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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

住まいづくりの為の引き出し

2018年9月18日

テーマ:【賢い家造り】

コラムカテゴリ:住宅・建物

ハウスメーカーだけが家を造っているのではない

一般の方が家造りを思い立った時、まずイメージするのはハウスメーカーの家です。モデルルームも設置していて、誰でも簡単に見に行けます。最大手のハウスメーカーは年間1万2千件を生産しています。大手メーカー10社を合わせると10万件に達します。現在日本では年間何件くらいの家が建っているのでしょうか。
実は、最近は減少傾向にありますが、それでも60~70万件建設しているのです。
最大手のハウスメーカーでもシェアしてるのは0.02%に過ぎません。殆どの家は、地場の工務店さんが建てているのです。

地場の工務店さんの受注方法は?

地場の工務店さんはそんなに宣伝広告費にお金を掛けません。ですので一般の方には馴染みのない存在となっています。では、地場の工務店さんはどの様な営業をしているのかと云いますと、縁故紹介が殆どの営業成果なのです。会社で言うところのルートセールスです。ですので、顧客を大切にしない工務店さんは早晩潰れて行く運命にあります。家造りを思い立った時から、メンテナンスに至るまでの一貫したケアをして行かないと、次の受注に結び付ける事は出来ません。

お金は何に使われているのか

地場の工務店さんは、請負代金として預かる金額の中で、儲けは1割あるかないかが現状です。それ以上の利益を見込むと競争見積もりで負けてしまいます。残りの9割は建設費に回されます。ハウスメーカーさんの場合、請負金額の1割までは地場の工務店さんと同じですが、残り9割が建設費に回る訳ではありません。その9割の中の3割が、宣伝広告費に回されるのです。宣伝広告費とは、新聞広告であったりTVのコマーシャル等々の、ハウスメーカーのイメージを良くする為の費用に消えているのです。ハウスメーカーのブランドと云う得体の知れないものに直行建設費の3割が割かれているのです。

ハウスメーカーのメンテナンスは悪い

地場の工務店さんの家造りの場合、メンテナンスが悪いと噂が出来てしまうと、次の受注につなげる事は出来ません。ですので、利益度返しでも対応していきます。地震とか台風とか災害に見舞われる度に、信用を得る為にお金を捨てています。
ハウスメーカーさんの家造りは、分業化が進んでいます。受注するまでの営業部門、家が完成するまでの工事部門、引き渡してからメンテナンスを行うリフォーム部門と云う風に分かれています。それぞれが専門職で専門の職域に特化する事により、より効率化を図っているのです。
そう聞けば専門職域のサービスを享受出来るから顧客にとってもメリットが有る様に思えますが、実はそうでもありません。それぞれの部署は独立採算制になっていて、それぞれの部門毎に利益が求められます。
営業が利益を生むのは当然として、工事部門でも下請けの締め付けと云うカタチで利益を追求していきます。リフォーム部門でも日々のメンテナンスだけでは利益が上がりませんので、メンテナンスのついでに、模様替えの提案等々やりたくも無い、リフォームの提案を受ける事になります。台風被害で屋根が傷んだ場合、どうせ足場を掛けるのだからと、傷んでもいない外壁のやり替えを求めて来たりします。
これは分業化の弊害で、受注した営業マンがメンテナンスまで対応していたら、地場の工務店さんと同じ目線で、メンテナンスの応対をすると思うのですが、リフォーム部門の担当者にしてみれば、メンテナンスで勝手に向こうから仕事を運んで来てくれるカモにしか見えてないのです。

家造りの引き出しを最初から閉じてしまわない

ハウスメーカーさんの家造りにも、効率的で良い面もあります。顧客はワンストップで任せていれば、一定品質の商品を享受出来ます。
全否定はしませんが、上記二点の様なデメリットもありますので、自分の大切な資金をどの様に配分して、自分の理想とする住まいを実現させていくかを良く考えて下さい。家造りの引き出しはハウスメーカーさんだけではありません。

この記事を書いたプロ

福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(岡田一級建築士事務所)

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