なぜ売場改善は進まないのか?  5店舗巡回で見えた「基本業務プロセス未実行」という本当の課題『真因』

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーマーケットの経営戦略

スーパーマーケットの売上・粗利改善が進まない原因は、販促不足だけではありません。5店舗の実地指導で見えた、加工指示書、作業分担、品質チェック、在庫管理、SV指導力の課題をもとに、利益改善の具体策を解説します。

売上が伸びない原因は「売場」だけにあるのではない

スーパーマーケットの現場を指導していると、売上や粗利が目標に届かない原因を、商品力や価格、競合店の影響だけに求めてしまうケースがあります。

もちろん、商品政策や価格政策は重要です。
しかし、
実際に店舗を巡回してみると、もっと基本的な部分に問題があることが少なくありません。

それは、
決められた基本業務プロセスが、現場で実行されていない
という問題です。

先日、クライアント企業の5店舗を巡回し、各部門チーフへの実地指導を行いました。
売場、バックルーム、作業状況、在庫、商品の品質、チーフの動き、パート従業員の作業手順を確認していくと、業績未達の原因は、単なる販売力不足ではありませんでした。

問題の中心にあったのは、
加工指示書の未実行、作業分担の不明確さ、品質チェックの欠如、非効率な作業フロー、そしてSVによる現場フォロー不足でした。

若手チーフの努力が成果につながらない理由

ある店舗では、若手チーフが意欲的に早朝から出勤していました。
一見すると、非常に頑張っているように見えます。

しかし、
現場を確認すると、早く出勤しているにもかかわらず、基本業務が十分に実行されていませんでした。

午後に売り切るべき商品が売場やバックルームに残り、翌日に作業が持ち越されている状態です。
これでは、どれだけ長時間働いても、売上や粗利の改善にはつながりません。
むしろ、
長時間労働が常態化し、コンプライアンス上のリスクも高まります。

重要なのは、長く働くことではありません。
決められた作業を、決められた時間に、決められた手順で実行することです。

そのためには、
チーフが一作業者としてバックルームに入り続けるのではなく、売場全体を管理し、作業分担を明確にし、売れる状態をつくる役割を果たす必要があります。

加工指示書が機能しなければ、現場は属人化する

今回の巡回で特に目立ったのが、加工指示書の未実行です。

加工指示書は、単なる紙の指示ではありません。
売上計画、在庫、作業量、人員配置、売場づくりをつなぐ、現場運営の基準です。

ところが、
加工指示書が徹底されていない店舗では、誰が、何を、どれだけ、いつまでに加工するのかが曖昧になります。
その結果、
チーフが自分で作業を抱え込み、売場確認や品質チェックが後回しになります。
パート従業員も、自分の担当範囲や優先順位がわからないまま作業するため、生産性が上がりません。
これでは、店舗全体の作業が個人の経験や勘に依存してしまいます。

一部のベテランがいる時だけ回る売場では、安定した利益は出ません。
誰が担当しても一定の成果が出るように、作業を標準化することが必要です。

粗利目標にあと1%足りない店舗がやるべきこと

ある店舗では、粗利目標にあと1%届いていませんでした。
この「あと1%」は、現場では非常に大きな差です。

粗利を改善するためには、大きく分けて二つの基本があります。
一つは、ロスを減らすこと。
もう一つは、売価を適正に引き上げることです。

特に季節重点商品については、開店から閉店まで売り切る意識を持って販促する必要があります。
今回の指導では、スイカを重点商品として、開店から閉店まで徹底して販売する戦略を提案しました。
しかし、
現場では売れ筋のスイカやブロックカットが欠品している一方で、優先順位の低い他のSKUのカット作業が行われていました。
これは、
現場の努力不足ではなく、粗利最大化のための優先順位が共有されていないことが原因です。

✓ 売れる商品を欠品させない。
✓ 粗利の取れる商品を目立つ場所で売る。
✓ 重点商品を決めたら、開店から閉店まで売り切る。
この基本を徹底するだけでも、粗利は大きく変わります。

