年収のカラクリ ~年商5億円を超えた経営者たちの、自分の年収の決め方の技~
目次
長年、中小企業の社長と経営を考える中で気づいた、成長する経営者の「質問力」
受け身の経営者と、自ら問いを立てる経営者では、意思決定の質に差が生まれる
「学習するリーダー」と「判定するリーダー」では、組織から集まる情報が変わる
部下を活かす経営者の重要な質問 「君には僕のどんな助けが必要か?」
長年、中小企業の社長と経営を考える中で気づいた、成長する経営者の「質問力」
経営コンサルティングという仕事を長年続け、多くの中小企業経営者の方と経営課題について議論してきた中で、僕が強く感じていることがあります。
会社を継続的に成長させる経営者は、
「答えをたくさん知っている人」
とは限りません。
むしろ、
「何を問うべきか」を考える力が強い。
これが、一つの共通点だと感じています。
僕は、この力を、
「質問力」
と呼んでいます。
ここでいう質問力は、単に話し上手であるとか、質問の言葉遣いが巧みだという意味ではありません。
経営における質問力とは、
「いま本当に考えるべき問題は何か」
を明確にし、その問題について必要な情報・経験・視点を引き出し、よりよい意思決定につなげる力です。
会社経営には、学校の試験のような唯一の正解があるわけではありません。
売上を増やすべきか。
利益率を優先すべきか。
人を採用すべきか。
外注すべきか。
新規事業へ進むべきか。
海外へ進出すべきか。
借入を増やすべきか。
撤退すべきか。
経営者は、日々、このような答えの決まっていない問題について意思決定を続けています。
だからこそ、
「正解を知っていること」
以上に、
「正しい問いを立てられること」
が重要になります。
受け身の経営者と、自ら問いを立てる経営者では、意思決定の質に差が生まれる
僕の経営コンサルティングでは、その会社の過去と現状を整理し、
現在、何が起きているのか。
なぜ、その問題が起きているのか。
会社はどこへ進みたいのか。
そのために、どの課題を優先して解決するのか。
を経営者と一緒に考えます。
その過程では、僕から一方的に答えをお伝えするのではありません。
経営者と僕との間で、
「なぜ、そう考えるのですか?」
「この前提が違ったら、どうなりますか?」
「この方法の最大のリスクは何ですか?」
「松本さん自身が経営者なら、どちらを選びますか?」
「この戦略を実行するには、今の会社に何が足りませんか?」
という質問と回答を何度も往復します。
この往復の中で、経営者自身の考えも整理されていきます。
一方、
「先生が答えを教えてください」
という姿勢だけでは、経営者自身の意思決定能力はなかなか高まりません。
経営コンサルタントができることは、
経営者に代わって永遠に会社を経営すること
ではありません。
経営者が、
自社の状況を正しく把握し、
必要な問いを立て、
選択肢を比較し、
自分で意思決定できる状態を作ること。
僕は、これも経営コンサルティングの重要な役割だと考えています。
「よい質問」とは何か?
では、経営者にとって「よい質問」とは、どのような質問なのでしょうか。
僕が多くの経営者とのカンファレンスを通じて感じてきたポイントを整理してみます。
1、経営課題を事前に言語化している
成長する経営者の方は、カンファレンスが始まってから、
「さて、今日は何を話しましょうか」
とはなりません。
日常の経営の中で感じた違和感や問題を、あらかじめ言葉にしています。
例えば、
「営業は増えているのに利益が増えない」
「社員数を増やしたのに、社長の仕事が減らない」
「新規事業を始めたいが、既存事業との優先順位を決められない」
「この社員を管理職へ上げるべきか迷っている」
「値上げを検討しているが、顧客離れが怖い」
という具合です。
メモでも構いません。
スマートフォンでも構いません。
僕のクライアントの中には、カンファレンス前に、
「次回はこの3点を相談したい」
とメールで共有される経営者もいます。
重要なのは、
経営上の違和感を、そのまま放置せず、「問い」に変えておく習慣です。
問題を言語化できれば、その時点で問題解決はかなり前に進みます。
2、「何をすべきか?」だけでなく、「今の会社で何ができるか?」と問う
「何をすべきでしょうか?」
という質問そのものが悪いわけではありません。
理想状態を考えるためには必要です。
しかし、中小企業経営では、もう一つの問いが重要です。
「今の経営資源で、何ができるか?」
です。
例えば、
「海外へ進出すべきですか?」
と質問するだけではなく、
