任意売却後も、今の家に住み続けられる?

重村裕一

重村裕一

テーマ:不動産の任意売却

「家は手放すことになっても、子どもの学校が変わらないように、このまま住み続けたい」
任意売却のご相談で、いちばん多く聞く切実な声のひとつです。

結論から言うと、条件がそろえば住み続ける方法はあります。
ただし、どの方法にも「債権者の同意」と「無理のない資金計画」が欠かせません。
今回は、任意売却後も住み続けるための代表的な2つの方法と、その現実をお伝えします。

①親族に買ってもらう「親族間売買」
親や兄弟、子どもなどに家を買い取ってもらい、そのまま住まわせてもらう方法です。
気持ちのうえでは理想的ですが、ハードルは低くありません。

まず、住宅ローンを借りる場合、親族間売買を融資の対象外としている金融機関は少なくありません。自己資金での購入か、取り扱いのある金融機関を探す必要があります。
また、債権者は「市場価格に見合った金額か」を厳しく見ます。身内だからと安くすれば同意は得られません。
さらに、時価より著しく低い価格で買うと、差額が贈与とみなされ(相続税法7条)、買った側に贈与税がかかるおそれもあります。
査定書で価格の根拠を示し、売買契約書や代金の振込記録をきちんと残すことが大切です。

②投資家や業者に買ってもらう「リースバック」
第三者に家を売却し、買主と賃貸借契約を結んで家賃を払いながら住み続ける方法です。
親族に頼れない場合の選択肢になりますが、次の点を必ず確認してください。

・家賃は、売却価格をもとに買主の利回りで決まるため、周辺相場より高くなりがちです
・売却価格は市場で売る場合より低くなる傾向があり、債権者が同意しないこともあります
・契約は定期借家契約(借地借家法38条)が多く、期間満了で更新されず退去となる場合があります
・「将来買い戻せる」という話があっても、価格や期限が書面で約束されていなければ保証はありません

ご相談の中には「月々の家賃が、以前のローン返済より高くなってしまった」というケースもありました。住み続けることそのものが、生活を苦しくしては本末転倒です。

③「住み続ける」と「引越す」を同じ土俵で比べる
私たちがご相談者と一緒に必ずやるのが、両方の選択肢を数字で並べることです。

・住み続ける場合:家賃や返済額、契約期間、更新や買戻しの条件
・引越す場合:近隣の賃貸相場、配分案で認められる引越し費用、転校の有無

並べてみると「2年だけ住んで、子どもの卒業に合わせて引越す」といった、現実的な答えが見えてくることも多いのです。
大阪市内であれば、同じ学区内で家賃を抑えた賃貸が見つかる場合もあります。

まとめ
任意売却後も住み続けることは、不可能ではありません。
しかし、親族間売買にもリースバックにも、債権者の同意・適正な価格・続けられる家賃という条件があります。
時間がたつほど選べる道は狭くなります。競売の手続きが進む前に、「住み続けたい」という気持ちも含めて、まずはそのままお話しください。
ご家族の暮らしを第一に、一緒に最善の道を考えます。

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重村裕一
専門家

重村裕一(宅地建物取引士)

株式会社クレアクロス

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