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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

脂質を知る ~脂質にも種類がある~ 前編

2022年2月14日

テーマ:生活習慣

コラムカテゴリ:医療・病院

はじめに

糖質、蛋白質とともに、三大栄養素の1つである脂質は、たくさん摂取しすぎてしまいますと肥満の原因にもなります。しかし、三大栄養素ですので、糖質や蛋白質とともに、適切な量は食事として摂取する必要があります。さらに、脂質には幾つかの種類もあります。良い脂質を適量摂取することが、大切になってきます。

脂質の役割

脂質には、1グラムあたり9 キロカロリーのエネルギーがあります。これは、1グラムあたり、4キロカロリーである糖質や蛋白質より高いため、脂質を摂取しすぎると肥満になる要因となります。しかし、一方で効率よくエネルギーを確保するための重要なエネルギー源であるという見方もできます。
さらに、脂質は、身体を形作っている細胞の膜の構成成分としての働きや、様々なホルモンの材料になる働きがあります。
口から摂取した脂肪は、体の中に入って、蓄えることができます。皮下脂肪として適切に脂肪を蓄えることで、私たちを寒さから守ってくれます。あるいは、様々な臓器の周辺に脂肪がたまることで、臓器保護作用を発揮しています。
また、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)は、脂質に溶けることで体内に吸収されますので、脂質が極度に少なくなると、ビタミン不足にも陥ります。

脂質の種類

脂質の主成分を脂肪酸と言います。脂肪酸は、多くが脂質を構成するグリセリンに結合して存在します。
グリセリンは、脂肪酸と結合することができる手を3本持っていて、グリセリンに脂肪酸が3個つながったものは「トリグリセリド(トリアシルグリセロール)」と呼ばれています(下図参照)。


私たちが普段食べている「あぶら」の成分の多くはこのトリグリセリドです。トリグリセリドは脂肪として、体内で蓄えることができ、必要に応じて、トリグリセリドの構成成分である脂肪酸を、エネルギー源として使用することができます。
ちなみに、健康診断の項目にある血液中の「中性脂肪」とは、このトリグリセリドの血液中の濃度を測定したものです。

いわゆる、「あぶら」には、液体のあぶら(油)と固体のあぶら(脂)があります。これをまとめて、油脂(ゆし)と呼んでいます。繰り返しになりますが、この油脂は、前述したトリグリセリドとして存在しています。この油脂や脂肪酸、グリセリン、コレステロールなどをあわせて脂質と呼んでいます。
なかなか言葉の定義が複雑ですが、脂質の種類と言えば、油脂、脂肪酸、グリセリン、コレステロールであると解説しているものもあります。

脂肪酸の種類

これらの脂質は、その主要構成成分である脂肪酸の種類で、性質がかわってきますので、脂肪酸の種類で脂質を分類することが一般的です。そこで脂質の種類を、脂肪酸の種類から考えてみましょう。
脂肪酸は、炭素、水素、酸素の3種類の原子で構成されています。そのうち、炭素の数や炭素と炭素のつながり方などの違いにより、様々な種類に分類されます。
大きくわけると、まずは「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に分類できます(下図参照)。炭素と炭素の間に二重結合が全くない脂肪酸を飽和脂肪酸、二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。飽和脂肪酸は常温で固体のものが多く、動物性の油に多く含まれる脂肪酸です。不飽和脂肪酸は常温では液体で、植物油を構成する脂肪酸の大半はこちらに含まれます。

さらに、不飽和脂肪酸のうち炭素の二重結合が一つのものを「一価不飽和脂肪酸」、2つ以上あるものを「多価不飽和脂肪酸」といいます。

多価不飽和脂肪酸の中で、鎖状に結合した3個目の炭素に二重結合があるものを「n-3系脂肪酸」といい、6個目の炭素に二重結合があるものを「n-6系脂肪酸」といいます。n-3系脂肪酸はオメガ3脂肪酸、n-6系脂肪酸はオメガ6脂肪酸とも呼ばれます。
多価不飽和脂肪酸は、生命の維持に不可欠であるにも関わらず、体内で作ることができないため食事からとる必要があることから、「必須脂肪酸」と呼ばれています。

一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は、構造的な特徴から、「n-9系脂肪酸」あるいは、オメガ9脂肪酸とも呼ばれています(下図参照)。


脂肪酸を分類する理由

上記の様に脂肪酸を分類する最大の理由は、脂肪酸の種類によって、健康に及ぼす影響や効果が異なってくるからです。
例えば、飽和脂肪酸は、乳製品、肉などの動物性脂肪や、ファーストフードやお菓子に使用されているパーム油などの植物油脂に多く含まれています。これらも大切なエネルギー源ではありますが、飽和脂肪酸をとりすぎると、血中総コレステロールが増加し、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患のリスクが増加することが予想されています。
一方、一価脂肪酸や多価脂肪酸には、それぞれ悪玉コレステロールを下げる働きや、動脈硬化を予防する働きなどが期待されています。
三大栄養素の1つである脂質と言えども、その中身を知っておく必要があることをご納得いただけたでしょうか。

後編に続く

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