キャシュレス経済の現在(いま)と、未来(これから)

松本尚典

松本尚典

テーマ:銀行 企業 関係


新札発行 金融庁の真の目的


2024年7月3日、日本で新札が発行されました。今回の新札の1万円札に採用されたのは、近代日本の経営の父とも言える渋沢栄一氏であることから、渋沢栄一氏に関係する諸機関や地方は、お祭り騒ぎのように喜んでいます。

しかしながら、肝心の国民の反応は、極めて冷ややか。

特に若い賢いヒトほど、
「なんで、このキャッシュレスの時代に、あえて、新札なんて出すわけ?」
という、冷めた反応です。

おそらく、今回の新札発行後の新札流通スピードの遅さは、かつて、新札発行の大失敗事例といわれる、二千円札に匹敵するのではないでしょうか?

実は、金融庁の、今回の新札発行の真の狙いは、旧札に代わって、スピーディに流通をさせることを狙いとしたのではありません。世界の金融界で囁かれている、北朝鮮によるスーパー偽造マネーが、円に及ばないうちに、偽造不可能なテクノロジーによって生み出された新札に、円を切り替える必要があったのです。

通常、偽造通貨というものは、偽造する側の判断の事情で、必ず、真札とどこかを違えて作るものです。しかし、北朝鮮は、アメリカ合衆国が誇るドル紙幣印刷の機密技術を長年かけて盗み出し、ドル紙幣と全く同じ偽造ドルを創り出すことが、現在、できるようなレベルに到達しています。これが、金融界で言われている、スーパーダラーです。このスーパーダラーは、今でも、合衆国の監視当局の目を逃れて、世界で流通していると言われています。

日本は、この北朝鮮の通貨偽造テロが、円に及ばないうちに、国家の威信をかけて、偽造が不可能なテクノロジーを入れ込んだ、新円札を出したのです。

一方で、キャッシュレス経済も大きく推し進めつつ、同時に、莫大な国家予算を投入した新札開発は、日本の金融の威信をかけた、大きな国家セキュリティ戦略だったのです。

キャッシュレス経済は、日本ではどこまで進んだのか?


そして、その新札の流通が非常に遅いのは、もちろん、今の日本に、キャッシュレス決済化が、非常に早いスピードで押し寄せているからです。

2023年の全決済に対するキャッシュレス決済比率の割合は、39.3%に到達しました。つまり、現時点で、円決済の4割は、すでに現金を支払っていないことになります。

日本の場合、他の先進国と同様、キャッシュレス決済におけるクレジットカードの比率が83.5%と断トツ、トップとなっています。VISA・JCB・AMEX・ダイナーズの4大ナショナルブランドのクレジットカードは、日本では、個人の与信枠を付与されている会社員や、経営者・自営業者に広く行き渡っており、企業の経費決済でも、経営者の与信枠を使ったクレジットカード決済が、圧倒的に多数の決済手段として用いられています。

その他のキャッシュレス決済は、コード決済が8.6%。電子マネー決済が5.1%。そして、デビットカード決済はわずか2.9%にしか過ぎません。

デビットカード決済は、クレジットカード会社から与信枠が付与されない学生や、高齢者、過去にブラックリストに登録をされてしまった方などの利用が多く、無審査であるために発行枚数は膨大でも、その決済額は普通預金残高の範囲内であるため、単価が極めて少額で、キャッシュレス経済の位置は、弱小です。

クレジットカード与信の世界


アメリカのITバブル崩壊や、リーマンショックを乗り越える中、クレジットカード会社の与信審査は、非常に厳しくなりました。しかし、年収が高く、支払遅延がなく、利用額が毎月大きいユーザーのクレジットカードの与信が、どんどんアップする傾向は、いまだに代わりません。

僕は、代表取締役を務める会社が日本国内で3社あり、自分のカバンには個人の消費用を含めて、合計4つの財布をいれています。各会社の経費と自分の生活費が混じらないように、財布をかえているのです。

しかし、この各財布には、それぞれ、現金は、10,000円程度しか入れていません。そのかわりに、各財布には、法人名義のナショナルブランドの全クレジットカードと、西側ブランドが使えない中国経済圏に行った場合に使用する法人名後の銀聯カードが、びっしりと入っています。

