2022年年末商戦から占う、2023年以降の消費動向~キーワードは、「格差」~
目次
2.顧客のニーズをニッチ分野に絞り込むマーケティングを行う企業が生き残る
4.「お受験」の必須アイテムとなった「家族の装い」に的を絞り、高いコンサルティング能力でトップランナーとして走る 株式会社コージアトリエ・プリュス
1.新型コロナ禍が、打撃を与える、アパレル産業
新型コロナ禍により、飲食業や旅行業が大きく打撃を受けました。
一方、コロナウイルス対策の「ヒトとヒトの接触を減らす」という政策が、新しい日常の到来を加速させたことによって、副次的に打撃を受けた業界があります。その一つが、アパレル業界です。
特に、オフィスへの通勤が減少したことによるスーツなどのビジネススーツの需要や、外出用のおしゃれ着の需要は大きく減退し、おそらくは、この需要減少はコロナ禍が過ぎ去っても、容易に元には戻らないことが予想できます。
今後、人が着る服は、ほとんどの場で、ユニクロが販売の主力におくような価格帯の商品で賄えるようになってしまうため、高価格帯の正式な装いのソリューションを販売するアパレル小売りは、その需要を元通りに取り戻すことは、簡単にはできないものと評価せざるをえません。
アパレル業界は、コロナ禍を契機にした新しい日常で、大きく淘汰される業界であると予想されます。
2.顧客のニーズをニッチ分野に絞り込むマーケティングを行う企業が生き残る
しかし、アパレル業界が淘汰されると言っても、そこで生き残り、更に成長する個別の企業が現れないわけではありません。
恐竜の絶滅をもたらした地球環境の激変の中でも、生き残る生物がおり、その生物が進化をして、哺乳類・霊長類、そしてその後の地球を支配した人類が生まれたように、環境の激変を機会に、新たな進化の未来を歩む企業は、必ず現れます。
環境の激変のせいにして、俯き、混乱し、自ら絶滅するか?
環境の激変に対応して生き残り、進化をし、次の覇者に成長するか?
環境の激変は、企業の経営者に、その選択の機会になるのです。
さて、アパレル業界の話に、一旦、戻りましょう。
では、今後、淘汰されるアパレル業界で、生き残る企業は、どのような企業でしょうか?
3.株式会社コージアトリエ・プリュスのビジネスのご紹介
ここで、ご紹介するのが、株式会社コージアトリエ・プリュス(以下、プリュスと略称します。)です。
プリュスの親会社 株式会社コージアトリエは、銀座を代表する婦人服のオーチクチュールで、2022年で創業50年を迎える、老舗企業です。
オートクチュールとは、かつてのパリの社交界で、上流階級がパーティなどで装う高級な服を、完全フルオーダーで制作する業態で、現在、銀座にも、株式会社コージアトリエだけが残っている企業になりました。
株式会社コージアトリエは、プリュスの代表取締役を務める渡辺陽子社長のお父様 渡辺弘二氏が、創業された会社です。
この渡辺家は、ご家族のすべてが、慶應義塾大学を卒業されているという、大変、優れたご家系で、陽子社長も、慶應幼稚舎から慶應義塾大学へと、一貫して慶應で学ばれた方です。
陽子社長は、御自身が大学を卒業された後、大手百貨店で実務経験を積まれ、その後、お父様が社長を務める株式会社コージアトリエに入社。そこで、オーダー服のデザインと販売のご経験を積まれました。
僕は、お父様が経営する株式会社コージアトリエに、同社の顧問弁護士さんからご紹介をいただき、かつて経営顧問として入らせていただきました。
その中で、後継者としての陽子社長と出会ったわけです。
陽子社長は、そのころ、御自身のお子様の幼稚園・小学校受験(いわゆる「お受験」)をご経験になりました。
お受験が、中学校以上の受験と異なるのは、幼児の学力が試されているのではなく、幼児の潜在的な可能性を試されている点です。
そして、幼児の潜在的な可能性というのは、家庭に現れると多くの学校の選抜に携わる先生は考えておられます。従って、選考の中の非常に重要な要素が、「家庭のよさ」におかれています。
従って、お受験では、選考対象の幼児だけではなく、その家庭の教育姿勢や環境、更に、お父様やお母様の御見識や教育レベルも選考の対象になっているのです。
