年商3000万円を超えるための、ヒトの使い方
目次
経営組織論は、すべての中小企業にそのまま適用できるものではない
社員が10人に達しない会社は、大企業型の就業規則を急いで導入すべきではない
経営組織論は、すべての中小企業にそのまま適用できるものではない
経営コンサルタントとして、売上高数億円規模の経営者の方から御相談を受けている中で、この規模の会社の経営者の方が抱かれる代表的な課題の一つが、
「社員の管理や評価をどうしたらよいか」
という課題です。
売上高が1億円に満たない零細企業の段階を脱し、数億円規模の売上を上げるようになった企業では、次第に従業員数が増えていきます。それまで、社長と個々の従業員との人間関係によって維持されてきた会社が、この規模になると、それだけでは組織を運営できなくなっていきます。
この規模の会社でよく起きる問題は、人事系のコンサルタントや社会保険労務士に相談し、就業規則を作成し、職能等級制度や人事考課制度を導入してみたものの、それが現場でほとんど機能しないという事態です。
近年では、生成AIを活用して評価シートや業務マニュアル、職務定義書を作成しようとする企業も増えています。しかし、生成AIが出力する制度や文書も、多くの場合、一般論や大企業型の組織モデルを前提にしています。そのため、自社の規模、社員数、社長の関与度、現場の成熟度に合わないまま導入すると、かえって運用できない仕組みを増やしてしまうことがあります。
その結果、企業成長を支援する私のところに、社員評価の方法や考え方、実施の仕方、さらには生成AIをどのように経営管理に使えばよいのかという課題が持ち込まれるのです。多くの社長は、
「うまくいかないのは、自分の管理能力が低いからだ」
と思い込まれてしまいます。
このような経営者の方から御相談を受ける際、私は最初に、現在の制度や運用実態を詳しく聞き取ることから始めます。
そうすると、
「うまくいかないのは、社長個人の管理能力の問題ではない」
ことが、見えてくるケースが非常に多いのです。
現在の制度が、その会社の「身の丈」に合っていないことが、原因であるケースが多いのです。
人事系のコンサルタントや社会保険労務士の方が指導し作成する職能等級制度、人事考課制度、各種の労務上の規則は、一定規模以上の企業を前提に設計されていることが少なくありません
。
私自身、かつて中小企業診断士試験に合格し、アメリカの大学でMBAを取得しました。経営戦略論、税務戦略、組織戦略論を、相当量学んできました。実際に学んだ者でなければ実感しにくいことですが、経営関連の理論やフレームワークの多くは、大規模企業やグローバル企業をモデルに構築されています。
例えば、中小企業診断士の方が、中小企業経営者向けの経営セミナーなどでよく使用するフレームワークの一つに、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)があります。これは、ボストン・コンサルティング・グループが開発したことで知られる経営分析のフレームワークです。
このようなフレームワークは、大規模企業の複数事業を分析するうえでは有効です。しかし、日本の地域密着型の中小企業、特に売上高数億円規模の企業に、そのまま適用できるとは限りません。
経営組織論もまた、多くは一定以上の規模を持つ企業を前提に構築されています。それ自体が間違っているわけではありません。しかし、着る人によって洋服のサイズを選ばなければならないように、経営のフレームワークも、企業の規模や成長段階に応じて選ばなければなりません。
Sサイズの人に、LLLサイズの服を着せても、それは実用的ではありません。
就業規則を作成し、職能等級制度や人事考課制度を導入しても、売上高数億円規模の企業で適用できない場合があるのは、それがその会社の規模や組織成熟度に合っていないソリューションであることが理由です。
生成AIの活用も同じです。生成AIに「社員評価制度を作ってください」「業務マニュアルを作ってください」と入力すれば、それらしい文書は作成できます。しかし、その内容が自社の成長段階に合っていなければ、制度は機能しません。生成AIは便利な道具ですが、経営判断の代替にはなりません。重要なのは、生成AIの出力をそのまま使うことではなく、自社の経営規模に合うように編集し、運用できる形に落とし込むことです。
成長する会社は、その規模に応じて、組織体制を進化させる
中小企業の経営者の中には、非常に勉強熱心な方が多くおられます。経営に関する書籍を数多く読み、セミナーにも参加し、その知識を自社の経営に取り入れようと努力されています。
しかし、経営のハウツー本や一般的な経営情報は、必ずしも自社の規模に合っているとは限りません。そこで用いられている経営理論は、P・ドラッカーをはじめとする偉大な経営思想家や経営実務家が残した、教科書的なフレームワークであることが多いのです。
