あなたは自分の会社を何故起業し、経営するのですか? エグジットを意識して会社を経営する重要性
「幸福の多様化」時代は、中小企業にとって、大きなチャンスの時代
令和の時代の日本では、個人が感じる幸福が多様化しています。個人によって、幸福だと感じる経験や体験が、かなり多様です。これをビジネスの観点で言い換えれば、個人顧客の満足度を、マスの尺度で測ることができなくなったということを意味します。
個人顧客の満足を満たすソリューションを、多品種少量生産で生み出し、それをスピーディに展開して、顧客満足を図る、中小企業のマーケティングが、マスで攻める大企業のマーケティングに勝つことができる時代になったということでもあります。
資本調達力やマス広告予算が劣るけれども、展開スピードと機動力が高い中小企業が大企業に勝てる時代が到来したということです。
「幸福の多様化」時代までの変遷
「幸福の均一化」の昭和
太平洋戦争が終結した後、高度成長を謳歌した時代の日本は、「一億総○○」という言葉があったほど、均一化した社会でした。この時代、日本は、世界でも稀に見る経済格差が少ない社会が実現されました。ほとんどの国民の所得が上昇し、国民の生活水準は平均的に上昇しました。男性の収入が平均的に安定したため、女性は結婚すると専業主婦となり、結婚は女性にとって、「永久就職」を意味しました。
このような一律の所得上昇と、戦後型家族モデルの高度成長期には、国民が一様に、冷暖房の空調を求め、カラーテレビを求めるといった形の均一な消費行動に出たため、消費が横並びの状態でした。
このような時代のマーケティングは、マス・マーケティングが機能しました。テレビCMなどの広告に膨大な経費投入できる大企業が、工場生産で効率的に生み出された商品が、圧倒的な勝ちをおさめる時代だったわけです。
昭和時代は、幸福の均一化時代といえます。
人々は、隣のヒトと自分の生活を比べ、隣のヒトよりも少し高い消費生活をすることを目指しましたが、このような社会は大衆化社会と呼ばれ、決して、当時の人々の幸福度が高かったとはいえないでしょう。
バブル崩壊と、格差の拡大の序曲
この戦後高度成長型の時代は、平成期に大きく崩れ始めます。
平成期にはバブルが崩壊し、同時に、グローバル化の波と、IT化・サービス化の流れが日本に押し寄せます。
社会のグローバル化やIT化は、業務にそれまでの学校教育では獲得できなかったインテリジェンスを求め、サービス化は大量の非正規雇用者を生み出しました。
就職モラトリアム化した大学、そこから排出された人材主体の、大企業の年功序列・終身雇用によって成り立っていた幸福の均一化のファンダメンタルズが地殻の下で大きく変動が進みます。
戦後型家族モデルを選ばず、結婚しない男女が増え、少子高齢化が大きく進み始めました。
経済格差の拡大と、幸福の多様化
産業のサービス化が生み出した大量な非正規雇用は、正規雇用社会の年功序列・終身雇用に基づく幸福感を大きく変えることになります。
経済的な観点だけから考えると、非正規雇用者は正規雇用者に比較して、その幸福感を仕事の未来に見出しにくいといえます。非正規雇用者は、仕事でいくら成果を出しても、待遇面でその実績が評価されることはなく、時間から時間を働いた報酬をえるだけですから、仕事に対する情熱が沸くはずがありません。
政治的には、このような状態を改善するのではなく、労働時間や労働条件面の待遇の改善が先行する中で、非正規雇用を中心とした層は、その立場が固定化されてゆきます。
このような層が、昭和期の均一化された幸福を追い求めるのは、無理です。結婚をし、マイホームを持ち、他人と同じ生活水準の向上を求めることはできない状態に至ったのです。
一方では、世の中のスピード感は格段に上昇し、IT化・DX化の中で、新たな成功者と新たな富裕層も誕生してきます。巨大資本が有利な昭和期には、誕生してこなかった新興のベンチャーの成功者も次々に生まれてきました。彼らは、均一化した消費ではなく、卓抜した質の高い消費生活を求めます。
中間層中心の日本社会は、こうして、経済的な格差の激しい社会へと令和期には変貌を遂げました。
リアルで幸福を味わうヒト
こうして経済格差が開く中、経済的に比較的豊かなヒトたちは、生活を越えたリアルな体験や、子供の教育、様々な趣味の世界など、モノを越えた「コトの消費」を通じて幸福を追求するようになりました。
昭和の高度成長期のような、横並びの消費は行わず、むしろ、自分や子供の能力開発、自分らしさの追求、自分だけのリアルな体験にオカネを消費して、幸福を追い求める傾向が強くなりました。
大量生産によって生み出されるモノへの消費は過剰化と成熟化が進み、個性と質・自分だけ感を演出する少量のコンテンツに、高額の消費が向かうようになりました。
このような少量生産や質を重視した「コト」の生産は、消費者と直接向き合いながら、その感覚を重視して商品・サービスを生み出すことができる中小ベンチャー企業に向きます。
経営トップや事業企画エグゼクティブが、顧客と直接の接点を持ちながら、顧客の求める商品やサービスを機動的かつスピーディに生み出すことができる体制の企業が成功する時代に突入したといえます。
一方で、リアルで幸福を味わえるヒトは、経済的にも、精神的にも選良のグループに属するヒトであるため、この層のニーズは、マスのアンケートなどの調査では、その本当のニーズが埋もれてしまい、掴めません。
リアルに幸福を味わうヒトへのサービスの成功企業である星野リゾートが、顧客アンケートを一切実施しないという方針をとるのは、まさに、そのようなマーケティング手法では、リアルの幸福追求組のヒトのニーズを抽出できないことを物語っています。
リアルな幸福を味わえないヒトも、バーチャルな幸福を味わえる
