生前贈与の落とし穴、税金は贈与税だけじゃない

重村裕一

重村裕一

テーマ:不動産の生前贈与

「元気なうちに、実家を子供の名義にしておきたい」。大阪市内でも、このご相談は年々増えています。そしてほぼ必ず聞かれるのが「贈与税はいくらですか?」。

ただ、実は生前贈与で見落とされやすいのは、贈与税以外のコストのほうです。今回は、贈与税の話はあえて後回しにし、「それ以外にいくらかかるのか」という視点で整理します。


①名義を移すだけでかかる「登録免許税」と「不動産取得税」

まず登記の場面でかかる登録免許税です。贈与による所有権移転は固定資産税評価額の2%。これが相続による移転だと0.4%です。同じ不動産でも、渡すタイミングが違うだけで税額は5倍になります。

さらに不動産取得税。こちらは贈与なら課税されますが、相続による取得は非課税です。住宅や土地については軽減措置がありますが、それでもゼロにはなりません。

例えば固定資産税評価額1,500万円の自宅を贈与した場合、登録免許税だけで30万円、相続なら6万円。ここに不動産取得税と司法書士報酬が乗ってきます。「贈与税がかからない範囲で渡したのに、思ったより出ていった」というのは、この部分を計算に入れていなかったケースです。(税率や軽減措置は改正されることがありますので、実行前に必ず税理士へご確認ください。)


②「相続でしか使えない特例」を捨てていないか

これが、金額では見えにくいけれど、いちばん大きいポイントです。

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たせば居住用の宅地を330㎡まで80%減額で評価できる制度ですが、これは相続・遺贈で取得した場合の制度です。生前に贈与で名義を移してしまうと、その土地には使えません。

大阪市内の土地は評価額が高く出ます。家を早めに渡したことでこの特例が使えなくなり、結果として相続税が増えたというのは、実際に起こり得る話です。

もう一つ。暦年贈与は、相続開始前一定期間の分が相続財産に加算されます。この加算期間は従来の3年から順次延長され、7年になる制度に変わっています。「毎年110万円ずつ」を始めるなら、早いほど意味があるということです。


③それでも生前贈与が効く場面はある

ここまで読むと「じゃあ相続まで待てばいいのか」となりそうですが、そうとも限りません。

一つは収益物件です。賃貸マンションやアパートを早めに渡しておけば、その後の家賃収入は受け取った側に入ります。親の手元に現金が積み上がって相続財産が膨らむのを抑えられます。

もう一つは、認知症リスクへの備えです。判断能力が低下してしまうと、実家の売却も大規模な修繕も止まります。今年も「売れるはずの家が動かせない」というご相談を何件もいただきました。この備えとしては、贈与だけでなく家族信託という選択肢もあります。

つまり生前贈与は「節税の手段」というより、「渡すタイミングを自分たちで選べる手段」と考えると、判断を誤りにくくなります。


まとめ

生前贈与のコストは、贈与税だけではなく登録免許税・不動産取得税・登記費用、そして「使えなくなる特例」まで含めて見る必要があります。相続と比べてどちらが有利かは、ご家庭の財産構成と相続人の人数で結論が変わります。

税額の最終判断は税理士、登記は司法書士の領域です。ただ、その前に「その不動産は今いくらなのか、将来売れるのか」を把握しておかないと、そもそも比較の土俵に乗りません。そこは私たち不動産屋の仕事です。

「うちの場合はどうなるのか」を、一度一緒に整理してみませんか。


▼お問い合わせは公式LINEから
ご相談・お問い合わせは、こちらの公式LINEよりお気軽にどうぞ。
公式LINEでお問い合わせ

▼あわせて読みたい生前贈与のコラム
相続時精算課税、2024年の改正で何が変わった?
家族信託と生前贈与、実家対策に向くのはどっち?

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

重村裕一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

重村裕一
専門家

重村裕一(宅地建物取引士)

株式会社クレアクロス

大阪で相続不動産の売却・活用に悩むならご相談ください。IT企業出身の異色キャリアを持ち「不動産で損する人をなくしたい」という信念のもと、相続・売買・賃貸・投資まで不動産全般を一貫サポートします。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

信用と信頼を第一に、顧客に寄り添う不動産の専門家

重村裕一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