その理論自体が誤っているわけではありません。ただし、経営のフレームワークの多くは、一定規模以上の企業や、世界的なグローバル企業を参考にして体系化されています。
人事組織管理論でも、同じことが言えます。
例えば、科学的管理法への反省から発展した人間関係論という人事管理論があります。この人間関係論は、ホーソン実験を契機として発展した理論として知られています。これは、大規模な工場組織を対象とした研究を背景にしており、組織の規模や前提が、現在の日本の中小企業とは大きく異なります。
そのような大規模組織を前提としたマネジメントを、日本の中小企業がそのまま採り入れても、うまく機能しないことがあります。
これは、生成AIの使い方にも当てはまります。生成AIは、一般的な知識や大企業型の管理手法を短時間で整理することに優れています。しかし、売上高数億円規模の中小企業が本当に必要としているのは、一般論ではなく、自社の人数、組織文化、管理職の有無、社長の関与度に応じた、実行可能な経営管理の仕組みです。
成長している会社は、その成長過程の中で、自社の規模に応じたマネジメントを、自分の身体に合わせたオーダーメイドのように採り入れ、それを成長に合わせて継続的に進化させています。
生成AIを経営に活用する場合も、この考え方が重要です。AIが作った制度をそのまま導入するのではなく、社長自身が経営方針を明確にし、その方針に沿って、AIを補助者として使うことが必要です。
社員が10人に達しない会社は、大企業型の就業規則を急いで導入すべきではない
例えば、就業規則の作成について考えてみましょう。
労働法上、就業規則は、常時10名以上の労働者を使用する事業場に作成・届出義務があります。ここで重要なのは、会社全体ではなく、原則として事業場単位で判断されるという点です。
つまり、会社全体の従業員数が10名以上であっても、一つの事業場に常時10名以上の労働者が勤務していなければ、その事業場において就業規則の作成義務が発生しない場合があります。
行政機関は、従業員が少ない会社にも就業規則の作成を推奨しています。また、社会保険労務士に相談すれば、少人数の会社にも就業規則の作成を勧められることが多いでしょう。これは、労務トラブルを予防し、労働条件を明確にするという観点からは、一定の合理性があります。
しかし、私は、中小企業の経営者の立場に立つ経営コンサルタントとして、一事業場の従業員が10名に達しない段階では、大企業型の詳細な就業規則を急いで導入することには慎重であるべきだと考えています。
就業規則には、個別の労働契約の内容に影響を与える法的効果があります。したがって、一旦、就業規則を定めてしまうと、労働者ごとに異なる労働条件を柔軟に設計することに制約が生じる場合があります。
しかし、事業場の従業員が10人未満の会社の場合、従業員ごとに勤務形態、役割、報酬、責任範囲を個別に設計できなければ、機動的な業務対応ができないことがあります。少人数の会社では、会社の必要性と、個々の労働者の能力や経験に応じて、労働条件や役割を柔軟に調整するほうが、成長性の高い組織を創れる場合があるのです。
一方で、従業員数が増え、個別の労働契約の管理が難しくなってきた段階では、就業規則によって一定のルールを整備することが合理的になります。
つまり、問題は「就業規則が必要か不要か」ではありません。問題は、どの成長段階で、どの程度の制度を整えるべきかという経営判断です。
生成AIを使えば、就業規則や社内規程の雛形を短時間で作成できます。しかし、AIが作った一般的な規程を、そのまま自社に導入することは危険です。法的な確認は専門家に委ねつつ、経営者は、自社の成長段階に合った制度設計になっているかを判断しなければなりません。
成長性が高く、機動性が要求される少数精鋭の組織を創るためには、過度に詳細な規則が、かえって組織の柔軟性を損なうことがあります。
そのため、法的義務のない段階で就業規則を作成する場合には、単に雛形を導入するのではなく、自社の組織規模、成長戦略、人材構成に合っているかを十分に検討することが重要です。
社員6名までの会社の社員評価は、社長が直接行うことが基本である
先に述べた通り、成長している会社は、その成長過程の中で、自社の規模に応じたマネジメントを、自分の身体に合わせたオーダーメイドのように採り入れ、それを成長に合わせて継続的に進化させています。
それでは、「その規模に応じたマネジメント」とは、どのようなマネジメントなのでしょうか。
会社規模ごとに説明していきます。
まず、社員が6名までの会社では、社員の評価やマネジメントは、社長が直接行うことが基本です。
創業段階で複数の人が集まって始めた会社の中には、規模が小さい段階で、創業者同士の考え方、事業の方向性、成長に対する価値観にずれが生じ、経営がうまくいかなくなるケースがあります。
