勝手な期待値の迷惑
私がコーチングを行なう際には、クライアントの本当に目的が明確なものかどうかを再確認します。どうしてかというと、クライアント自身が目的と目標を勘違いしていることがあるからです。
目標は目的を達成する到達点に過ぎません。本当の目的が明確になるほど、クライアントのモチベーションが上がり「このためにやるんだ」というフォーカスが絞られます。
目的の先に何があるか、その先の何かを明らかにしていくと、目的だと思っていた目標の先の本当の目的が浮き彫りになります。その目的のある未来に向かってやれそうなことをやっていくだけです。
ただ、目的を達成するために、障害として他者が絡んでいることがあります。他者に邪魔されたら持っているものを出しきれません。反対に他者が協力してくれる状況に変わったら、出来ることが遥かに増えていきます。
例えば、Aさんがあるプロジェクトを成功させたいという目的を持っていたとしたら、Aさんがプロジェクトを成功させたら、その先に何を望んでいるのかを絞り込んで本来の目的を掘り起こします。
そうした上でプロジェクトを成功させるには、どのような障害があるのか聞いてみると、そのプロジェクトに反対する上司がいるので前に進めなくなったとしたら、Aさんと上司との関係性を理解する必要があります。
ポジションチェンジ
他者とのコミュニケーションは、相手の大切にしていることに気づいてそれを尊重することも大切です。このような考え方を支えているのがポジションチェンジという手法です。
ポジションチェンジは、自分の立場と相手の立場の切り替えするために、自分の椅子と相手の椅子を向き合わせて用意し、自分の椅子から相手の椅子に対して想いを言ってみる、また相手の椅子からそれを聴き、相手の立場でそれに答えてみる。
このようにポジションチェンジは、双方の間で何が起こっているのかメタモデルの質問をしながら理解を深めていく手法です。
目的達成において大切なことは「自分が本当に大切にしている目的を知ること」です。そのためには、Aさん自身が、自分自身の何を知っているのかを興味、関心を持って探っていくことが大切になります。
Aさんと対立している上司と、どうしたら上手くやっていくことができるかという問題に対しては、Aさんが本当に望んでいることは何かを知ることが先決です。
問題解決のために、いくら相手を変えようと思ってもそれはできません。基本、私たちは自分というものを他者に変えられたくないと思っていますからね。
良い関係性を築きたいなら、相手の気持ちに気がついて自分自身を変えていく方が早いですよね。
ポジションチェンジで、相手の立場に立ちきってみると、自分の立ち位置から観えなかった相手の本当の真意が観えてきます。それが相手と自分に共通する何かの発見に繋がるかもしれません。
お互いに向き合って想いの輪が膨らんでくると、共通する接点が観えてきます。このように双方が共有する接点を探求していきます。相手と共有できる接点や協力できることは、ただ手段が違うだけということも分かってくるでしょう。
下図は「人間関係の距離感と取り方」
絶対に何かあると思って探すと、必ず見つける方法を探そうとします。このような信念で、相手の目線に立って相手と共有できる目的、価値観、方向性などをポジションチェンジの手法を使って踏み込んでいきます。
人は、自分が相手から受け入れられて初めて変化ができるようになり、その相手を受け入れられるようになります。
今回の事例でいうと、本当は上司が受け入れてくれると良いのですが、それは無理な話。まずは、Aさん自身がコーチやカウンセラーに本当に望んでいることを受け入れてもらっていると、ポジションチェンジで上司の想いも受け入れることができます。
コーチやカウンセラーのような対人支援をする際、クライアントを、精一杯、受け入れることから始めてみてはどうでしょうか。
何かヒントになったでしょうか
あなたにも気付きがありますように
下記に参考になる記事のリンクを貼っておきます。
◇「良質の質問は日常会話でトレーニング「NLP」7」
ポジションチェンジはメタモデルを活用
◇「アドラーの原因論と目的論」
人間関係は相手の目的を考えてみる
【小さな実践】
ポジションチェンジは、クライアントが本当に望んでいることを明確にし、それらの全てをコーチやカウンセラーが受け入れることから始まる