金魚鉢の人間
今でも胸が痛む思い出があります。
もう数年前のこと。
親友が悪性リンパ腫と診断されました。
彼女は、行動的で活発な子育て主婦の
イメージしかなかったので、その話を聴いた時、
すぐに受け入れることができませんでした。
彼女のリンパ腫は、
脳の深い部分にあって手術ができません。
投薬治療のみ。
初めてお見舞いに行った時は
まだ冗談が言えるくらい話せていたのに、
彼女は日に日に衰弱し、
言葉も表情も出なくなりました。
グラフィックデザイナーだった
彼女の筆談の中のイラストは、
まるで幼児期の子供が描いた絵。
そのうち筆談も出来なくなり、
私が質問したことをまばたきの回数で
会話する状態になりました。
当時、私はいけばな教室に通っていたので、
教室で活けた花を病室で活け直しながら、
独り言のように彼女に話しかけてました。
そして数週間経った早朝、
ご主人から、彼女は眠るように逝ったと連絡
そして、彼女が他界して数年後・・・
知り合いの人のお見舞いで、
花屋さんで花を選んでいると、
店員さんが、私が選んだ花の種類ごとに、
花言葉と花にまつわる物語を教えてくれながら、
「入院されている方にお話してあげて下さいね」と
キラキラした笑顔で店先から私を見送ってくれました。
その花の香りで
数年前に他界した彼女のことを想い出し、
病室で花を活けたあの時、
この店員さんのように、
花言葉や花にまつわる話しをしてたら、
ひとりになった病室で花を見た時に、
幸せを感じてもらえたかなぁと、
悔やんだりしました。
花屋さんは花を売るのが仕事なのに
あの店員さんは、花が届いた先まで
想いを届けているんだと、
歩きながら胸が熱くなったと同時に、
死の先の彼女の人生は
他者の記憶の中で新たに
生きているような気がしました。
【小さな行動】
あなたがやりたいことの先にあるのは何か
モノ・お金・地位・名誉・愛情・自由・・・
自分が他界した後を具体的にイメージする