粗利益率だけを見ても利益は増えない | スーパーマーケットが見直すべき5つの現場管理

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの営業戦略

仕入価格、人件費、電気代などの上昇により、スーパーマーケット経営を取り巻く環境は一段と厳しくなっています。
こうした状況では、粗利益率を上げることだけに意識が向きがちです。しかし、実際に営業利益を増やすためには、売価や仕入条件だけでなく、商品の選定、売場づくり、発注、製造、補充、在庫、値引き、従業員教育までを一つの流れとして見直す必要があります。
粗利益が上がらない店舗には、数字だけでは見えにくい、共通した現場の問題があります。

粗利益率ではなく「粗利益額」と「営業利益」を見る

粗利益額は、売上高から売上原価を差し引いた利益です。
しかし、
粗利益額が増えても、そのために作業時間や人件費が大きく増えれば、営業利益は残りません。

経営者や店長が確認すべきなのは、粗利益率だけではありません。
・販売数量
・商品別の粗利益額
・値引き数量
・廃棄数量
・欠品時間
・在庫数量
・作業時間
・人件費
これらを関連づけて見ることが重要です。

売上や粗利益率を単独で評価するのではなく、
「どの商品を、どれだけ販売し、どれだけの作業時間で、最終的にいくらの利益を残したのか」という視点が必要です。

粗利益が上がらない5つの原因

1.商品の価値がお客様に伝わっていない

安売りをすれば、一時的に販売数量が増えることがあります。しかし、値下げを続ければ、商品1個当たりの粗利益額は減少します。
価格競争から抜け出すためには、価格以外の購入理由を明確にしなければなりません。
お客様が商品を選ぶ理由には、価格だけでなく、鮮度、味、品質、旬、店内加工、調理の簡単さ、食べやすさなどがあります。
ところが、これらの価値が売場で表現されていなければ、お客様には伝わりません。
POPも、商品名と価格を表示するだけでは不十分です。
「店内で毎朝手づくりしています」
「フライパンで5分、夕食の一品が完成します」
「骨を取り除いているため、お子様にも食べやすい商品です」
このように、お客様が購入後のメリットを想像できる具体的な表現が必要です。

2.重点的に販売する商品が決まっていない

売場にあるすべての商品を、同じように目立たせ、同じように管理することはできません。
そのため、一定期間に販売数量や粗利益額を伸ばす「重点商品」を決める必要があります。
重点商品には、次のような商品が適しています。
・お客様からの支持が高い商品
・店舗の強みを表す商品
・販売数量を伸ばせる商品
・粗利益額への貢献が大きい商品
・競合店との差別化につながる商品
・関連商品を一緒に販売できる商品
ここで注意したいのは、粗利益率だけで判断しないことです。
粗利益率が高くても、販売数量が少なければ、店舗全体の粗利益額への貢献は限定的です。反対に、粗利益率が多少低くても、販売数量が多ければ、大きな粗利益額を生み出す場合があります。
重点商品は、販売数量と1個当たりの粗利益額の両面から選定します。

3.値引き、廃棄、欠品を別々に管理している

値引きや廃棄を減らすために、発注量や製造量を単純に減らすと、欠品が増える可能性があります。
欠品すれば、本来販売できたはずの商品を販売できません。さらに、「この店に来ても欲しい商品がない」という印象をお客様に与えることになります。
一方、商品を多く準備し過ぎれば、閉店前の値引きや廃棄が増えます。
したがって、値引き、廃棄、欠品は、別々の問題ではありません。
重要なのは、売れる時間に、売れる商品が、必要な数量だけ売場にある状態をつくることです。
曜日、天候、気温、時間帯別の販売数量、地域行事、チラシ商品、閉店時の残数などを確認し、発注量、製造量、補充時間を調整します。

