自律的なやる気が豊かな人生をもたらす ~自己決定理論について~
はじめに
しっかり運動することは、がん予防の有効な方法ですが、日常生活の中でしっかりと運動することを難しいと感じている方は多いと思います。
最近、イギリスの研究チームが、ウエアラブル端末を用いて運動の強度と時間を測定することで、短時間の少しだけ強度の強い運動が、がん予防に有効であることを報告しましたので、紹介させていただきます。
紹介論文
Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity and Cancer Incidence Among Nonexercising Adults: The UK Biobank Accelerometry Study
JAMA Oncol. 2023 Jul 27;e231830.
doi: 10.1001/jamaoncol.2023.1830
背景
- 活発な身体活動(水泳やジョギングなど)は、がん予防のために効率のよい方法であると言われてきました。
- 一方で、多くの方にとっては、そのような身体活動時間を確保することは困難でした。
目的
機器により測定された毎日の活発な間欠的生活身体活動とがん罹患との関係を評価し、活発な運動をどれくらいすれば、がん予防につながるのかを明らかにすることを目的としました。
方法
- 22398人の自己申告による運動していない成人の前向きコホート解析です。
- 参加者の利き手首に装着した加速度計により、活発に運動している時間(早歩きや階段昇降など)を調べました。
- その時間とがんの発生率との関係を調べました。
結果
- 平均年齢は、62.0±7.6歳、男性10122人(45.2%)、女性12276人(54.8%)でした。
- 平均追跡期間6.7±1.2年の間に、2356件のがんイベントが発生し、そのうち1084件は運動不足と関連するがんでした。
- 日常生活における間歇的な活発な身体活動のほぼすべて(92.3%)が1分以内であることがわかりました。
- 日常生活における間歇的な活発な身体活動時間はほぼ直線的に転帰(がんの発生)と関連しており、特に運動不足と関連するがんの発生率は、活発な身体活動時間により、さらに抑えられていました。
- 1日に最低3.4~3.6分、日常生活における間歇的な活発な身体活動を行うことで、がんの総発症リスクを17~18%低下させることと関連していました。
- 1日当たりの日常生活における間歇的な活発な身体活動時間の中央値が4.5分であれば、身体活動に関連したがんの罹患率が31%~32%減少していました。
考察
この大規模コホート研究の結果は、1日3~4分の、日常生活における間歇的な活発な身体活動が、がん罹患リスクの低下と関連している可能性を示唆しています。
この場合の活発な身体活動とは、「速足で歩くこと」や「階段昇降」などを意味しています。
したがって、日常生活において、少し早く歩くことや、階段を使うようにしたりするなどの、間歇的な活発な身体活動は、なかなか運動ができない人や、運動する気が起こらない人のがん予防のための有望な手段である可能性があります。
また、この論文では、身体活動量とがん罹患を関連付ける因子として、炎症、インスリン抵抗性、体組成、内因性性ホルモンを挙げています。
これらは、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の要因とも共通しています。
やはり、元気で長生きを達成するためには、少しの時間でもよいので身体活動量を増やしていくことが大切であることを意味しています。