「今の資金、人材、商品力で海外進出するとしたら、どの進出方法まで現実的ですか?」
と問う。
「マーケティングを強化すべきですか?」
ではなく、
「月50万円の予算と現在の社員体制なら、どの施策から優先すべきですか?」
と問う。
「人を採用すべきですか?」
ではなく、
「今の業務量なら、正社員採用・外注・システム化のどれが合理的ですか?」
と問う。
こうすると、経営論が現実の意思決定へ変わります。
中小企業には、
資金。
人材。
時間。
ブランド。
採用力。
情報。
という制約があります。
経営戦略とは、この制約を無視して理想論を語ることではありません。
「本来何をすべきか」
と、
「現状の経営資源で何ができるか」
の間に、実行可能な戦略を作ることです。
3、答えを聞く前に、自分なりの仮説を持つ
さらによい質問は、
「どうしたらよいですか?」
だけで終わりません。
例えば、
「僕はA案がよいと思っています。
理由は、現在の資金、人材、顧客基盤を考えると、B案より実行可能性が高いと思うからです。
ただし、A案ではここがリスクだと思っています。
松本さんなら、この判断をどう考えますか?」
という質問です。
これは非常に質の高い質問です。
自分自身で、
情報を集め。
考え。
仮説を立て。
リスクを想定したうえで、
他者の視点を使って仮説を検証しているからです。
経営者が専門家を最も有効に使う方法は、「答えを代わりに出してもらうこと」ではなく、「自分の仮説をより強くすること」です。
4、知識そのものではなく、「自社の場合」を問う
現在は、インターネット検索だけでなく、生成AIを使えば、一般的な知識の多くを短時間で調べることができます。
したがって、専門家への質問も変わってきています。
例えば、
「デット・エクイティ・スワップとは何ですか?」
という質問であれば、一般的な仕組みは検索やAIで調べられます。
デット・エクイティ・スワップとは、一般に、企業の債務を株式等の資本へ転換する財務手法です。
しかし、経営者が本当に知りたいのは、
言葉の意味
ではないはずです。
「自社の場合、実行する意味があるのか?」
ではないでしょうか。
例えば、
「当社の財務状況、株主構成、資金繰り、金融機関との関係を考えた場合、デット・エクイティ・スワップを検討する合理性がありますか?」
と質問する。
さらに、
「実施しない方がよいケースは、どのような場合ですか?」
「実施した場合、将来の資本政策にどのような影響がありますか?」
と問う。
このような質問になると、単なる知識検索ではなく、
会社の状況。
経営者の目的。
専門家の経験。
複数の選択肢。
を組み合わせた経営判断になります。
これからの時代、専門家へ求めるべきものは、単なる知識量だけではありません。
「一般論ではなく、自社の場合どう考えるべきか」
を問うことが、専門家の知見を活かす質問です。
5、自分に都合のよい答えを引き出そうとしない
経営者が注意しなければならない質問があります。
それは、
「自分の判断が正しいと言ってほしい」
という前提で行う質問です。
例えば、すでに新規事業への進出を心の中で決めている経営者が、
「この市場、伸びますよね?」
「この投資なら大丈夫ですよね?」
と、自分の判断を肯定する情報だけを求める。
これでは、専門家を使う意味が薄くなります。
むしろ、
「この計画が失敗するとしたら、最大の理由は何だと思いますか?」
「僕が見落としているリスクは何ですか?」
「反対の立場から見れば、この計画の弱点はどこですか?」
と質問する。
この方がはるかに有益です。
よい質問とは、自分の考えを肯定してもらうための質問ではありません。
自分では見えていないものを見るための質問です。
6、「何が正しいか?」だけでなく、「何を捨てるべきか?」と問う
会社が成長すると、できることが増えてきます。
新規事業。
新商品。
採用。
海外展開。
M&A。
広告。
店舗展開。
IT投資。
経営者の目の前には、さまざまな選択肢が現れます。
しかし、経営資源には限りがあります。
だからこそ重要なのが、
「何をやらないか?」
という質問です。
例えば、
「来期、最優先する事業はどれか?」
と同時に、
「来期、やらない事業はどれか?」
と問う。
「どこへ人を増やすか?」
と同時に、
「どの仕事をやめるか?」
と問う。
「何へ投資するか?」
と同時に、
「どこから資金を引き揚げるか?」
と問う。
経営戦略とは、選択と集中です。
経営者の質問力とは、「何をするか」を問う力だけでなく、「何をしないか」を決める問いを持つ力でもあります。
