グルーミングルームのある間取り
西洋の個人主義と日本人
この間取りは、アメリカの住宅によく見られる間取りです。人が生活する場ですので、基本的には日本の間取りと、何も変わりはないのですが、そこに根差す生活習慣が全く異なっています。
現在でこそ日本の家屋は個室が増えてきましたが、親子の関係や、子育てと云った生活習慣は、日本の古来のままです。その為様々な弊害が現れています。
日本と西洋の生活習慣の違いとは何でしょう。
日本の住宅には「公」の空間と「私」の空間の区別がありません。屋外こそが、「公」の空間であり、家の中に入ってしまえば「私」の空間なのです。
西洋の住宅は「公」と「私」の空間が明確に区別されています。赤色に塗った、エントランスホールから、リビング、キッチンダイニングと云った空間は公の空間であり、決して寝間着姿や下着姿でいる空間でありません。
青色で塗った個室こそが「私」の空間であり、「私」の空間は、親でもノックしないで入るとマナー違反となり、社会的制裁を受けてしまう空間です。
その代わり、「私」の空間の管理一切は、個人に委ねられており、その結果に起こる事象全ての責任を個人が追う事になります。
一般の方に、上記の様な間取りを提案すると、奥様に一発で却下されます。「一つあるだけでもお掃除が大変なのに、浴室が二つなんてあり得ないわ!」みたいな感じです。
西洋の場合浴室は「私」の空間ですので、使う人の管理下にあります。つまり子供部屋の浴室の掃除は子供がするのです。
ですので、「私」毎に浴室があるのは当然で、親の浴室を子供が使ったり、子供の浴室を親が使うのはプライバシーの侵害となるのです。
言い換えれば、親が、子供に物心がつく前から、個人主義の権利と義務を教えつけ、親が模範を示し、自己管理を習慣付けする事を徹底して教えているのです。
もちろん、就寝時も、新生児の時ならともかく、言葉を話し始める頃になると、親と子は別々に寝ます。添い寝もしません。その代わりベッドタイムストーリーが発達し、個人主義の中の親子の関係を親密なものにしているのです。
別な角度から、西洋の親子関係を見ますと、親は子供を私物化していません。家族会議の際にも家長がトップダウンで物事を決める事はありません。小さな子供の意見まで、取り上げます。子供の意見を取り上げると言う事は、その子供の意見が通った後、その結果に至るまでの責任を子供に取らせると言う意味です。
そこで、子供は、権利と義務を学習し、独立心・自立心を養うのです。
翻って日本の親子関係はどうでしょうか。親は子供を私物化しています。もっと優しい言い方をすれば、親は何歳になっても子供を構い続けるのです。たとえ子供が成人しても、親は子を構います。子供が結婚しても、孫が出来たと云えば口出しし、家を建てると云えば出しゃばって来るのです。
洋の東西どちらが正しい在り方とか、言っている訳ではありません。
文化の違いを、言いたいのです。西洋も日本も社会として、国家として、ちゃんと成立しているのですから、どちらが優れているとかの話しではありません。
私が、本当に云いたいのは、そう云った文化・生活様式の違いを、しっかりと認識し、それらを踏まえないと、単にカタチだけの間取りに憧れても、家造りは成功しないと言う事です。
自分がこう云う風に生活したいと言う、はっきりとしたライフタイルが描けていないと、住んでから、違和感のある居心地の悪い家になってしまいます。