親が駄目な家庭の子供は、どんなに優れていても、名門幼稚園・小学校には入れないのが、現実です。親の収入が高ければよいということではなく、両親の経済力とともに、両親の見識や家庭環境が問われてきます。
従って、学校説明会などの事前活動、そして受験に幼児を伴っていくご両親の装いも、非常に重要な選考対象になります。
そこに、「お受験服」が必要となる理由があります。
今、このようなお受験服のマーケットを睨み、名門百貨店もお受験服の販売にチカラをいれており、参入するアパレルメーカーも出てきています。
しかし、お受験服というのは、決して、お母さまが、紺色のスーツを着ていけばよい、というような安易なものではありません。
選考対象が、ご家庭のよさや、両親の見識・経済力を問われているのですから、その家庭の見識や教養、そして経済力を表現する服装を、そのご家庭の様子を見ながら、個別にデザインできることが、最も、合格に近い方法になります。
プリュスの陽子社長は、御自身がお受験の世界の頂点に位置する、慶應幼稚舎を出身され、更に、お父様が銀座という地で55年にわたって取り組んでこられた、フルオーダーのオートクチュールの伝統とブランド・技術をそこに加え、「ご家族をトータルに表現するお受験服」という分野に参入されました。
株式会社コージアトリエ・プリュス社長 渡辺陽子社長
https://urv-group.com/works/works-006/
4.「お受験」の必須アイテムとなった「家族の装い」に的を絞り、高いコンサルティング能力でトップランナーとして走る 株式会社コージアトリエ・プリュス
そして、毎年毎年、多くのお受験をされるご家族が、プリュスの装いで合格していかれる中で、合格のための情報収集・実績と経験を積まれました。今では、トップクラスのお受験予備校との提携もいくつもお持ちになり、お受験の装いのトップランナーとして、走っておられます。
アパレル業界では、コロナ禍の中で苦境に立つ企業が、お母さま用のお受験スーツとして、定番のスーツを量産し、販売を強化する企業が現れています。
しかし、お受験スーツというものは、新入社員が着用する就活スーツのような、金太郎飴的に組織に従順さを示すような服装ではありません。
その家庭の見識と経済力を、学校側は選考対象としており、その選考のための戦略として、家庭を表現するツールなのです
プリュスでは、単に、お母さまの無難な装いではなく、そのお母様・お父様・受験するお子さんが、総合的に、家庭の見識を表現できるためのトータルコーディネイトを、受験する幼稚園や小学校の考え方にあわせて、オンリーワンでデザインする販売方法をとっています。
陽子社長は、お受験に特化した、最適なトータルデザインを提案するという方法で、他の追随を許しません。
お受験は、選抜という最重要な事柄であるため、アフターコロナ禍において、既に、通常通りの対面の選抜方法に戻っています。お受験の装いも、他のアパレル企業が苦境に落ちる中、プリュスでは、コロナ禍でも売上成長の勢いは止まらず、強い成長を続けました。
5.お客様が絶対に必要なニーズを追求し、それを徹底的に絞って攻める戦略を追求する
プリュスの事例からもわかる通り、コロナ禍のような緊急事態や、新しい日常への環境変化があっても、「お客様が絶対に必要な場面」に特化し、その場面に必須なソリューションを提供する企業は、成長速度を落としません。
お客様が絶対に必要なニーズを満たすための商品やソリューションを徹底的に絞って攻める戦略を追求してきた企業なのか?
「単なる贅沢品」として買わずに済ませてしまえる商品やソリューションを、流行の流れに乗って売り続けてきただけなのか?
それによって、コロナ禍での企業の勝敗が大きく変わってしまったのが、プリュスの事例からわかると思います。
[囲み装飾]松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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