場を設計することです。
スーパーマーケットにも「発見」と「想像」が必要
スーパーマーケットの商品は、毎日の食生活に直結しています。
そのため、
本来はカルディやIKEA以上に、さまざまな提案ができる業態です。
しかし、
実際の売場では、商品をカテゴリー別に並べることだけが目的になっている場合があります。
お客様が商品を見ても、
「何をつくればよいか分からない」
「いつも同じ商品しか選ばない」
「新しい商品を試すきっかけがない」
という状態では、売場を歩く楽しさは生まれません。
スーパーマーケットでは、部門ごとに次のような発見をつくることができます。
青果売場
旬の野菜や果物を主役にして、産地、生産者、食べ頃、保存方法、料理用途を伝えます。
野菜、ドレッシング、肉、調味料を組み合わせ、「今夜のサラダ」や「簡単鍋料理」として提案することもできます。
鮮魚売場
魚を並べるだけでなく、旬、調理方法、食べ方、料理用途を提案します。
刺身、寿司、焼き魚、煮魚など、食卓での完成形を想像できる情報が必要です。
精肉売場
肉の部位別の特徴や調理方法を伝え、野菜、たれ、鍋つゆ、香辛料などとの関連販売を行います。
「肉を買う売場」から「今日の料理を決める売場」へ変えていきます。
惣菜売場
出来たて時間、店内加工、使用原料、調理方法などを伝え、手づくり感やライブ感を演出します。
夕方には主菜、副菜、寿司、サラダを組み合わせ、食卓全体を提案することが重要です。
日配・加工食品売場
新商品、地域商品、健康商品、簡便商品、季節商品などをテーマ別に編集します。
単品を陳列するだけでなく、比較する楽しさや、新しい食べ方を発見する機会をつくります。
売場には「選びやすさ」と「発見する余白」の両方が必要
売場づくりでは、分かりやすさも重要です。
牛乳を買いに来たお客様が牛乳売場を見つけられない、調味料の場所が分からない、通路が狭くて買い物しにくいという状態は、改善しなければなりません。
一方で、
すべてを最短距離、最短時間だけで設計すると、お客様は必要な商品だけを購入して帰るようになります。
重要なのは、
・必要な商品は見つけやすくする
・売場を歩く途中に新しい提案をつくる
・関連商品との出会いを増やす
・季節や旬を感じさせる
・商品を使った食卓を想像させる
という両立です。
便利さを否定するのではありません。
便利さを土台にしながら、その上に楽しさや発見を加えることが重要です。
作業改善の目的を「人員削減」だけにしてはいけない
スーパーマーケットの現場で作業改善を進めるとき、目的を人員削減だけに設定すると、現場は疲弊します。
作業時間を短縮しても、
空いた時間に別の作業を次々と追加するだけでは、従業員に余裕は生まれません。
その結果、
・売場を変更する時間がない
・POPを作成する時間がない
・試食販売ができない
・お客様に商品説明ができない
・部門間で打ち合わせをする時間がない
・従業員教育ができない
・新しい商品を研究する時間がない
という状態が続きます。
これでは、
生産性を高めても、お客様が感じる店舗の価値は高まりません。
作業改善によって生み出した時間は、追加作業で埋めるのではなく、売場の価値を高める活動へ計画的に振り向ける必要があります。
バックヤードは効率化し、売場には人の知恵を投入する
スーパーマーケットの作業は、大きく二つに分けて考える必要があります。
一つは、お客様から見えにくい作業です。
・発注
・荷受け
・検品
・在庫管理
・加工
・清掃
・帳票記入
・会議
・情報共有
・値引き作業
これらの作業には、
標準化、単純化、専門化を進め、徹底して無駄を減らす必要があります。
もう一つは、お客様が直接体験する売場です。
・商品を選ぶ
・新しい商品を発見する
・献立を考える
・POPを読む
・季節を感じる
・従業員と会話する
・出来たての商品を見る
・新しい食べ方を知る
この部分まで効率だけを優先すると、売場は単調になります。
したがって、経営戦略としては、
バックヤードと日常業務は徹底して効率化する。
そこで生み出した時間と利益を、楽しくワクワクする売場づくりへ投入する。
という考え方が重要です。
作業改善で生み出した時間を売場へ再投資する4つのステップ
1.現状の作業時間を把握する
まず、誰が、どの作業に、どれだけの時間を使っているのかを明確にします。
部門別、時間帯別、作業別に確認し、
・同じ作業を何度も行っていないか
・移動距離が長くなっていないか
・待ち時間が発生していないか
・必要以上に加工していないか
・売れない時間帯に過剰な品出しをしていないか
を調べます。
2.作業を標準化する
担当者によって方法が異なる作業は、生産性が安定しません。
加工手順、品出し方法、発注方法、清掃方法、値引き方法などを標準化し、誰が担当しても一定の時間と品質で作業できる状態をつくります。
標準化は、従業員を機械的に働かせるためのものではありません。
判断を必要としない作業を簡単にし、
売場づくりや接客など、人にしかできない仕事へ集中するために行います。
3.生み出した時間と利益を数値化する
作業改善によって、
・何時間削減できたのか
・人時売上高がどれだけ上がったのか
・在庫金額がどれだけ減ったのか
・値引きや廃棄がどれだけ減ったのか
・粗利益額がどれだけ増えたのか
を確認します。
改善成果を数値で確認しなければ、生み出した時間や利益がどこに消えたのか分からなくなります。
4.売場づくりの時間として再配分する
生み出した時間を、次の活動へ計画的に再配分します。
・重点商品の売込み
・売場変更
・関連陳列
・試食販売
・POP作成
・出来たて商品の提供