4.従業員に作業の目的が伝わっていない

現場では、「この商品を多く出してください」「値引きを減らしてください」「在庫を減らしてください」といった指示が出されます。
しかし、何のために行うのかが伝わっていなければ、従業員は状況が変化したときに正しい判断ができません。
重点商品の補充を指示する場合は、
「この商品は夕方によく売れるため、午後4時までに売場を整えてください」
と、理由と期限を伝えます。
値引きを減らしたい場合も、単に値引き開始時間を遅らせるのではなく、
「一度に作る数量と製造する時間を見直しましょう」
と、原因に関係する作業を説明する必要があります。
従業員教育は、単に作業方法を教えることではありません。
作り過ぎ、欠品、発注ミス、補充の遅れ、手待ち時間などを減らし、粗利益と生産性を高めるための投資です。

5.数字と実際の売場を一緒に見ていない

売上高、粗利益率、値引き率、廃棄率などの数字は、問題を発見するための重要な情報です。
しかし、数字だけでは、なぜその結果になったのかまでは分かりません。
値引き率が高くなった場合でも、原因は一つではありません。
・製造数量が多過ぎた
・製造する時間が早過ぎた
・売場が目立っていなかった
・補充が遅れていた
・商品の価値が伝わっていなかった
・値引きを始める時間が遅かった
同じ数値でも、店舗や部門によって原因は異なります。

数値に変化があったときは、
実際の売場、バックヤード、作業方法を確認し、原因を特定する必要があります。

改善事例|惣菜の廃棄を減らすと欠品が増えた

ある惣菜売場で、廃棄を減らすために弁当の製造数量を減らしたとします。

閉店時の廃棄数量は減少しました。
しかし、
午後3時頃には主力商品が少なくなり、夕方の来店ピーク時には欠品が発生しました。
数字上では廃棄率が改善していても、本来販売できたはずの売上と粗利益を失っています。

このような場合、
単純に製造数量を増減するだけでは改善できません。

まず、
重点商品を一つ決め、1週間、次の数字を記録します。
・時間帯別の販売数量
・欠品した時間
・値引き数量
・廃棄数量
・閉店時の残数
そのうえで、一度に大量製造する方法から、販売時間に合わせた小分け製造へ変更します。

昼のピーク前、午後、夕方前というように製造時間を分ければ、売場の鮮度感を維持しながら、欠品と作り過ぎの両方を抑えやすくなります。

ここで見るべきなのは、廃棄率だけではありません。
販売数量、欠品時間、値引き数量、廃棄数量、作業時間を一緒に確認し、最終的に粗利益額と営業利益が増えたかを判断します。

重点商品一品から改善を始める

粗利益改善で、最初から売場全体を変える必要はありません。
まずは
重点商品を一品決めて、小さく改善を始めます。

サミットリテイリングセンターでは、現場改善を「D-CAP」の順序で進めています。
・Do:売場、製造量、補充時間などを変更する
・Check:販売数量、欠品、値引き、廃棄を確認する
・Action:結果が出なかった原因を特定し、方法を修正する
・Plan:確認した結果を次の発注・製造計画に反映する

最初から完璧な計画を立てるのではなく、
小さく実行し、数字と現場を確認しながら修正を続けます。


この積み重ねが、粗利益と営業利益の改善につながります。

まとめ|利益は毎日の現場管理から生まれる

粗利益が上がらない原因は、仕入価格や売価だけにあるのではありません。

商品の価値、重点商品、発注・製造・補充、値引き・廃棄・欠品、従業員教育、現場確認を連動させることが重要です。

まずは、
重点商品を一品決め、販売数量、欠品時間、値引き数量、廃棄数量、閉店時の残数を記録してください。

数字と売場を往復しながら改善することが、営業利益を確実に残す店舗運営につながります。

本記事の詳しい解説、具体的な改善事例、実践方法は、
サミットリテイリングセンター公式サイトの「経営のヒント」で紹介しています。

「スーパーマーケットの粗利益が上がらない5つの原因」完全版はこちらから
スーパーマーケットの粗利益が上がらない5つの原因 | 【若手社員に教えたい】営業利益を確実に残す現場改善策
(文:新谷千里)

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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