マナーうんちく話486≪大切にしたい序列のマナー≫
マナーうんちく話53《接客の歴史と社会貢献》
日本には世界に誇るものが多々ありますが、「接客力」もその一つで、マナー精神に満ちた「もてなしの心」は世界中の模範になっております。
今回の地震で改めて日本人の礼儀正しさが各国の称賛を浴びているようですが、その歴史はかなり古く、聖徳太子の時代にさかのぼります。
ところで接客の歴史ですが、すでに江戸時代には確立されていたようです。
江戸時代になると、日本の至る所で都市ができ、都市ができればそれにつれて色々な商業施設が生まれてきます。当時の日本の商業は世界中の中でも最も進んでいたといわれておりますが、それにつれ娯楽施設等もできます。飲食店もできるし、風俗営業も成立してきます。
小料理屋、蕎麦屋、芝居小屋、遊郭など・・・
ちなみに当時の遊郭は、陰気で暗いイメージではなく、とても華やかで活気に満ち、宵越しの金は持たない江戸ッ子にとっては格好の遊び場だったようです。これらはその数も多く有名な寺社の近所にはほとんど存在していたようです。
当然このようなところでは競争の原理が働き、お客様に対しどのように接するか、お客様をいかにして満足させるかというスキルが問われてきます。
単に日用品の販売ではなく、お客様に対し、非日常的サービスを提供することにより商売が成立していたので、接客については日頃から切磋琢磨する必要があり、飲食店を始め色々な娯楽施設が日本のサービス業の元になったのではないかと思います。
元々、日本には秀吉や千利休が広めた「茶の湯の文化」の基盤があり、それだけに浸透するのも早かったのではないかと推測します。
ところで今の日本は、経済的に豊かな国、飽食の国、美食の国、戦争に無縁の国、長寿の国になりましたが、一方では、自殺大国、離婚大国、晩婚・晩産の国でもあります。未婚の人も益々増加傾向にあります。ニートと呼ばれる人も相変わらず多いのが現状です。さらに若者の早期離職率も高いまま推移しております。加えて「無縁」「孤」という由々しきキーワードも生まれ、「無縁社会」と称されるようになりました。
若者から高齢者まで無縁現象に陥っている人が日本では多いということです。
経済的豊かさを示すGNPに対し、GNHは心の豊かさ(精神的幸福度)を示しますが、日本はこのGNHの値が決して褒められたものではないようです。以前にも述べましたが、「心の豊かさ」とはすなわち「人間関係の豊かさ」です。
もっと、もっと、人と人との絆づくりが大切になってくることは言うまでも有りません。
そして、このような無縁化現象を抑制する有効な手法が「接客の心」ではないでしょうか?
接客の心は、夫婦・家族・地域・職場・学校等において、人と人との暖かい交流を促進してくれます。
友人作り・恋人作りにもとても有効です。
「マナーうんちく話52」で述べましたように、接客は恋愛と密接な関係にあります。
これらのことを一人でも多くの人々に認識して頂き、益々接客の心を大切にしていただきたいものです。
実は日本人はこんな素晴らしい心を持っているにもかかわらず、残念ながら以外にこのことに気が付いている人は少ないように思います。外国の人はとても敏感に感じているようですが・・・。
「灯台もと暮らし」とでもいいましょうか、「勿体ない文化」もしかりです。
この文化もお家元の日本人が広めたのではなく、6年前になりますか、ケニア共和国の環境副大臣のマータイ博士により世界中に広まったのも皮肉な話だと思います。
話を元に戻しますが、多くの人々が「接客の心」の大切さを認識していただいたら、次にそれを、「言葉や態度でさりげなく表現する力」を身につけていただくことが大切です。
特に接客・接遇の仕事に携わっている人達が、このことを率先垂範して頂ければ嬉しい限りです。指導的立場にある人や管理職、経営者レベルの人たち、しかりです。
中学・高校・専門学校・大学などでマナーの講義をする時に何時も学生に尋ねることがあります。「家で家族に挨拶しますか?」と言う問いに手を挙げてくれる学生は殆ど半数以下です。家庭での挨拶から見直す必要があります。
またお母さん、お婆さん向けの講演では、「家庭の食卓が整理整頓されていますか?」とおたずねします。手が挙がるのは何時も10%位です。日本の唯一の家族団らんの場は今や食卓です。その食卓がキレイではありません。
地域おこしの基本は人の話を良く聴くことです
日本の職場では笑顔もまだまだ不足しております。
家庭も、地域も、職場も、接客の心を取り入れる要素は非常にたくさん存在します。
接客の心が学校に充満すれば「いじめ」はなくなります。
もっと、もっと、あらゆる場所に接客の要素を取り入れたら、この国は、GNP・GNH共々豊かになり、本当にハッピーと言える国になるのではないかと思います。
接客の心こそ最高の社会貢献につながると確信いたしております。
これをもちまして「接客・接遇シリーズ」は一応終わりです。
長いお付き合いありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。