責任感ある人材を育てることができる、経営者の条件とは?

松本尚典

松本尚典

テーマ:採用 面接 コツ



1、「ウチの社員は、責任感がない」 これ、経営者の責任では?


経営コンサルティングを仕事にして、多くの経営者の方々と話をする中で、多くの経営者の方からお聞きする台詞があります。

「ウチの社員には、責任感がない。」
「責任感がある社員を採用するには、どうすればよいですか?」

社員の資質というものは、そのヒトが生きてきた数十年の人生の中で、生まれ育った家庭や受けてきた教育、経験してきた人間関係や道徳観などによって、大きく影響されます。したがって、社員の資質そのものを、企業が教育で変えられる余地は、非常に狭いというのが、実情です。

「人間は何歳になっても変われる。」
という話は、そのヒトが変化に対する柔軟な対応ができる資質と、変化する努力を行えることが条件になるのであって、そのような状態を、すべての社員に求めることはしないほうがよいでしょう。

但し、こと、責任感という意識については、企業がはっきりりとした発信を社員に行い、それを持たせる風土を会社に作ることによって、醸成できます。

「ウチの社員には、責任感がない。」
という経営者の方の場合、その責任は、社員にあるのではなく、責任感を求める発信と責任感を醸成する風土を会社に作っていない、社長の責任なのではないかと僕は、感じています。

2、ヒトは、カネでは責任を負わない


責任感と言う資質は、カネで買うことができません。

よく、部下の責任感を高める意図で、執行役員や取締役にして、報酬をあげる企業がありますが、それは、完全に間違ったマネジメントだと僕は思っています。

責任感の高い人材を執行役員や取締役に着任させるべきであって、役職や報酬を与えたからといって、責任感が生まれることはありません。

この点を誤ると、責任感なき幹部が生まれ、その下の部下に大きな悪影響を与え、組織を壊します。

3、P・ドラッカー が掲げるマネジメントの育成ポイント


では、経営者が責任感ある人材のリテラシーを見抜き、それを育む組織を創るには、どうすればよいでしょうか?

僕は、P・ドラッカーが、経営の古典的名著「現代の経営」の中で述べている、以下のポイントが、非常に優れた指摘であると思います。

ドラッカーは、責任感あるマネジメントを育む組織は、以下の4つの方法によるべきと述べておられます。


  • ヒトの正しい配置
  • 仕事の高い基準
  • 自己管理に必要な情報の開示
  • マネジメント的視点



ヒトの適性と能力に応じた適切な配置のための真剣かつ継続的、かつ体系的な努力を続けること。

個々の能力を発揮させうる、高い仕事達成基準を与え、それを自己管理させること。

その自己管理に必要な、組織の情報を開示すること。 責任と権限を同時に与えること。

権限を持つヒトには、必ず責任をとらせること。

そして、最後が、仕事を権利としてとらえ、自らの仕事やその部下の仕事を、主体的に把握するようにすること。



以上が、ドラッカーの4つの方法の具体的意味であると、僕は把握し、自分の組織でも実践して、人材を育てています。

責任が欠如するヒトが多くなる組織は、
経営者がワンマンで意思決定を行い、その決定に従うオペレーションを部下に求める。
仕事の目標を上から強制し、自己管理ではなく、上から管理する
組織目標と個人の目標との両立を考えずに、配置を上から決定する
仕事を与えられた義務だととらえる人材によって構成されている


このような組織特徴があります。

4、権限と責任は、クルマの両輪である


責任と権限は、人事のかなめです。

ヒトを劣化させる最も悪い人事は、責任をおわせて権限を与えないことであり、組織を劣化させる人事は、権限を与えて責任を負わせないことです。

責任と権限は、ヒトを育てる上で、クルマの両輪のように、必ずバランスよく与えなければならないものです。

適材適所の人事配置を行い、その配置した人材に、能力を少しだけ上回る目標を自己設定させて、権限を与え、その権限を行使して業務を遂行させて、その責任を全うさせることを行えば、ヒトは、責任感をもって仕事を進めます。もし、このようなマネジメントを行っても、責任感を持たない人材がいるとすれば、それは、そもそも、組織に採用してはならない人材を採用してしまったことに問題があると言えましょう。

5、仕事を「義務」と捉えるか、「権利」と捉えるか?


先に挙げた、ドラッカーの言われる「マネジメント的視点」というのは、仕事を自分の権利と捉える考え方から生まれる、と、僕は思っています。

責任感を持つ人材の基本は、仕事に対するスタンスです。仕事を、会社から受けたものと捉える義務感によって遂行していると、一見、責任感が強くなるように思います。

しかし、義務感で仕事を進める人は、結局、その仕事を与えられたものだと解釈しているため、責任感が希薄化してゆきます。

一方、仕事を自分の「権利」だと把握している人材は、自分の仕事に対して、責任感が強まります。

オーナー経営者は、会社が自分のものであり、その会社で成功してゆく権利が、仕事だと把握しているため、責任感が強烈に沸いてくるのです。このような経営者からみると、自分の部下には、自分が仕事を命じているため、部下は義務感で仕事を進めているだけとなり、経営者からみると、圧倒的に責任感が希薄化しているように見えるわけです。

部下に責任感を持たせたいと考える経営者の方は、部下が、自分の仕事を権利だと把握し、自分が自分の仕事をマネジメントしているという自覚を持つように、組織を作ってゆくことが肝要です。

具体的な、組織作りのオペレーションは、様々な方法があり、具体的には、会社ごとに決めてゆくことになりますが、基本は、部下が主体的に自らをマネジメントできる組織を創ることが、責任感を部下に持たせる、最も重要なコンセプトなのです。


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