コロナ禍で増加する富裕層を魅了する商品で躍進する 株式会社フリーバス企画
1.2022年年末商戦は、コロナ前(2019年)と様変わりしている
このコラムは、2022年12月に執筆をしています。2022年12月の年末商戦は、コロナ前の2019年のそれと比較して、大きく様変わりをしています。
例えば、年末商戦の中心に位置する百貨店。お歳暮の催事コーナーを設けて、集客を例年通りはかっています。
しかし、大手百貨店の経営者の方、曰く。
中間層の方々のお歳暮の売れ行きが芳しくなりません。お歳暮の催事コーナーをみても、例年は、平日の午後には、連日、受付待ちが発生するのに、今年はガラガラ。お歳暮コーナーに人が少ないのが明らかです、と。
飲食店の経営者にヒアリングを重ねても、今年は、2019年に比べて、忘年会や団体予約が明らかに少ないと、軒並み、回答されています。飲食店の場合、2020年・2021年のコロナ禍時代が非常に悪かったので、そこと比較をして、そこよりは回復している、とは言われています。しかし、既に、ワクチンが行きわたり、緊急事態宣言が出ない2022年は、既に、中国を除く世界は、コロナが明けており、そこから考えると、2022年は2019年並みに戻らなければならないはずです。それが、戻っていないといえましょう。
一方、百貨店では、1990年代以降、消えていた外商部が近年復活し、高所得者層の取り込みに注力していますが、この層の購買は、極めて好調です。お歳暮に限らず、VIPは、相当に大きな金額を消費しており、高額な消費や飲食が、この層によって行われています。
つまり、2022年年末商戦の特徴は、これまで日本内需経済のエンジンであった中間層の消費が縮小し、高所得者層の消費が拡大している、という特徴があります。
2.何故、2022年年末商戦の消費が大きく変化したのか?
このような消費の傾向は、上位層ほど消費を行い、下位層にいくほど消費を抑えるアメリカ型の消費構造への移行といえましょう。
日本の消費構造は、中間層が最も大きな消費を行う市場構造にありました。従って、日本の製品は、主に中間層を意識したものが主流でした。いわば、「サザエさん」の家庭を想定して商品開発が行われてきたといえましょう。
その構造が、逆ピラミッド構造に変わりつつあります。
では、何故、このような消費構造に移行しているのでしょうか?
メディアとSNSの影響を圧倒的に受ける下位層
所得的な下位層(若いサラリーマン独身層・年金生活者や、非正規雇用者などの家計)は、今、最もメディアとSNSの影響を受ける層だと言えます。
メディアやSNSは、中間層や上位層も利用していますが、彼らはテレビの視聴やSNSを自分が得たい情報や発信したい情報のツールとして目的的に使用する傾向があります。
一方、下位層は、テレビやSNSの発信される内容に、最も影響を受けます。テレビやSNSの視聴時間は、それが時間つぶしに最適なことから、所得が低い層ほど、多くなる傾向があります。
新型コロナ禍の初期段階では、テレビ番組に、様々な専門家と称するゲストが登場し、危機感を煽りました。SNSにも、陰謀論やフェイクニュースが溢れました。その影響を最も受けたのが、それらの視聴時利用間が最も多い所得下位層でした。
今、テレビ番組が最も煽っているのが、インフレ対策による、「節約術」です。そして、コロナ禍第8派の影響を最も引きづっていて、それが明けやらぬうちに、インフレと円安の進行に最も打撃を受けているのが、下位層の状態です。
従って、下位層は、おカネを最も消費に回していない、回すことができない状態が発生しています。
将来の不安に備えて、外貨建て投信などに資金を投資する中間層
一方、中間層は、アフターコロナ禍で、決して所得が低くなっているわけではありません。寧ろ賃金は上昇傾向にあり、人手不足の中で、失業率も低くありません。中間層にお金がないわけではありません。
中間層は、今、将来の不安に備えて、財布の紐を引き締めているという状態にあります。
日本は、高度成長期に圧倒的な割合を占めるに至った中間層が、消費の中心を構成しています。アメリカのように、中間層が、上位層と下位層に分かれて分断が進行している形に至っておらず、中間層が最も厚い層を形成しているのが、日本の特徴です。
今、この中間層の資金が、消費ではなく、「貯蓄から投資」に向かう傾向を示しています。その投資が、国内投資ではなく、海外投資(外貨建て投資信託)に向かっているのが、2022年の特徴です。
円安の進行が更に進むと考えられているため、円を売って外貨建ての投資信託で運用し、為替と運用益の二重の利益を見込む資金ですが、その原動力は、日本の将来に対する不安に備える傾向と言えましょう。
中間層は、今、所得を消費に回す量を抑え、海外投資に向かわせて、将来の不安に備え始めています。
