家づくりの根っこは家族のカタチ
夜中にかすかな余震の揺れを感じて目が覚めます。阪神淡路大震災の時、建物危険度判定のボランティアで現地に入りました。まだ余震が続いている時の恐怖がトラウマとして残っています。地震の直後に被災地に入った時の経験をお伝えします。
大きな地震の後に注意することは、建物の”ゆるみ”です。地震の揺さぶりで構造材の接合部分にゆるみや欠損が発生している場合があります。阪神でも本震で何事もなく建っていた住宅が、余震で倒壊したケースが多々あります。もし安全な避難場所を確保されているなら、1週間くらいは避難場所で様子をみた方が安全だと思います。
さて、今回は、建築設計をやっている頃の話。
建物が完成し家具を搬入する際、肝心の家具の置き場所がないことがありました。私が設計する際には、お客様に一番に行なってもらうことがあります。それは処分しない家具にタグを付けてもらうこと。理由は、設計プランの際の家具の配置を忘れないためです。
設計の打合せと建物が完成する直前には、最終的な家具の配置を決めておきますが、これからお伝えすることは、嘘のような本当の話。
お客様の家には、娘さんがピアノを習っていたので、少し小さめのグランドピアノがあったそうです。なんとお客様は、計画プランの時にピアノのことをすっかり忘れ、新居が完成するまでピアノのピの字も打合せの話題に上がらなかったそうです。
設計者もお客様も、すっかりピアノが頭から抜け落ちていたので、新居に入る時になって、建物のどこからもピアノが入らないという笑い話のような本当の話がありました。もちろん、ピアノのために防音サッシュも床の補強もしていません。この後、どうなったか想像がつくでしょう。専門家がお客様の生活習慣を知らなかったことで起こった最悪の事例です。
ここまでじゃなくても、家具の配置を考えない方は多いのです。ピアノの次に問題になるのは仏壇です。近頃では、仏間を作るお客様が少なく、和室でさえ作らなったので、仏壇の設置場所を忘れることが多いのです。仏壇を設置する際には方角も決まっているので、存在を忘れると大変なことになります。
建物を計画する際、家具配置を忘れると下記のようなことが起こります。
・家族の動線が悪くなった
・窓が半分塞がってしまった
・ドア開けると家具に干渉して全開できない
・家具でコンセントが使えない
このようなことはザラにあります。新築やリフォーム工事をしたら、以前より便利になって当たり前。しかし、これらが満たされてなかったら些細なことがストレスになって、新築ブルーになりかねません。家族の生活習慣と住まいは、密接な関係があることを認識しておいて下さい。それが理想の家を作る一歩です。
※新築ブルーとは、住宅建築中や購入後に、新築の家が原因でうつ状態になってしまうこと。
【小さな実践】
専門家と打合せする際、
必ず家族の生活習慣を引き出しておく