その生前贈与、後戻りできますか?
「贈与税がかかるなら、親子で売買にすればいいのでは?」
生前贈与のご相談で、よくいただくご質問です。
親子間でも売買はもちろんできます。ただ、価格の決め方や代金の払い方を誤ると、売買のつもりが税務上は「贈与」と扱われることがあります。今回は、贈与ではなく親子間売買を選ぶときに押さえておきたいポイントを3つに整理します。
①安すぎる価格は「みなし贈与」になる
相続税法7条では、著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、その価額と時価との差額を贈与により取得したものとみなすと定められています。
ここでいう不動産の「時価」は、個人間で対価を払って取得する場合、原則として「通常の取引価額」で判断されます。路線価や固定資産税評価額で売買すれば安心、とは限りません。
例えば、大阪市内で相場2,500万円程度のマンションを、親から子へ1,000万円で売れば、差額の1,500万円に贈与税がかかる可能性があります。
「親子だから多少安くても」というお気持ちはよくわかりますが、価格の根拠は近隣の成約事例などで説明できるようにしておくことが大切です。
②親の税金と、子の資金準備も確認する
売る側の親にも税金の論点があります。購入時より高く売れれば、親に譲渡所得税がかかります。
また、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、配偶者や子・孫などの直系血族への譲渡では使えません(租税特別措置法35条)。第三者に売れば税金がかからなかったのに、親子間だと課税される、ということも起こり得ます。
買う側の子は、資金の準備が課題です。親子間売買は、住宅ローンの融資に慎重な金融機関も少なくありません。
「代金は払えるときに払う」といった、実態のない分割払いや、支払い後に親から現金が戻ってくる形は、売買ではなく贈与と判断されるおそれがあります。
③売買の「実体」を書面と記録で残す
以前、お母さまのマンションを息子さんが買い取りたいというご相談がありました。最初は「身内だから契約書はいらない」というお考えでしたが、査定書で価格の根拠を示し、売買契約書を交わし、代金は銀行振込で支払う形にしました。
第三者の不動産会社が間に入り、重要事項説明書や売買契約書を整えておくと、取引の記録が残り、住宅ローンの相談先を探す際の材料にもなります。
税額の計算や、贈与・相続・売買のどれが有利かの判断は税理士、登記は司法書士の領域です。私たち不動産会社は、適正な価格の根拠と取引の段取りをお手伝いします。
まとめ
親子間売買は、贈与の代わりに「安く渡す」方法ではありません。通常の取引価額での売買として成り立つかどうかが出発点です。
価格の根拠、親の税金、子の資金計画。この3つを実行前にそろえてから、ご家族で方針を決めていただければと思います。
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