7、新しい可能性を探す質問を持つ
よい質問には、もう一つ特徴があります。
現在の問題を解決するだけでなく、
「次に何ができるか」
を考える質問です。
例えば、
「現在の商品を、別の顧客へ販売できないか?」
「既存顧客へ、別の商品を提供できないか?」
「この業務を標準化すれば、社員へ任せられないか?」
「海外で売るとすれば、どの市場に可能性があるか?」
「AIを使えば、この業務をどこまで自動化できるか?」
「この会社を買収すれば、自社の弱点を補完できないか?」
このような問いから、新しい事業の可能性が生まれます。
経営者は、問題解決だけをしている人ではありません。
まだ存在していない可能性を見つけ、それを事業に変える人です。
「学習するリーダー」と「判定するリーダー」では、組織から集まる情報が変わる
僕は、多くの経営者と仕事をする中で、リーダーの対人姿勢には、
「学習する姿勢」
と、
「判定する姿勢」
の違いがあると感じています。
これは、僕自身が経営者やリーダーを見る際に使っている一つの考え方です。
学習するリーダーは、部下からも情報を引き出す
学習するリーダーは、
「自分が一番よく知っている」
という前提に立ちません。
営業担当者には、
「最近、顧客からどんな反応が増えている?」
と聞く。
若い社員には、
「僕には見えていない変化はある?」
と聞く。
現場責任者には、
「今の制度で、一番仕事を邪魔しているものは何?」
と聞く。
専門家には、
「僕の考えの弱点はどこですか?」
と聞く。
こうして、自分の外側から情報を集めます。
経営者は、会社の中で最も権限を持つ人です。
だからこそ、社員が経営者へ、
「社長、それは違います」
と言いにくくなることがあります。
その環境で経営者が質問をしなくなれば、
経営者に入ってくる情報は、次第に自分に都合のよいものだけになる危険があります。
これは、会社が大きくなるほど注意すべき問題です。
「判定すること」自体が悪いのではない
もちろん、経営者には評価する責任があります。
社員を評価する。
投資案件を評価する。
取引先を評価する。
事業を評価する。
これは経営者の仕事です。
問題は、
「学ぶ前に判定してしまうこと」
です。
相手の話を最後まで聞く前に、
「それは無理だ」
「その考えは間違っている」
「君は分かっていない」
と結論を出す。
これが続けば、社員は情報を持ってこなくなります。
悪い情報ほど、経営者へ届かなくなります。
そして経営者自身は、
「問題がない」
と思っているのに、現場では問題が拡大している。
という状態になります。
強いリーダーとは、何でも自分で答えられる人ではありません。
必要な情報が、自分のところへ集まる組織を作れる人です。
部下を活かす経営者の重要な質問 「君には僕のどんな助けが必要か?」
部下への質問にも、経営者の組織観が表れます。
僕自身、URVグローバルグループでは、自律的に仕事を企画し、判断し、実行できる人材との協働を重視しています。
URVグローバルグループの経営理念にも、次の考え方を掲げています。
URVグローバルグループ経営理念
4. URV Global Groupは、世界各国に存する、高い能力を有する自立した個や企業とのパートナーシップを結び、その有機的な結合に基づく組織の発展を重視する。
自律的に仕事ができる人材に対して、
経営者が細かな仕事の方法まで毎回指示する必要はありません。
むしろ、
目標を共有する。
必要な権限を渡す。
判断を任せる。
必要な情報を提供する。
そして壁にぶつかったとき、支援する。
という関係を作る方が重要です。
そこで僕が、部下やパートナーとの関係で大切にしている質問があります。
「君には僕のどんな助けが必要か?」
です。
この質問には、
「仕事は君に任せる」
という意味と、
「しかし、必要な支援はする」
という意味の両方があります。
例えば、
人が必要なのか。
予算が必要なのか。
僕の意思決定が必要なのか。
他部署との調整が必要なのか。
外部専門家が必要なのか。
顧客との交渉に僕が出る必要があるのか。
必要な支援は、その状況によって違います。
経営者が何でも代わりにやれば、部下は育ちません。
しかし、
「任せたのだから自分で何とかしろ」
と放置しても、組織は強くなりません。
任せる。
見守る。
必要なときに支援する。
そして再び任せる。
この循環が、自律した組織を作るうえで重要だと僕は考えています。
年商1億円から5億円へ進む経営者ほど、「答える人」から「問う人」へ変わる