在庫が少なく見えても、個別在庫が間違っていればロスは増える

別の店舗では、バックルームの在庫管理に問題がありました。

全体の在庫量は多くないように見えても、個別商品の在庫量が適正でなければ、食品ロスに直結します。
たとえば、
売れ数に対して仕込み量が多すぎる商品があると、夕方以降に売り切れず、値引きや廃棄につながります。
逆に、売れ筋商品の仕込みが少なすぎれば、販売機会を逃します。

在庫管理で重要なのは、総量を見ることではありません。
商品ごとの売れ数、販売時間帯、残数、値引き、廃棄を見て、適正な仕込み量に調整することです。

また、作業動線にも問題がありました。
たとえば、
スイカカットの作業で、計量のたびに何歩も移動するような非効率な動きが発生していました。
このような小さなムダは、一つひとつは目立ちません。

しかし、
毎日、複数人で、何十回も繰り返されると、大きな人件費ロスになります。

作業改善とは、特別なことをすることではありません。
現場のムダな一歩、ムダな持ち替え、ムダな確認を減らすことです。

14時〜15時の品質チェックが売場の信頼を決める

一見、整然としている売場でも、品質に問題があるケースがあります。

特に生鮮部門では、14時から15時の品質チェックが重要です。
午前中に陳列した商品が、午後になって品質劣化していないか。
その日に売り切るべき商品が、売場に放置されていないか。
値引き、売り切り、加工転用、撤去の判断ができているか。
ここを見なければ、売場の信頼は落ちます。

お客様は、売場全体を細かく分析しているわけではありません。
しかし、
傷んだ商品、鮮度の悪い商品、売り切り姿勢のない売場を見ると、無意識に「この店は鮮度が弱い」と判断します。

特に青果、鮮魚、精肉、惣菜では、品質管理そのものが店の信用です。
チーフには、目利きの知識が必要です。
ベテランであっても、品質判断の基準が曖昧であれば、売場管理は不十分です。
だからこそ、実物を使った目利き研修が必要になります。

SVが現場を見られなければ、改善は定着しない

今回の巡回で見えたもう一つの大きな課題は、SVやバイヤーによる現場確認・指導の仕組みです。

会社には、計画やオペレーションルールがあります。
しかし、
それが現場で実行されているかを確認し、未実行であれば具体的に指導する仕組みが弱いと、改善は定着しません。

SVの役割は、店舗を回って状況を眺めることではありません。
✓ 現場の問題を見つける。
✓ 原因を掘り下げる。
✓ チーフに具体的な改善行動を示す。
✓ 次回訪問時に実行状況を確認する。
✓ 成功事例を他店へ水平展開する。
この一連のマネジメントサイクルを回すことです。

売上や粗利が改善しない店舗には、必ず原因があります。
その原因を「なぜ、なぜ、なぜ」と掘り下げ、真因までたどり着かなければ、改善は表面的なものになります。

お盆商戦・ギフト売場も早期展開が重要

今回の巡回では、お盆商戦に向けたギフト売場についても確認しました。
ギフト商戦では、早期に売場を拡大し、少量多品種で展開して、お客様に認知してもらうことが重要です。

売場をつくるのが遅れると、お客様の購買候補に入る前に、競合店で購入されてしまいます。
また、売場場所の設定、POPの掲示、重点商品の見せ方も重要です。

ギフトは、ただ商品を並べれば売れるものではありません。
「誰に贈るのか」
「どの価格帯が選びやすいのか」
「どの商品が地域のお客様に合っているのか」
これらを考えたうえで、売場を設計する必要があります。

数字が改善していても、ゴールはまだ遠い

今回の企業では、全体のレベルは以前より上がっており、数字も改善傾向にあります。
これは大きな前進です。
しかし、まだゴールに到達したわけではありません。
マラソンでいえば、スタートして100メートル進んだ段階です。
大切なのは、ここからさらに加速できるかどうかです。

そのためには、
各店舗の課題を一つずつ解決し、属人的な運用から脱却しなければなりません。
加工指示書のルールを守る。
作業分担を明確にする。
重点商品を欠品させない。
14時から15時に品質チェックを行う。
適正在庫を維持する。
SVが現場でフォローする。

