税金の差押えがある家、任意売却できる?

重村裕一

重村裕一

テーマ:不動産の任意売却

「住宅ローンだけでなく、固定資産税も払えていなくて……役所から差押えの通知が届きました。もう任意売却は無理ですよね?」

大阪市内にお住まいの方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、税金の差押えがあっても任意売却の道が閉ざされるわけではありません。ただし、住宅ローンの滞納だけのケースとは段取りが大きく変わります。
今回は、税金の差押えがある家を任意売却するときに知っておいていただきたいことを整理します。


①差押えの登記が残ったままでは売れない

固定資産税や住民税、国民健康保険料などを滞納すると、役所は滞納処分として、裁判所を通さずに不動産を差し押さえることができます。差し押さえられると、登記簿に「差押」と記録されます。

任意売却では、金融機関に抵当権を外す同意をもらうのと同時に、この差押えも外してもらわなければ、買主さまにきれいな状態で引き渡すことができません。
つまり、任意売却の交渉相手に「役所」が加わるということです。

金融機関とだけ話を進めていて、決済の直前になって差押えの解除が間に合わない――これが一番避けたいパターンです。


②税金は「配分」だけでは片付かないことがある

任意売却では、売却代金を誰にいくら配るかを決めた「配分案」を作り、債権者の承認を得て進めます。抵当権を持つ金融機関が、差押えをしている役所などに対して、差押えを外してもらうための一定額を配分案に組み込むケースも多く見られます。

ところが役所は、原則として滞納額の全額納付を差押え解除の条件とします。配分案で用意できる金額が滞納額に届かない場合は、不足分を売却前に納める、分割納付の計画を示して解除に応じてもらえないか相談するなど、個別の調整が必要になります。売却代金から回収できる見込みがない差押えについて解除に応じてもらえる場合もありますが、それは役所の判断です。

また、税金や国民健康保険料の滞納は、仮に自己破産をしても免責されない債権とされています(破産法253条)。家を手放したあとも残る負担だからこそ、売却の場面できちんと向き合っておくことが大切です。


③差押え通知が届いたら、まず役所の窓口へ

差押えまで進んでいると、役所が不動産を公売にかけることもあります。そうなると、ご自身で売却の条件や時期を選ぶ余地はほとんどなくなってしまいます。

通知が届いたら放置せず、まずは担当の窓口(大阪市であれば市税事務所など)に連絡し、「任意売却で売却して、その代金を納付に充てたい」という意思を伝えてください。

私たちがお手伝いする場合も、売却活動を始める前の段階で、役所の担当者に売却予定価格と配分の見込みをお伝えし、不足分をどう納めるかを一緒に整理するようにしています。この準備をしておくと、決済日に差押えの抹消書類が揃わないという事態を防ぎやすくなります。

なお、税金には事情に応じて分割納付や換価の猶予といった制度もあります。売却までの時間を確保するためにも、早めの相談が欠かせません。


まとめ

税金の差押えがあっても、任意売却ができないわけではありません。ただし、金融機関・役所、マンションであれば管理組合と、調整する相手が増えるぶん時間がかかります。
差押えの通知は「終わりの合図」ではなく、「急いで動くべき合図」と受け止めてください。

納税や債務整理そのもののご相談は税理士・弁護士・司法書士の領域ですが、家がいくらで売れそうか、誰とどんな順番で話を進めるかを整理するのは、私たち不動産会社の役割です。
お一人で抱え込まず、どうぞ早めにご相談ください。


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重村裕一
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重村裕一(宅地建物取引士)

株式会社クレアクロス

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