会社の成長力に、ソフトパワーを活用する

松本尚典

松本尚典

テーマ:ソフトパワー 成功例



「パワー」と、「ソフトパワー」の関係性


権力(パワー)とは、他者を自分の意思に従って動かすためのチカラです。

古来、人類の歴史上、都市国家から国家が成立する中で、その必須要素として権力(パワー)という概念が生まれ、現代にいたるまで、政治の基本は、この権力(パワー)の掌握にありました。

一方、企業も、国家と同様、従業員や業者などの他者を経営者の意思に従って動かすための組織である以上、権力(パワー)という概念は、企業経営においても、その掌握を考える必要があります。

権力(パワー)は、3つの構成要素からできていると言われています。

  1. 強制力
  2. 財政力
  3. ソフトパワー


強制力というは、現実的な力を持って従わせるチカラを言います。古代から封建制の国家においては、この強制力という要素が、権力の最大の要素でした。

財政力というのは、オカネのチカラです。人を動かすには、昔から、おカネがなく、強制力だけでは、その権力は継続しませんでした。したがって、先に例をあげた古代から封建制の国家においては、強制力とともに、この財政力が、権力を支える重要なファンダメンタルズだったのです。

権力(パワー)というものは、少なくても、上記にあげた3つの要素のうち、2つ以上の要素がないと保てないものなのです。

さて、現代の企業における権力(パワー)を考えましょう。

経営者が、他人を動かすために、現代の企業では、強制力を使用することはできません。他者を動かそうとして、強制力を行使すれば、それはたちどころに、パワーハラスメントとなってしまいます。

強制力という要素は、現代企業では、権力(パワー)の維持に使うことができないのです。

そして、先にあげた通り、権力(パワー)は、その3要素の1つでは、稼働しませんから、財政力だけでは、他者は、継続的に権力に従いません。社員に、どんなに給与の好条件を出しても、社員が安定的に働かないのは、財政力というパワーの1要素だけでは他者は動かない、という原則から導き出せるのです。

そこで、強制力に変わる、権力(パワー)の、第三の要素が必要となります。

これは、ソフトパワーなのです。

現代の企業は、財政力とともに、ソフトパワーが働いて、初めて、他者が継続的に経営者の意思に従って動くようになるのです。

ソフトパワーこそ、顧客へのPRにも、社員の能力向上にも使える、現代の「パワー」だ


ヒトは、権力の一要素である財政力だけでは、権力に従いません。そのため、歴史上、権力は、ヒトを従属させるため、物理的な強制力を財政力と並んで持つことが、支配のために必須とされてきました。

しかし、現代の企業の権力が強制力をもって、従業員を動かすことは、非常に危険です。そこで、強制力に変わる権力のパワーが求められます。これが、ソフトパワーです。

ソフトパワーとは、文化や哲学・思想・価値観などに対する共感により、他者に対して自己が望む結果を齎すチカラのことです。

強制力と同じく、またはそれ以上に、ソフトパワーは、財政力と相まって、強く他者を動かす事ができるチカラの源泉となります。

企業においては、企業理念・企業文化・経営哲学、そして商品開発やサービス提供の価値観などは、顧客からの共感を呼ぶだけでなく、社員をはじめとする従業員の業務の方向性を統一し、社員の能力向上のベクトルを指し示し、従業員の貢献意欲を引き出すソフトパワーを生み出します。

ソフトパワーは、単なるお飾りや、かっこつけではありません。

ヒトを動かす権力の、強制力に変わる物理的な効果が引き出す、不可欠なチカラの源泉、そのものなのです。

ソフトパワーの磨き方


ヒトを動かすには、強制力しかないという体罰主義のような認識は明らかに間違っています。ヒトは、会社から強制をされて動くよりも、会社のソフトパワーに同意し、会社への貢献を自らの目標に一致させて動くほうが、はるかに、力量を発揮します。

現代の会社は、その労働力のほとんどは、現業のそれではなく、知的労働者のそれなので、物理的な強制力では、ヒトは動きません。

では、強制力に変わって、ヒトを動かすソフトパワーは、どのようにして、磨けばよいのでしょうか?

まずは、会社の経営理念とドメインを明確にする


ヒトは、収入をえるためだけに仕事をしているわけではありません。やりがいや生きがいを求め、お客様からの感謝や、自己実現のベクトルにあった仕事を選びます。

会社の発信するソフトパワーを理解して、自分のやりがいや生きがいなどの自己実現に仕事が適合していることでモチベーションを高め、貢献意欲も増します。

ソフトパワーが、ヒトを動かすのは、そのためです。

従って、このようなソフトパワーの威力を発揮するためには、会社が、まず、ソフトパワーの源泉となる、会社の経営理念や、ドメインの策定に真剣に向き合う必要があります。

経営理念やドメインが、張りボテのような、羊頭狗肉のお飾りにすぎなければ、それをいくら表示して恰好をつけてみても、ソフトパワーは発揮されません。

会社の経営理念とドメインを会社の内外に向けて明確に発信し、共感を引き出す


中小企業のドメインは、経営者が、自分の人生をかけて創業した会社が、どのような顧客に、どのような商品サービスを、どのように提供するか、という事業の本質を抽象化・一般化させ、事業の成長ベクトルを想定して立案されたものである必要があります。そうであって、はじめて、そこからソフトパワーが生まれます。