経営は、民主主義政治ではありません。マネジメントと民主主義政治を混同することは、経営判断を遅らせ、組織の成長を妨げる原因になります。
創業期の会社では、一人の経営者が責任を負い、自らの経営理念のもとで、意思決定とマネジメントを行うことが重要です。多数決や合議制だけで創業期の経営を進めようとすると、意思決定が遅くなり、組織の方向性が不明確になることがあります。
メンバー6名というのは、1名のマネージャーが直接把握しやすい人数の一つの目安です。したがって、社員が6名までの会社では、マネジメントを複数の役員で分散したり、社長の下に中間管理職を置いたりすることが、意思決定や組織管理の効率性を損なう場合があります。
社員6名までの会社では、社長が自ら社員をマネジメントする形態が適しています。社長がマネジメント経験に不安を感じる場合には、経営コンサルタントを社外メンターとして配置し、社員からは見えない形で、社長の意思決定や社員評価を支援する方法も有効です。
この段階で生成AIを活用する場合には、評価制度を複雑に作り込むよりも、社長の評価視点を整理するために使うことが有効です。例えば、社員ごとの役割、期待成果、成長課題、面談記録を整理し、社長が一貫した視点で評価できるようにする補助ツールとして生成AIを使うのです。
ただし、最終的な評価判断はAIに委ねるべきではありません。少人数組織では、社員一人ひとりの事情、能力、意欲、会社への貢献度を最も把握しているのは社長だからです。
いずれにしても、社員から見た場合、上司が社長だけという形態が、最も効率的です。
社員6名から9名 までの会社は、「組織入門」体制を整える
社員が6名を超えたあたりから、社長がすべての社員を直接マネジメントすることに限界が出てきます。社長の人的マネジメント経験にもよりますが、一般的に、管理職が直接、業務の報告・連絡・相談を受け、適切に評価できる人数は、5~6名程度が一つの目安です。
したがって、社員が6名を超える組織では、その社員の中から、他の社員を管理し、育成できる中間管理職候補を置く段階に入ります。
この段階で重要なのは、社長が中間管理職にマネジメントを任せ、社員への直接的な指揮命令を徐々に減らしていくことです。
社長がそれまでのように全員へ直接指揮命令を続けると、中間管理職が育ちません。中間管理職を育てるためには、経営理念や経営計画をしっかり共有し、目標を自分で立てさせ、部下を指揮し、その目標を達成させる経験を積ませる必要があります。
この段階から、生成AIはより実務的に活用できます。例えば、管理職候補者に対して、部下面談の質問項目、週次報告のフォーマット、業務改善のチェックリスト、目標設定シートを作成させることができます。また、社長は生成AIを使って、管理職候補者に伝えるべき経営方針や評価基準を整理することもできます。
しかし、ここでも重要なのは、AIに制度を作らせることではありません。社長が自社の経営方針を明確にし、その方針を中間管理職が実行できる形に翻訳するために、生成AIを活用することです。
この移行を社長の意識が阻み、いつまでも直接指揮命令を続ける組織は、成長が止まってしまいます。
社長の意識改革が、会社の成長を決める段階が、このレベルの組織なのです。
生成AIの時代においても、中小企業経営の本質は変わりません。AIは、情報整理、文書作成、評価項目の洗い出し、業務改善案の作成には非常に有効です。しかし、どの制度を導入し、どの社員を育て、どのような組織にしていくかを決めるのは、経営者自身です。
売上高数億円規模の中小企業が成長を続けるためには、大企業型の制度をそのまま導入するのではなく、自社の規模に合った組織づくり、社員評価、管理職育成を段階的に進める必要があります。
もし、貴社がいま、次のような課題を抱えているのであれば、一度、外部の視点で組織体制を見直すことをお勧めします。
社員評価の基準があいまいで、社長の感覚に頼っている。
就業規則や評価制度を作ったが、現場で機能していない。
生成AIを使って制度やマニュアルを作っているが、自社に合っているか判断できない。
社員数が増え、社長一人でのマネジメントに限界を感じている。
管理職候補を育てたいが、任せ方がわからない。
売上高数億円から、さらに成長するための組織づくりを進めたい。
松本尚典の経営コンサルティングでは、単なる制度作成ではなく、会社の成長段階、経営者の考え方、社員数、事業モデルに合わせた実践的な組織づくりを支援します。生成AIの活用についても、一般論ではなく、経営判断と現場運用に結びつく使い方を具体的に設計します。
まずは、現在の組織課題、社員評価の悩み、生成AI活用の方向性について、無料相談でお聞かせください。
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