インフレの影響を受けて、高所得層の消費
現在、進行しているインフレによる物価高は、所得が低い層ほど、深刻な影響を受けています。従って、高所得者層は、ほとんど、インフレによる影響を受けている心理的な傾向はみられません。
寧ろ、この層は、2年間のコロナ禍の夜明けで、2022年年末に、消費を増やしています。百貨店による外商を経由しての購買や、高級なレストランでの飲食など、高所得者は、旺盛な消費を行っています。
2022年の消費は、中間層に支えられていた、これまでの日本の消費から、高所得者層に支えられている傾向に変化してきています。
高所得者層の消費というのは、中間層の消費よりも、移ろいやすいのが特徴です。例えば、贔屓のレストランを、彼らは、自由に選択することができますので、中間層に比べて、固定的な購買を続けません。あちらこちらに浮気を自由にできるという特徴があります。
従って、中間層向けのビジネスよりも、高所得者向けのビジネスのほうが、商品・サービスへの選別が、厳しいのが特徴です。
3.2023年以降、マーケットで更に進む、「格差」の影響
よいか悪いかという価値判断はともかくとして、以上に掲げた2022年年末商戦に現れた現象は、日本社会に格差が拡大し、それが大きく消費に反映していることによると見たほうがよいでしょう。
日本社会は、いまでもアメリカ社会に比較して、中間層中心の社会であると思います。日々の生活が苦しい下位層は、それほど厚い層ではなく、国民の中心は、中間層に位置しています。
しかし、その中間層は、次第に、下位層にくだるか、上位層にのぼるか、という形で動いています。中間層の層が次第に上下にかわれ、格差が生じ始めています。そして、中間層を形成している層が、将来の日本や自分たちの未来に不安を持っており、消費を抑えて、貯蓄や投資で守りに入っています。
この傾向は、2023年以降、更に強まると、企業の経営者は考えておく必要があります。
4.中間層向け「買わなくても済む」商品・サービスに陥っていないか
このような国民構成と、消費意識に立った時、経営者は、自分の会社の商品・サービスを次のような目で再確認する必要があります。
中間層向けの「買わなくても済む」商品・サービスになっていないか?
上記のような傾向の中で、最も打撃を受ける商品は、中間層を広く消費者に捉えた「買わなくても済む」商品サービス群です。
例えば、コロナ禍に言われ出した「不要不急」という言葉が該当する商品・サービス群です。
日本社会が豊かになる中で、商品サービスが豊かになり、不要不急の商品・サービスがたくさん生まれました。一方で、中間層は、今、将来に不安を感じ、消費を圧縮している中で、「買わなくても済む」「不要不急」の商品やサービスを買い控えています。
コロナ禍で、最も打撃を受けた商品・サービス群は、このような不要不急と消費者に判断されてしまう商品・サービス群でした。
・行かなくても済む、「居酒屋」
・行かなくてもテレワークで済む、出張のための「ホテル」
・お家需要で代替できる「レジャー」
・デリバリーで家でも楽しめてしまう「外食」
・ユニクロで済んでしまう「アパレル」
このような、中間層向け不要不急の商品サービスは、中間層が労働者人口減少と、上位層と下位層に分かれることで、減少を続け、しかも、その消費の紐が固くなる今後の流れの中で、競争過多による需要減と供給過多の中で、淘汰が始まる商品群だと判断しなければなりません。
5.10人中1人が、「絶対、買いたい」商品・サービスを目指せ
2023年以降の淘汰が進む中で、生き残るための商品・サービスとは何でしょうか?
資金力が豊富な大企業が開発し、広告力で販売してゆく商品と異なり、中小企業の商品・サービスは、圧倒的な資金の裏付けが必要な広告力で勝負することはできません。
10人中5人以上が買うことを目指す大企業の戦略と一線を画し、中小企業は、10人中9人は買ってこないけれども、1人が「絶対に買う」という商品・サービスを目指さなければなりません。
これが、中小企業が勝つ鉄則です。
大企業のマーケティングや商品開発を真似ても、中小企業は勝てないのです。
・限られたヒトがいつも集う「割烹料理の店」
・そこに出張をするヒトが、必ず利用する「ホテル」
・一定の趣味を持つヒトが必ず使う「レジャー用品」
・デリバリーでは味わえない、そこだけのサービスがある「レストラン」
・特定の用途に必須な「オーダーメイド服」
このような商品を目指すのが、中小企業の勝つ戦略です。
そして、そのような商品サービスの開発や創出が、格差が広がる時代に、勝つための方程式なのです。
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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