ドメインは、経営者の人生の中の、未来に向けた事業戦略の中で、徹底的に鍛えあげられた思考に裏付けられたものである必要があります。外部のコンサルや、マーケティング会社が、美辞麗句を並べただけの、張りぼてのドメインは、まったく経営の指標として活用できるものではありません。

そうして経営者の思考によって、鍛え上げられたドメインを、会社の内外に向けて、わかりやすい言葉に置き換えて、明確に発信する必要があります。

このようにして発信されたドメインは、企業のソフトパワーを結集するのに、最も適しています。経営者が、自分の事業とは、このようなものを目指すものなのだという強い確信を持ち、会社の組織は、それを目指すために働くのだという発信をすることで、そこに共感して会社のドメインに、自分の働く目的を一致させるメンバーが集まれば、それが、最も強いソフトパワーを発揮することになります。

会社の経営戦略と実務戦術を、経営理念とドメインに沿ったものにする検証を繰り返す


ドメインは、決して、会社を設立する段階で制定して、それを放置するものではありません。
会社を取り巻く外部環境は大きく変化し、そして、企業が利益を蓄積して純資産が大きくなれば、その投資によって得られる経営資源も大きく成長します。

それによって、事業の規模が発展し、企業経営は、次々と次のステージへの進化を遂げます。

そうなれば、経営者は、常に経営理念とドメインを、会社の成長にあわせて変化させ続けていくことになります。

経営者は、このドメインの成長をしっかりと、発信をする必要があります。

会社の成長とともに、経営理念やドメインが成長し、それに伴って、従業員にも、そのドメインのレベルにあわせて、自分の仕事のレベルや能力を進化させることを求め続ける必要があります。その求めに応じられる従業員は、更に能力があがり、一方、それに追いついてゆけない従業員は、取り残されて脱落をしてゆきます。その脱落者のかわりに、新たな人材が入り、従業員間の新陳代謝と競争によって、企業の経営資源のチカラは、更に強くなるのです。

これが、ソフトパワーが齎す、組織強化のメカニズムなのです。

ヒトに強制力を行使しなくても、ソフトパワーを発信することで、組織は、自然に新陳代謝を引き起こし、組織が強くなってゆきます。

人事政策に失敗した時、僕は、ソフトパワー戦略に切り替えて、成長軌道を描き始めた


このように、ソフトパワーがヒトの掌握に必要なパワーであると書いている僕は、実は、若い頃、非常に強い強制力によって、ヒトを掌握しようとするタイプの管理職でした。

日本の銀行、アメリカの金融系コンサルタント会社と、日米の企業で管理職を務めた僕の20代から30代の時代、日本でもアメリカでも、強い強制力によって、ヒトを動かす事は、特殊なマネジメントではありませんでした。

日本の銀行も、アメリカ・ニューヨークのコンサルティングファームも、利益をあげることへの、猛烈なプレッシャーが、管理職にはかかっていました。

その中で、僕は、容姿からして、今の僕とは同一人物とは思われないほど、激しいタイプの人物でした。

今の50代後半に至って、僕は、若い女性の部下たちから、
「松本さん、ちーかわ、そっくりです♡」
と言われてしまうほど、ソフトな外見の穏やかな人間になりました。

しかし、当時の僕は、金融と外資系コンサルの特有の鋭い目をした、鋭角的な尖り切った人間でした。

一緒にいるだけで、相手に緊張感と圧迫を与えるようなタイプの人間だったのです。

その僕が、強権的なマネジメントをふるうわけです。それは、多くの部下の離職を齎し、それでも、僕は、できない部下に、容赦ない制裁を加えてきました。

そして、それゆえに、僕自身、数限りない人事的な失敗を経験した人間なのです。当時、僕がつくった業績には、多くの部下が下敷きになりました。

2007年に日本に帰国をしたころ、僕は、そのようなマネジメントに、完全な限界を感じていました。強制力を使って、部下を動かず時代ではなくなったことを、僕は悟ったのです。

しかし、部下を動かして業績をあげることは、絶対に企業人であれば、放棄することはできません。まして、自分の会社、自分が全責任をおう企業グループのオーナー経営者になれば、自分の企業と企業グループの成長を放棄することは、自殺に等しい行為です。

パワハラ体質からソフトパワー体質へ


僕が、それまでの強制力によるマネジメントの反省からとった行動は、パワハラ体質を捨て、ソフトパワーの構築と発信による部下の共感をもって、ヒトを動かす体制への転換でした。

自分の事業は、誰に対し、何のために行うのかを徹底的に考え抜き、それを部下や社外の業者さんにも、わかりやすく発信する「言葉」を磨きました。

こうして、出来上がったのが、
「夢をみろ それをカタチにする」
という、URVグローバルグループのドメインであり、5つの経営理念です。

URVグローバルグループ 5つの経営理念

僕は、社員の採用や、パートナーとの提携では、その重要な判断要素として、この経営理念やドメインへの共感を求め、その共感性の強い人材としか、仕事を一緒にしないという強い意志をもって、組織を創ってきました。

これが、世界の社員20名以下で、売上高44億円・税引き後利益4億円を1年間に生み出す強い組織を創り出す原理になりました。

僕は、今では、強制力を捨て、ソフトパワーによる組織管理を成功させた経営者だと自負しています。

もし、ヒトが自分についてこないと悩まれておられる、昔の僕のような経営者の方が、このコンテンツをお読みになっておられるならば、是非、ソフトパワーを活用するマネジメントを検討してみてください。

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松本尚典
専門家

松本尚典(経営コンサルタント)

URVグローバルグループ 

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