マナーうんちく話2090《歳神様とお節料理と神人共食、そして五穀豊穣・家内安全祈願》

平松幹夫

平松幹夫

あけましておめでとうございます。


長引くコロナ禍で迎えた令和4年の正月。

松尾芭蕉、与謝蕪村とともに活躍した小林一茶の句に「めでたさも 中くらいなり おらが春」がありますが、このような心境の方も多いかもしれませんね。

ちなみに明治5年まで日本で使用されていた旧暦の正月は、今の立春の頃ですから、この句に登場する「春」は初春で、年の初めを寿ぐ正月の意味になります。

しかしどのような状況下でも、神道を信仰する日本には歳神様は里帰りされます。

ところでコロナ禍で景気が低迷する中、高額な「お節料理」が飛ぶように売れているとか。お金持ちが増えたということでしょう。

しかし最も需要が多いのはお手頃価格だそうです。
つまり大きな経済格差が生じているということですね。

昨年の秋にはおせち料理の販売合戦が始まりましたが、巧みな販売戦略が功を奏したのか、巣籠需要が高くなったのか、あるいは毎年正月に海外旅行に行く人が、コロナで行けなくなって、自宅で正月を迎える人が増えたからでしょうか。

いずれにせよ「手作り派」は減少の一途をたどり、販売スタイルも通販やネット注文が主流になったのも時代の流れでしょうか?
また内容も多様化し、「個食スタイル」及び「高額」になってきていることは確かですね。

中にはフレンチやイタリアン、さらに中華スタイルまで登場し、これがお節料理なの?と首をかしげるようなものまで現れましたね。

美味しければ、また売れればいい!ということでしょうか?
もっとも和菓子屋さんがクリスマスケーキを販売し、それがほほえましいニュースになる時代ですから何とも言えません・・・。

ちなみにある調査では国民の約6割がお節料理を食しているそうですので、あらためて年頭のうんちく話は「お節料理」に触れてみたいと思います。

【そもそも「おせち」とはなに?】
「せち」は「節」で、一年を通して節目に訪れる祭日の「節供」を意味します。
「七草の節句」「桃の節句」「菖蒲の節句」「笹の節句」「菊の節句」などですね。

だからもともと「お節料理」は節句にいただくご馳走だったわけですが、いつの間にか正月だけに限定されたようです。
それだけ日本人にとって正月行事が大事だったということです。

今は物が豊かになったのでお節料理も大変豪華になりましたが、もとは海の幸や山の幸の中から、「めでたい呼び名」の語呂合わせ及び彩りや栄養価などを効果的に組み合わせて作ります。

一般的には「カズノコ」「煮豆」「田づくり」をはじめ、「にんじん」「ごぼう」「こぶ」「黒豆」「きんとん」「かまぼこ」などの質素な食材が推奨されていたようです。

なお現在のように重箱に入れて供するスタイルは、すでに江戸時代に存在したようですが本格的になったのは戦後で、デパートが大々的に販売を開始してからだといわれています。

「めでたさを重ねる」という意味もありますが、多彩な料理をまとめて売るのに重箱は都合が良かったからでしょう。

【お節はいつ食べるの?】
いつ食べようがカラスの勝手ですが、もとは大晦日から食べられていたようです。
えっ!と思われるかもしれませんが、何分大昔の話です。

今は精巧な時計が誰でも持てますが昔は、時計はありません。
大晦日に、日が暮れて暗くなればもう正月で、歳神様が里帰りされます。

そして歳神様をお迎えしたら、さっそくお節料理をお供えし、その後家族そろって歳神様と一緒にいただくわけです。

【神人共食箸(祝い箸)】
このときに使用する箸が「祝い箸」で、両方使用できるように、両側の端が尖っています。片方を歳神様が使用し、もう片方を人間が使用する「神人共食箸」です。

大人も子供もこれを使用しますが、長さは決まっています。
末広がりの縁起を担いで8寸(約24㎝)と決められています。
素材は邪気を払う効果がある柳の白木などが用いられます。

神棚のある家では、祝箸の箸袋に、家族一人一人の名前を書いて備えておけばいいでしょう。

【お節をいただく本当の理由⇒「神人共食」文化】
人との付き合いのなかで、さらに絆を深める目的で「そのうち一緒に食事でも・・・」と言ったりしますが、神様と一緒に食事をすることにより、親睦を深め、絆を強めて、五穀豊穣な家内安全を祈念するわけです。

正月に家族が揃ってお節をいただく理由は、まさにここにあるといってもよいと思います。

さらにみんなで食すことにより、家族の絆をさらに深める意義もあります。

神道特有の、神様と人がともに食事をするという儀礼がやがて、人と人との間でも生まれ、地域共同体の中にとりいれられ、様々な文化を形成したわけです。
春の「お花見」もしかりです。

また日本には「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますが、同じ釜で煮たりたいたりしたものを食すことで、絆を深めるわけです。

コロナで「マスク食」や「黙食」が推奨されていますが、はやく「共食」が可能になるといいですね。

最後に昔は旧暦でしかも「数え年」ですから、正月にはだれでも平等に一つ年を取ります。
だから新年が無事に過ごせるように願う気持ちになるのは自然だと思います。

令和4年が皆様にとっていい年になりますように。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

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