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松田友和

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松田友和(まつだともかず) / 内科医

糖尿病内科まつだクリニック

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コラム

人工甘味料の功罪(後編)

2022年11月21日

テーマ:食事

コラムカテゴリ:医療・病院

~人工甘味料の注意点~

ご紹介したように、人工甘味料は甘味は強いが、摂取カロリーは極めて低い(あるいはゼロである)ため、健康にも優しい食品添加物であるようにみえます。実際に、砂糖などの糖質系甘味料の代わりに、幅広く使用されています。しかし、甘い話には裏がある、という格言通りに注意点もあります。


~注意点1:強い甘味に要注意~

以前から、人工甘味料の強い甘味に舌が慣れてしまうと、甘味に対する感覚が鈍くなってしまい、さらに強い甘味を欲するようになってしまうのではないかと危惧されています。
人工甘味料を用いたダイエット清涼飲料水を週に1カップ(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人と比べて糖尿病発症の危険が1.7倍高かったという報告もあります(下図参照)。 引用文献:Eur J Nutr 2014; 53: 251- 25




~注意点2:腸内細菌叢への影響~

近年、糖尿病をはじめ、様々な疾患において、腸内細菌叢の重要性が明らかになってきています。人工甘味料が腸内細菌叢に悪影響を及ぼして、糖代謝を悪化させることが初めて報告されたのは、2005年に雑誌Natureに報告されたサッカリンに関するマウスの実験結果でした(Nature 2015; 514: 181-186)。この中では、サッカリンを投与されたマウスは、短期的には血糖上昇も体重増加も起こさないが、長期的にはサッカリンにより腸内細菌叢が変化し、耐糖能異常を来してしまうというものでした。

また2022年8月には、人における研究結果が発表されました。
研究グループでは、3種類の人工甘味料(サッカリン、スクラロース、アスパルテーム)と天然甘味料のステビアを与えたグループ(いずれも使用量が認められている範囲内)、および甘味料なしのグループを設定し、それぞれの血糖値の反応を比較しました。
すると、4種の甘味料のうちいずれかを摂取し始めて2週間以内に、参加者の腸内細菌叢は有意に変化しました。さらに、スクラロースとサッカリンを与えたグループでは、血糖値の上昇が認められました。一方、この研究では、アスパルテームとステビアは、血糖値の変化は認めませんでした。
引用文献:Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance. Cell; August 19, 2022, DOI:https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.07.016


~まとめ~

それならば、アスパルテームとステビアは問題ないのでは?と思われるかもしれません。しかし、前編で示しましたように、アスパラテームや、アスパラテームから合成された人工甘味料には、体内でメタノールを産生するという懸念点もあります。天然甘味料であるステビアにも、多量に摂取すると発癌性や性ホルモンの減少を引き起こすのではないかと問題になった歴史もあります。甘味料に限らず、特定の何かを多量に摂取し続けるということには注意が必要です。

これらのようにある種の人工甘味料には、単に甘いだけではなく、健康に影響を及ぼす罠(わな)もありそうです。
これらのことを知ったうえで、人工甘味料と上手に付き合っていく必要があるのではないでしょうか。

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