異性化液糖について考える~後編:健康の観点から~
はじめに
診療をしていてよく見かける疾患の1つに、脂質異常症があります。健康診断などで指摘されている方も少なくないのではないでしょうか。「油ものを控えればよいのか?」「卵は食べられないのか?」といった質問を受けることも多いです。
そこで、今回は脂質異常症と食事との関係について考えてみたいと思います。
脂質異常症とは
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態のことを意味します。
そもそも、脂質とは何か? については、過去の当コラムをご参照ください。
脂質を知る ~脂質にも種類がある~ 前編
脂質を知る ~脂質と健康~ 後編
脂質の異常の中でも、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常を脂質異常症と呼びますが、これらはいずれも、血管の動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳梗塞の要因となってしまいます。
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネットより
脂質異常症のための食事とは
血液中のコレステロールの問題だから、コレステロールの摂取を抑制すればよい、と思われ
るかもしれません。実際には、食事中のコレステロール量と血中のコレステロール値とは、
必ずしも相関するわけではありません。たくさんコレステロールを摂取しても、脂質異常症
になりにくい方や、コレステロールを制限しても、脂質異常症が改善しないこともあります。
これらは、体内のコレステロールは、食事から摂取するコレステロール量より、体内(肝臓)
で作られるコレステロール量の方が多いことが要因です。
私たちが食事から摂るコレステロール量は1日約300~500mgで、体内(肝臓)で合成さ
れる1日約1000~1500mgの約3分の1にすぎません。
食事によりコレステロールだけを減らすことの意義が大きくないと考えられ、2015年には、「日本人の食事摂取基準」が改訂されて、それまで定められていたコレステロールの食事摂取基準(1日当たり男性750mg未満、女性600mg未満)が撤廃されていました。
しかし、2020年版の、「日本人の食事摂取基準」では、脂質異常症の重症化予防を重視して、コレステロールを200mg/日未満に留めることが望ましいと新たに記載されています。
コレステロールは体内でも合成されますので、目標量を設定することは難しいと言及していますが、少なくとも摂りすぎがよいわけではありませんので、脂質異常症の重症化を予防するためには、200mg/日未満に抑えるのが望ましいというコメントに落ち着いたようです。
脂質異常症に対する食事のポイント
脂質異常症だから、単にコレステロールや脂質を減らせばよいというわけではありません。繰り返しになりますが、食事に含まれるコレステロールの量が、そのまま血液中のコレステロールの量に反映されるわけではありません。
基本は、「体重を適切に管理する」ということになります。これは、血糖管理や健康長寿にとっても大切なポイントで、脂質異常症のみならず、元気で長生きを目指すのであれば、誰しもに当てはまる考え方とも言えるでしょう。
最後に、これらを踏まえたうえで、厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイトから、脂質異常症の食事のポイントを紹介させていただきます。
1. 体重を適正にする
いずれの脂質異常症でも、まず体に溜まっている余計な脂肪を減らしましょう。ご本人にとって、適正な体重の範囲に入るように、エネルギーの摂取を調整しましょう。
2. 高LDLコレステロール血症の原因と対策
LDLコレステロールを血液中に溜めやすくする飽和脂肪酸や工業的に作られたトランス脂肪酸の摂取量を減らし、不飽和脂肪酸を摂取するようにします。食事からコレステロールを多くとりすぎている人は、コレステロールの摂取を制限することも必要です。また、積極的にコレステロールを体外へ排泄するために、食物繊維の摂取量を増やすことが役立ちます。
3. 高トリグリセライド血症(高中性脂肪)の原因と対策
トリグリセライド(中性脂肪)は肝臓で余分な糖質から合成されます。これを抑えるために、炭水化物エネルギー比率を50~60%の中で設定し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控えましょう。過剰なアルコールも、トリグリセライドの合成を高めます。アルコール摂取制限は短期間で効果が現れるので、まずは禁酒か節酒をしましょう。一方、脂肪酸のうち、n-3系多価不飽和脂肪酸のEPA、DHAは肝臓でトリグリセライドを作りにくくするため、積極的に摂取するようにします。