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会社は、「ゴーイングコンサーン」でなければならないのだが
企業会計の基本原則である企業会計原則の重要な考え方の一つに、「ゴーイングコンサーンの原則」があります。
これは、企業が一時的な存在ではなく、継続的に事業活動を行うことを前提とする考え方です。会社は、個人とは異なり、経営者一人の寿命や能力に依存するのではなく、社会に価値を提供し続ける存在でなければなりません。
ところが、現実の中小企業経営において、このゴーイングコンサーンを実践できている企業は、決して多くありません。日本企業の存続率は厳しく、10年存続する企業であっても限られ、30年継続できる企業はごく一部に過ぎないと言われています。
このような経営環境の中で、多くの中小企業は、「会社を継続させるための備え」が十分にできていません。
社長が倒れたら、それが即座に「会社も倒れる」ことにつながる企業は少なくありません。
社長が病床についても、役員報酬を安定的に支払い続けられる企業、社長不在でも組織が機能し続ける企業は、残念ながら多くないのが実情です。
それで本当に大丈夫なのでしょうか?
社長ご自身で考えてみてください。
多くの中小企業では、社長が営業、財務、人事、商品開発、現場管理、重要顧客対応まで、ほぼすべての部署を実質的に率いています。会社の中枢機能を社長一人が担っており、社長なしでは会社が回らないという状態です。
このような状態に、御社はなっていませんか?
・自分がいないと重要事項が決まらない
・キーマンが辞めたら業務が止まる
・下に任せる仕組みが整っていない
・権限委譲が怖い
これらに一つでも当てはまる場合、御社は「社長依存型経営」や「属人化経営」に陥っている可能性があります。
落下傘方式のマネジメントになっていないか?
「社長が倒れる」と「会社が倒れる」企業に共通して見られる管理方式があります。それが、私が「落下傘方式のマネジメント」と呼んでいる組織運営です。
落下傘方式とは、社長の下に部長、課長、担当者というピラミッド型の組織が機能しているのではなく、航空機から降下する落下傘のように、社長とすべての担当者が一直線につながっている組織です。
私が海外進出を支援したことがある、ある会社の例で説明します。その会社は、年商100億円に達している中堅企業でした。その会社では、毎週木曜日に、朝から夜まで、社長が全社員と個別にミーティングを行い、社長が全社員に直接指示を出すマネジメント体制が敷かれていました。
課長、部長、役員は存在していました。しかし、その役職は、実質的な権限や責任を伴うものではなく、過去の業績に対する「処遇」や「肩書き」に近いものでした。すべての指揮命令は社長が行い、経営判断はその都度、社長の考えや感情に左右されていました。
社員たちは、社長の気分によって指示が180度変わることに振り回され、社長との人間関係を維持すること、社長に認められることが、仕事の中心的な目的になっていました。外部の経営コンサルタントである私の目から見ても、その状態は明らかでした。
その結果、誰も主体的・戦略的に行動せず、経営方針や予算方針は常にぶれていました。
このような会社では、年商数億円の時代から年商100億円に成長するまで、社長の成功体験があまりにも強く、組織マネジメントの体制が変わらないまま来てしまったことが根本原因になっていました。
このような会社は、意思決定が速いという長所がある一方で、社長の判断ミス、社長の健康不安、社長不在という事態が起きた瞬間に、会社全体が機能不全に陥る危険性を抱えています。これは、成長企業が見落としやすい典型的な組織リスクです。
完璧にできる人間はいないと自覚する
落下傘方式のマネジメントをとる経営者の多くは、部下のマネジメント能力を信用できず、自分が社内全員を直接管理し、操縦しなければ安心できないという認識を持っています。
しかし、社長一人がすべてを完璧に判断し、すべての社員を直接管理し続けることは、企業規模が大きくなるほど不可能になります。
組織がこの状態から脱却するためには、経営者が、部下にマネジメントを任せることから始めなければなりません。
人間は誰も完璧ではありません。社長も、部長も、課長も、社員も、完璧な人間ではありません。だからこそ、完璧な人材を探すのではなく、それぞれの能力と限界を見極めたうえで、任せられる範囲から任せることが重要です。
これが、属人化した中小企業経営を、組織で動く会社へと変えていく第一歩です。
「会社は自分のもの」と考えている社長ほど、会社は自分から離れていく
オーナー社長は、良い意味でも悪い意味でも、「会社は自分のもの」という意識を持ちやすい立場にあります。
良い意味では、その意識は、自己犠牲に近い会社への貢献や、成長への強い努力につながります。創業期や成長期において、社長の強い責任感と推進力が会社を大きくすることは間違いありません。
しかし、悪い意味では、その意識が会社の私物化、部下への権限委譲の遅れ、幹部育成の停滞、組織運営の属人化を生み出します。
社長の経営判断が正しく働き、社長が前面に立って会社を指揮し、落下傘型マネジメントが機能しているうちは、会社は非常に速く動きます。
しかし、社長の健康に問題が生じたり、社長の判断能力が衰えたり、時代環境の変化に社長一人の判断が追いつかなくなったりすると、会社が傾く速度は、成長するときの比ではありません。
さらに、このような会社では、社員が「この会社では成長できない」「これ以上のキャリア形成は望めない」と感じ、会社から離れていくスピードも速くなります。
その結果、会社自体が社長から離れていき始めます。
皮肉なことに、「会社は自分のもの」と社長が強く考えている会社ほど、会社は社長から離れていくのです。
まずヒトを認め、任せられるところから任せ、そのうえで仕組化する
経営者の最も重要な仕事は、部下の力量を見定め、任せられるところを任せ、その結果に対して自ら責任を取ることです。
経営者が組織における権限を持つのは、会社の株式を支配しているからだけではありません。銀行に対する債務保証をしているからだけでもありません。
マネジメントとして責任を負うからこそ、権限があるのです。
自らが責任を負う覚悟を持ち、部下一人一人の能力を冷静に見定め、任せられるところから任せていく。そして、業務、権限、責任、評価、会議体、意思決定の流れを仕組化していく。
この積み重ねによって、社長が倒れても倒れない会社、社長不在でも成長を続けられる会社、次世代に承継できる会社への道筋が見えてきます。
中小企業経営において、本当に強い会社とは、社長一人が強い会社ではありません。社長がいなくても、組織が自ら考え、動き、顧客に価値を提供し続けられる会社です。
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