マナーうんちく話2230《過ぎ去る年に感謝し、正月準備に精を出す12月・師走の歳時(前編)」
我が家では、年の瀬が近づいてきたら、運気を招くための「運盛り」をします。
「運盛り」とは、あまり聞きなれない言葉だと思いますが難しいことではありません。
要は「れんこん」「きんかん」「にんじん」「なんきん」「ぎんなん」など、「ん」のつく果物や野菜やつるものを籠に盛り合わせて飾るだけです。
南瓜も人参も金柑も自家製ですので経費も手間もほとんどかかりません。
私が主催している講座でもこの時期になると受付に飾ります。
「ん」は運に通じ、カボチャやブドウのような「蔓もの」は未来につながるとか、繋がりが深くなるとかで、縁起がいいといわれています。
ところで仕事でもプライベートでも「運」の力はとても大きいわけですが、自然にやってきてはくれません。
運を招くにはそれなりの努力が大切だということです。
先人のように自然に感謝し、自然に同化し、旬に敏感になると同時に、四季折々の行事やしきたりを取り入れるのもお勧めです。
さて令和6年も本当に色々なことがありましたね。
国内の政治、経済、社会においてもそうですが、世界に目を向けると各地で戦闘、紛争、テロなどが繰り返され、尊い命が犠牲になり続けています。
大変辛くて悲しい現実です。
誰しも争いのない平和な日々を望んでいるにもかかわらず、このような状況がつづいているということは、複雑多様な深刻な事情があり、簡単に解決出来ないことは想像できますが、では、どうしたら世界平和が実現できるのでしょうか?
世界の喜劇王といわれたチャールズ・チャップリンは、「世界中の人が一日一回素敵なマナーを発揮すれば世界はもっと・もっとよくなる」という名言を残していますが、まさにその通りだと思います。
《世界平和実現》ということを81億人全員が共有し、この実現に向けてできる範囲で素敵なマナーを実践するのもいいですね。
決して難しいことではないはずです。
そのためには、まず相手を思いやることが大事ではないでしょうか。
その「おもいやり」を具体的に実践する方法として、「マナーうんちく話」でもたびたび触れてきた「和顔愛語」という大変美しい言葉があります。
「和顔愛語」とは和やかな笑顔で思いやりのある話し方をすることですが、実はこの後に「先意承問(せんいじょうもん)」という言葉がつづきます。
つまり「和顔愛語 先意承問」とは、温かみのある表情と思いやりを有する言葉で人に接するとともに、自分のことはさておき、先ずは相手の気持ちを察し、相手に対しなにができるかを考え、暖かい手を差し伸べることという意味です。
ただ、相手の身になり、心と心の親密な関係になることはということは誰でも簡単にできることとは思えません。
やはり若い時の苦労はどんな時代でも必要でしょう。
コロナの影響でマスク生活を余儀なくされたときに「マスクをした際のコミュニケーションの取り方」が問われましたが、マスク姿でも和顔愛語は通じたようです。
「アイコンタクト」といわれるように、優しいまなざしだけでも相手に好感を与えることは可能です。
また握手をする際のアイコンタクトは大事ですし、挨拶のポイントは「笑顔で相手の目を見て」です。
「目は口ほどにものを言う」という言葉さえあります。
ホテルで勤務していた時には、欧米人の上手な挨拶にいつも感心させられていました。
こちらが気づかないうちに率先して笑顔で「グット・モーニング」と挨拶されたら、こちらも自然に笑顔で返しますが、その一言で一日の仕事が楽しくなったものです。挨拶には本当に不思議な力がありますね。
日本には朝は「おはようございます」、昼は「今日は」、夜は「今晩は」と挨拶を交わす習慣が昔から存在します。
他にも客人を迎える時には「いらっしゃいませ」、ものを頼むときには「すみませんが」、帰るときには「さようなら」、間違いをおこせば「ごめんなさい」「申し訳ございません」といいます。
加えて食前・食後には「頂きます」「ご馳走様」という素晴らしい挨拶があります。
これらはすべて日本人の伝統的なしきたりであり、良好な人間関係を築き、持続する知恵ですが、今はそれができない人が増えてきた感があります。
義務教育における「礼節教育」の必要性を痛感します。
そして「和顔愛語 先意承問」を先ずは身近な人から実践し、そうされた人がまた次の人に実践する。
「情けは人のためにならず」といわれますが「和顔愛語 先意承問」の輪がどんどん広まっていけばいいですね。