こうした基本を徹底することで、粗利改善、売上向上、ロス削減、作業時間短縮、そして定時出退勤の実現につながります。

スーパーマーケットの利益改善は「基本の実行力」で決まる

スーパーマーケットの利益改善に、魔法の方法はありません。
大切なのは、現場で決めたことをやり切る力です。

どれだけ良い計画を作っても、
売場で実行されなければ成果は出ません。
どれだけ優秀なチーフがいても、
属人的な運用に頼っていては、店舗全体のレベルは上がりません。
どれだけSVが店舗を巡回しても、
具体的な確認と指導がなければ、改善は定着しません。

利益を出す店舗は、特別なことをしているのではありません。
基本を徹底しています。
✓ 売れる商品を欠品させない。
✓ 品質の悪い商品を売場に残さない。
✓ 在庫を適正に持つ。
✓ 作業を標準化する。
✓ 人の動きをムダなく設計する。

そして、現場で起きている問題を放置せず、すぐに改善する。
これが、営業利益を残すスーパーマーケットの共通点です。

まとめ:現場改善は「見る・決める・やり切る」で成果が出る

今回の5店舗巡回で改めて確認できたのは、スーパーマーケットの業績改善は、現場の基本行動の積み重ねで決まるということです。

売上が悪い、粗利が足りない、人手が足りない、ロスが多い。
これらの問題は、個別に見えるようで、実は現場の業務プロセスと深くつながっています。
だからこそ、現場を見なければ本当の原因はわかりません。

現場を見て、
問題を特定し、
優先順位を決め、
チーフとSVが実行し、
次回その内容を確認する。


このサイクルを回し続けることが、利益改善の近道です。

サミットリテイリングセンターは、
スーパーマーケットの現場に入り、
結果の出ない『真因』を見つけるために、
売場、作業、在庫、品質、人の動きなどの『現場の事実』を観察します。
そして、
日々の行動の結果としての実績数値を確認しながら、
営業利益改善につながる(すぐに成果につながる)具体策を指導しています。

売上改善や粗利改善に悩んでいる企業ほど、
まず確認すべきなのは、派手な販促策ではありません。
基本業務が、現場で本当に実行されているか
ここから、すべての改善が始まります。


スーパーマーケットの売上・粗利改善が進まない原因は、
販促や価格だけではなく、加工指示書、作業分担、品質チェック、在庫管理、SV指導などの基本業務プロセスが現場で実行されていないことにあります。
今回、5店舗の実地指導では、
属人的な作業、長時間労働、売れ筋欠品、食品ロス、品質チェック不足が確認されました。
改善には、
業務標準化、目利き教育、14時〜15時の品質確認、重点商品の売り切り、SVによるフォローアップが不可欠です。

よくある質問

Q. スーパーマーケットの粗利改善で最初に見るべき点は何ですか?
A. まず、ロス、値引き、欠品、在庫、重点商品の販売状況を確認します。
特に、売れ筋商品を欠品させていないか、売り切るべき商品が売場に残っていないかが重要です。

Q. 加工指示書はなぜ重要ですか?
A. 加工指示書は、作業量、人員配置、販売計画、在庫管理をつなぐ基準です。
未実行になると作業が属人化し、チーフが作業に追われ、売場管理が疎かになります。

Q. SVの役割は何ですか?
A. SVは店舗を巡回するだけでなく、現場の問題を発見し、原因を掘り下げ、チーフに改善行動を指導し、次回確認する役割があります。
改善を定着させるにはSVのフォローが不可欠です。

Q. 品質チェックはいつ行うべきですか?
A. 生鮮部門では、14時〜15時の品質チェックが重要です。
午前中に陳列した商品の劣化や、当日売り切るべき商品の残り具合を確認し、値引き、売り切り、撤去を判断します。
(文:新谷千里)

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新谷千里(経営コンサルタント)

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100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングとオペレーション改善とコスト削減。他では教えてくれない理論と実践で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

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