平成から令和にかけて、日本でも経済的な格差が開いています。
しかし、例えば、正規雇用への道が非常に狭く、経済的に不安定で所得が低い非正規の雇用者のヒトが、不幸に感じているのかといえば、それは、全くそうではない、というのが、平成から令和にかけての、日本社会の特徴だと僕は感じています。
現実世界で希望が持てなくても、幸福な体験をバーチャルな世界に求めて、自分の世界で幸福感を味わうことが、今の日本社会では可能になっています。むしろ、会社に縛られ、社畜的な生活を送るくらいであれば、非正規雇用で自分らしい生活を送るほうが、ずっと幸せだと感じるヒトが多いのです。
バーチャルな世界での幸福追求の、最も特徴的な例が、「推し活」です。地下アイドルや舞台俳優などを一方的に好きになり、その活動を「推す」活動は、すっかり市民権をえました。
僕の展開する事業の一つに、エンターテイメント事業があり、僕自身、モデルや演劇女優を所属させるモデル芸能事務所DRISAKUを経営しています。
モデル芸能事務所DRISAKU
https://urv-group.com/drisaku/
その関係で、僕は、多くの舞台に出演する俳優や女優に呼ばれて、年間で、ずいぶんたくさんの演劇の鑑賞に行くわけです。僕の場合、会社の経営者ですから、自分のスケジュールというものは、すべて自分でコントロールできる立場にいますので、一定期間の公演のスケジュールの舞台に呼ばれると、比較的空いている平日の昼間の時間帯の公演に必ずいくようにしています。
そうすると、びっくりする位に、中年の男性のお客様が多いのです。
普通の感覚からすれば、この年代の男性は、この時間、会社で働いているだろうという時間帯に、押しの女優さんの舞台を観に来ている男性が、非常に多数いるのに、驚きます。
これらの方は、おそらく、非正規の仕事をしながら、推し活で、舞台を観に来ておられるのだと思います。そして、僕たち、エンターテイメント業界が、このような方々の推し活に支えられて、巨大な利益をえていることを実感します。
世間では、いい年をした男性が、平日の昼間に、若い女の子の推し活をしている、ということに批判的な見方もあるかもしれません。しかし、僕がみるところ、その方々は、自分の幸福の姿を、追求して幸せそうです。
結婚によってリアルな幸福を味わえないヒトも、今の日本では疑似恋愛である推し活のバーチャルな世界で、自分だけの幸福を追求することができるのです。
リアル幸福層向けで成功するニセコ化戦略。バーチャルな幸福を味わうヒトにむけて成功するAKB型戦略 。
日本は、確かに、今、経済的な格差が、太平洋戦争後の高度成長期に比べて拡大しています。高まる消費税廃止論は、インフレ率に賃金上昇が追いつかずに取り残され、将来の展望も抱けない非正規従業員のヒトたちの叫びだとも言えます。
しかし、だからといって、日本人が、今、不幸になっているかといえば、そんなことはありません。リアルな経済社会の中で負け組になっても、バーチャルな世界の中で、自分らしい幸福追求の世界を築けるのが、今の日本社会なのです。
従って、その個人の幸福の支援をするソリューションも、多様な在り方が充分に可能です。
リアルな成功者が、サービスの差別化を求める中で生まれたソリューションは、北海道のニセコに代表されるニセコ化戦略です。経済力に大きな差異があるインバウンドで来日する旅行者の中の、裕福な層は、日本にきて、そうでないインバウンドの旅行者の振る舞いや消費の仕方を嫌います。そのために、経済的な余裕のないインバウンド旅行者が近づけない(または近づくと、不愉快になる)状態をわざと作り上げて、大きなお金を落とす富裕層だけが、非常に快適に過ごせる空間と、サービスを実現したのが、北海道のニセコです。
このような質の高いサービスを徹底的に追求し、少数の富裕層だけを囲い込んで高い利益を追求するビジネスモデルもありえるでしょう。
一方で、バーチャルな疑似恋愛的な「推し」活の中に夢をみる層を動員した総選挙システムで、爆発的な利益を集めたAKB戦略も同時にありえる時代なのです。
ニセコ戦略と、AKB戦略は、まったく、別の顧客層をターゲットにした、全く違ったビジネスモデルなのですが、それが、併存してともに成功を収めるのが、今の日本なのだと僕は思うのです。
つまりは、教科書的な成功法則は、存在しないのです。
ヒトがどこに幸福を見出すかを見極めれば、ビジネスチャンスは無限大に広がる時代
ビジネスとは、ビジネスユーザーやコンシューマーユーザーにソリューションを創って提供することにより、その付加価値を利益に替える行動に他なりません。
ソリューションとは、課題に対する解決法ですので、個人の幸福追求が多様化すれば、そこには、多様なソリューションが生まれるポテンシャルができます。
昭和期の高度成長のように、幸福追求が一元的だった時代には、そのソリューションの大量生産とマス広告に、大きな投資が可能な大企業が圧倒的にソリューション提供で有利な立場にありました。
しかし、令和時代に至り、格差が進んで、幸福の在り方が非常に多角化した今、そのソリューションのアイデアの源泉は、無限にあるといえるでしょう。但し、多様化しているだけに、そのソリューションの寿命は短く、かつ多品種少量生産になって、その広告対象も非常に限定的です。
このような時代には、スピーディな低投資のソリューション開発や、ターゲティング広告をおこなえる企業が、圧倒的に強い時代になるわけです。
ビジネスチャンスは、無限大に広がる一方、その開発と売り切りには圧倒的なスピードが求められているといえましょう。
このようなソリューション開発ができる企業が、圧倒的な成長と勝ちの成果を勝ち取ることができる時代になったと、僕は、思っており、実践をしているわけです。