自分の衣食の生活の決済も、僕が使用する会社の活動のための経費も、すべてクレジットカードで行っており、現金しか扱わない店(現金以外にデビットカードだけが使える店を含みます)には、僕は、殆ど行きません。

アメリカでの生活が10年以上あった僕は、おそらく、従来から、相当に、クレジットカードに頼る生活をしている人間だと思いますが、この僕のような消費形式に、日本人も近づいています。

実際、コロナ禍後、日本の高級飲食店の中に、クレジットカード以外での支払いができない店が出始めています。

アメリカやEU諸国では、5つ星ホテルに宿泊する場合、チェックアウト時の支払方法を問わずに、クレジットカードのデポジットを求められ、それが提示できないヒトの宿泊を断るのが、普通です。これは、高価なホテル備品の持ち帰りなどを防ぐため、その損害を担保するために、クレジットカードのデポジットを取得するためです。そのため、実質的に、日本以外の先進国では、クレジットカードの与信がないヒトは、5つ星ホテルには宿泊ができません。

また、中国では、既に、人民元の現金を店ではほとんど扱わなくなっています。したがって、中国に旅行や出張に行くヒトは、いまでは、円を人民元に変えるのではなく、中国内で決済に使えるカード(最大手の銀聯とナショナルブランドのクレジットカードが提携したカードが主流です)を用意することが必須になっています。これがないと、中国本土では、買い物や外食がほとんど不可能になってしまいます。

さて、キャッシュレスの実質上の手段が、先進国の場合、圧倒的にクレジットカードが多いため、キャッシュレス時代には、与信が極めて重要な時代になるということを意味します。

現在のクレジットカード会社の与信は、年収(企業カードの場合は売上高)、支払遅延がないこと、利用額の月次の大きさ、で決まっています。そして、信用情報に傷がつくと、ナショナルブランドのクレジットカードは、確実に止まります。日本が、欧米型のキャッシュレス時代に近づいているということは、とりもなおさず、上記のような与信の保持が、個人でも企業でも非常に重要な時代に入ったということを意味します。

個人の場合、与信を傷つけやすい代表的な事例が、スマホの代金の支払い遅延でしょう。スマホの毎月の使用料・通話料の請求の中には、機種のリース代が含まれている場合が非常に多いのです。このリース代は、住宅ローンの原本返済と同様、その支払遅延を複数回、起こすと、信用情報にブラック情報として記載されてしまいます。

そうなると、クレジットカードが瞬間で止まり、新規の借り入れができなくなり、住宅の賃借に必須な家賃保証も新規ではおりなくなるため、引っ越しも不可能になります。

キャッシュレス時代に移行しつつある現在(いま)、自分や自分の会社の「うっかり」の支払遅延が、致命的な経済的な「死」を齎すようになったことを自覚しておく必要があります。

今の先進国のキャッシュレス時代に、新興国はすぐにおいついてきます。その新興国に途上国もいずれ追いつきます。世界の決済が、猛烈なスピードでキャッシュレス化するとすれば、そこで最も重要な課題は、与信設定です。

与信が伴わない普通預金との連動が前提のデビットカードでは、世界の需要はあがりません。与信を正確に設定し、個人と企業が稼ぎ出す未来の価値を、前倒ししてクレジットカードによって使用させることで、信用経済は、莫大なディスカウントキャッシュフローを生み出すことができます。

これが、キャッシュレス時代の経済の姿です。

そこでは、与信の付与を正確に行う企業が勝者になります。人力を遥かに超えるスピードで、莫大な情報をビックデータとして読み込み、その情報をもとに、AIが与信を行うところに向かっているのが、キャッシュレス時代の本当の姿です。

そうなると、企業も個人も、あらゆる関連情報がAIによって与信のための情報として利用されてしまうことを意味します。

キャッシュレス経済の未来は、それと裏腹で進む高度な与信審査を実現するため、個人のビックデータがAIに読み込まれる時代の到来でもあるのではないかと僕は思います。

個人の機密情報と、クレジットカード会社のAIの暗闘が、僕たちのしらないところで、激烈に進むというのが、キャッシュレス時代の未来の姿なのではないでしょうか。

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