・売場での接客
・従業員教育
・地域商品の発掘
・新商品の研究
・季節催事の演出
「時間が空いたら実施する」のではありません。
売場づくりの時間を、あらかじめ作業計画や勤務計画に組み込むことが重要です。
利益を顧客体験へ再投資する
作業改善では、時間だけでなく利益も生み出せます。
例えば、
・過剰在庫を減らす
・値引きと廃棄を減らす
・欠品を減らす
・発注精度を高める
・重点商品を明確にする
・加工数量を適正化する
・部門間の重複作業をなくす
といった改善です。
そこで生み出した利益を、お客様が実感できる価値へ再投資します。
具体的には、
・売場什器や照明の改善
・鮮度を維持する設備への投資
・店内加工商品の開発
・オリジナル商品の開発
・POPや販促物の改善
・従業員教育
・試食や実演販売
・地域生産者との連携
・季節催事の強化
などが考えられます。
生産性向上によって利益を生み、その利益を顧客体験へ再投資する。
その結果、
来店客数、買上点数、客単価、再来店率が高まり、さらに利益が増える。
この好循環をつくることが重要です。
サミットリテイリングセンターが考える作業改善の目的
サミットリテイリングセンターのコンサルティングでは、作業改善を単なるコスト削減策とは考えていません。
作業改善の目的は、次の四つです。
1.無駄な作業を減らす
2.従業員の生産性を高める
3.時間と利益に余裕をつくる
4.その余裕を、楽しくワクワクする売場づくりへ再投資する
作業改善だけを進めても、お客様から見える店舗の魅力が変わらなければ、売上や利益の継続的な成長にはつながりません。
一方で、
楽しい売場をつくろうとしても、日常業務が非効率なままでは、従業員に時間も気力も残りません。
だからこそ、
作業改善と売場改善を別々に考えず、一つの経営戦略として進める必要があります。
効率化は目的ではなく、魅力ある売場をつくるための手段です。
これからのスーパーマーケットには、二つの力が必要です。
一つは、
無駄をなくし、限られた人員で効率的に店舗を運営する力です。
もう一つは、
お客様が「また来たい」と思える買い物体験をつくる力です。
便利さや効率性は、今後さらに当たり前になっていきます。
その中で実店舗が選ばれるためには、
「今日はどのような商品があるだろう」
「新しい食べ方が見つかるかもしれない」
「今夜の献立のヒントが得られる」
「季節を感じる売場が楽しみだ」
「従業員から役立つ情報を教えてもらえる」
という期待感をつくることが重要です。
カルディコーヒーファームのように、知らなかった商品や食文化との出会いをつくる。
IKEAのように、商品を使った後の暮らしを具体的に想像させる。
スーパーマーケットであれば、
商品を購入した後の食卓や家族の時間を想像させることができます。
売場は、商品を保管して販売するだけの場所ではありません。
お客様が商品と出会い、料理や食生活の新しい可能性を発見する場所です。
作業改善によって生み出した時間と利益を、お客様の楽しさとワクワク感へ変えていく。
それが、
価格競争だけに頼らず、地域のお客様から長く支持されるスーパーマーケットをつくる方法です。
よくある質問
Q1.作業改善を進めると、売場のサービスが低下しませんか?
作業改善の目的を人員削減だけにすると、サービスが低下する可能性があります。
重要なのは、無駄な作業を減らして生み出した時間を、接客、売場変更、商品提案、従業員教育などへ再配分することです。
Q2.楽しい売場とは、商品をたくさん並べることですか?
商品量を増やすだけでは、楽しい売場にはなりません。
季節、用途、料理、地域性、健康、簡便性などのテーマを設け、お客様が新しい商品や食べ方を発見できるように編集することが必要です。
Q3.カルディやIKEAの売場を、そのまままねれば良いですか?
そのまままねる必要はありません。
学ぶべきなのは、陳列方法ではなく、お客様に発見、想像、驚き、期待感を与えている点です。
自社の顧客や地域特性に合わせて、売場体験を設計することが重要です。
Q4.どの作業から改善すればよいですか?
発注、加工、品出し、在庫管理、値引き、清掃など、毎日繰り返している作業から着手します。
作業時間、移動距離、待ち時間、重複作業を確認すると、改善対象を見つけやすくなります。
Q5.改善効果は、どのような数値で確認しますか?
人時売上高、人時生産性、粗利益額、在庫金額、値引率、廃棄率、欠品率、買上点数、客単価などを確認します。
作業改善の数値と売場成果の数値を、両方確認することが重要です。
まとめ
作業改善は、現場をさらに忙しくするために行うものではありません。
無駄を減らし、生産性を高め、時間と利益の余裕をつくる。
そして、
その余裕を、お客様が楽しめる売場づくりへ再投資する。
カルディコーヒーファームがつくる「新しい商品との出会い」。
IKEAがつくる「商品を使った暮らしの想像」。
スーパーマーケットでも、
旬の商品、料理提案、関連販売、出来たて商品、地域商品などを通じて、発見とワクワク感のある買い物体験をつくることができます。
効率的な店舗運営と、楽しくワクワクする売場。
この二つを同時に実現することが、
これからのスーパーマーケット経営に求められています。
サミットリテイリングセンターでは、
店舗の作業実態、売上・利益データ、売場レイアウト、部門運営を確認し、作業改善と売場活性化を一体化したコンサルティングを行っています。
単に作業時間を削減するのではなく、
そこで生まれた時間と利益を、
店舗の魅力向上と営業利益の拡大につなげる仕組みづくりを支援します。
(文:新谷千里)