会社が小さいうちは、社員から質問されれば、社長が答えることで仕事が進みます。
「あの顧客には、どう対応しますか?」
「この商品はいくらで売りますか?」
「この経費を使ってよいですか?」
「この問題はどう処理しますか?」
社長が答え続けます。
しかし、会社が成長すると、その方法には限界がきます。
すべての質問が社長へ集まれば、
社長自身が組織のボトルネックになるからです。
そこで、経営者の仕事を変える必要があります。
社員から、
「どうしたらよいですか?」
と聞かれたら、
「君はどう考えている?」
と問う。
「A案とB案があります」
と言われたら、
「それぞれの最大のリスクは何?」
と問う。
「A案で進みたいです」
と言われたら、
「何を数字で確認すれば、うまくいっていると判断できる?」
と問う。
そして、
「そのために、僕から何の支援が必要?」
と問う。
こうすると、経営者が答えを出す会社から、
社員自身が考え、意思決定できる会社
へ変わっていきます。
これは、年商1億円から5億円へ進む段階で非常に重要な組織変化です。
経営者自身に投げかけたい7つの質問
最後に、この記事の内容を、経営者自身が実際に使える形にまとめます。
会社の成長について考えるとき、次の7つを自分自身に問いかけてみてください。
1.いま、この会社で本当に解決すべき経営課題は何か?
2.その問題が起きている本当の原因は何か?
3.今の資金・人材・時間で、実行できる選択肢は何か?
4.僕自身はどう考えているのか。その仮説の弱点は何か?
5.自分に都合の悪い情報を、十分に集めているか?
6.何を始めるかだけでなく、何をやめるべきか?
7.この課題を解決した先に、次の成長機会は何か?
この問いに答え続けることそのものが、経営だと僕は思っています。
よい質問は、経営者の意思決定を変え、会社の成長を変える
経営者は、会社の中で最も多くの答えを求められる立場です。
だからこそ、
「自分が答えを出さなければならない」
と思いがちです。
しかし、会社が成長すればするほど、
経営者自身がすべての答えを持つことは不可能になります。
その段階から重要になるのは、
誰に聞くべきか。
何を聞くべきか。
どの情報を疑うべきか。
どの仮説を検証すべきか。
何を決めるべきか。
という「問いを作る力」です。
経営者の質問力とは、会話の技術ではありません。
会社の問題を発見し、他者の知恵を引き出し、意思決定の質を高めるための経営能力です。
そして、
社長自身がよい質問を持つ会社では、
社員も考えるようになります。
幹部も提案するようになります。
専門家から得られる情報の質も高まります。
経営者一人の知恵だけで会社を動かすのではなく、
組織の中と外にある知恵を、経営へ取り込める会社になっていきます。
経営課題を整理し、次の意思決定を明確にしたいオーナー経営者の方へ
「売上は伸びているが、次に何へ投資すべきか判断できない」
「組織を作りたいが、どこから社長の仕事を手放すべきか分からない」
「新規事業へ進むべきか、既存事業を強化すべきか迷っている」
「自分の経営判断を、別の経営者の視点から検証したい」
「年商1億円から、その先へ会社を成長させる道筋を整理したい」
こうした問題には、最初から一つの正解があるわけではありません。
だからこそ、
現在の状況を整理し。
問いを立て。
選択肢を並べ。
リスクを検討し。
経営者自身が意思決定する。
というプロセスが重要です。
年商5億円の壁を突破するための経営者伴走コンサルティング
年商3000万円から4億円程度のオーナー社長を対象に、2026年3月期・グループ総売上高48億円の企業グループを経営する現役オーナーCEOである松本尚典が、経営戦略・事業計画・組織・マーケティングから海外展開まで、経営判断と実行に継続して伴走します。
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/
初回120分経営カンファレンス
継続的な経営コンサルティングをご検討いただいているオーナー経営者を対象に、現在の事業、今後の成長目標、経営課題を整理し、次に何を問うべきか、どこへ経営資源を集中すべきか、本コンサルティングが課題解決に適しているかを双方で確認します。
https://direct.mbp-japan.com/menu/detail/936
よい質問は、会社を変える入口です。
そして、経営者が、
「正しい答えは何か?」
だけではなく、
「いま、自分が本当に問うべきことは何か?」
と考え始めたとき、会社は次の成長段階へ進み始めるのだと、僕は考えています。


