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松本尚典

年商5億円の壁を突破したい社長のための経営コンサルタント

松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

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コラム

デットエクイティスワップを使って、経営者の会社への貸付負債を圧縮する

2022年3月3日 公開 / 2022年9月17日更新

テーマ:会社 借金 債務 減らす

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 相続税メンター事業承継問題


1.社長が会社に貸し付けをしていませんか?


突然ですが、御社では、会社に社長が個人的に貸付けをしている財務の処理をしていませんか?

多くの中小企業では、創業から年数をえるにしたがい、会社に対する社長の個人貸付けが増えてくるものです。

もちろん、逆に会社が社長個人に対して貸し付けを増やしている会社も見受けられます。

何故、このようなことが起きてしまうのでしょうか?

2.社長と会社の貸し借りの殆どは、役員報酬の増減額の損金不算


中小企業を経営したことがない方から観ると、会社から社長へ、社長から会社へ、借入金を計上するくらいなら、社長の給料を減額したり、あるいは、社長にボーナスを出したりすれば、いいじゃないの、と思うと思います。

実は、これをやりますと、日本では、法人税法上、非常に不利なのです。

日本の法人税法の実務では、会社は、新事業年度の開始から3か月以内に支払いを開始した役員報酬を、期の途中で変更した場合(ボーナスの支給も含めて)、その増減額分の損金算入が否認されてしまうという、ルールがあります。

そのため、日本の中小企業では、定時株主総会で決議した、その年の役員報酬を、期中に変更させることが事実上、できません。

しかし、事業というのは、期首に予想した通りに、収益が計画的にあがるものではありません。

今期は、収益がこれだけあがると思って、役員報酬を株主総会が決議したものの、期中で思いもよらぬ事態が発生し、このままでは赤字に陥る、という場合もあります。ひどい場合には、資金のショートを起こす場合もあります。

一方で、収益があがるかどうか、不明な状態であれば、役員報酬を多めに株主総会で決議してしまうと、その収益が下にふれた場合、役員報酬を下げるわけにはいきませんので、役員報酬は、どうしても抑えめ、に決議するのが、健全な中小企業の「常」です。

このような事情から、中小企業では、経営者である社長の役員報酬を機動的に変更させることができません。

そうなると、社長自身にお金が必要になったり、あるいは、会社に運転資金が足りなくなったりするわけです。

そこで、会社から社長がおカネを引き出したり、逆に社長が自分のおカネを会社の口座にいれて支払いを行うことが、中小企業ではよく発生するのです。

3.長年、会社への入金を続けていると、債務超過に陥ってしまう


この中で、注意をしなければならないのは、社長が会社に対して、自分の役員報酬や財産から、資金をいれ続けてしまった場合の措置です。

一般的に、会社からおカネを引き出してしまうのと異なり、オーナー社長が自分の資金を会社にいれて、会社の運転資金にし続けることは、社長からすると、罪悪感がないため、これが長期にわたって、続くことがよくあります。

債権者である取引銀行も、会社からの役員の借入に対しては、かなり厳しく指摘をしてきますが、逆に、会社に社長が資金をいれていることに対しては、厳しいことを言いません。

しかし、これが、実は、中小企業では、大きな問題に発展することがあるのです。

4.債権には相続税が課税される


一番、劇的に大変な事態が発生するのは、社長が急死をされた場合です。

会社にお金を入れていた場合、財務上は、ほとんど、会社への役員の貸付と処理されています。つまり、会社に対して、社長が債権を持っている状態です。

債権は、株式投資のように、元本が返済されないものではなく、返済されることが前提です。

しかし、社長が会社に資金をいれているような事態というのは、赤字会社ですから、その資金自体は、会社に残っているわけではありません。支払いに、使ってしまっています。

そうすると、社長に債権だけが残り、会社には返済にあてるだけの純資産はありません。

この状態で、社長が亡くなり、相続が発生した場合、その社長の債権は、相続財産になってしまいます。

相続税が、相続人に発生します。会社におカネないのに、社長の相続人に、その分の相続税がきてしまうわけです。

このような場合、相続人には、被相続人である社長が、会社にいれてしまい、支払いに充て続けた債権があるという自覚は、まずありませんし、会社にも、相続人に債権を弁済する資金が残っていません。そこに、相続税がきてしまうのです。

5.会社がいつのまにか、債務超過になってしまう


それ以上に、問題なのは、会社に資金をいれ続けているうちに、その金額がすべて会社の短期借入金として計上され、それが蓄積されてしまう点です。

本来、オーナー経営者が会社に資金をいれる場合、出資の形をとるのが本来のありかたです。

しかし、出資をするためには、会社が普通は発行可能株式の範囲内で新株発行を行う手続きをふみ、増資をしたうえで(法定準備金に組み入れれば資本金の増資にはなりませんが、通常は、資本金の増資となります)、資本金の変更登記や、税務当局・地方自治体への届け出もする必要があります。

このような手続きは、非常に煩雑であるため、これを踏まないで会社に社長が資金をいれてしまうと、これは、短期借入金として計上することになります。

短期借入金は、1年以内に返済義務がある会社の債務ですので、これが、蓄積をした場合、会社の信用力は、どんどん低下してしまいます。

短期借入金が、会社の現預金や棚卸資産などで構成される流動資産を上回ってしまった場合、流動性比率が100%を割り込み、倒産予備軍の企業と見做され、正常な金融機関は、融資を行わなくなります。ひどい場合には、貸し剥がしなどの回収で、金融機関が防御にでる可能性すらあります。

6.対処法 デットエクイティスワップを使う


このような状態になってしまっている場合、出来るだけ早めに対処をして、財務諸表を綺麗にする必要があります。

企業の状況により、対処法は様々ですが、一般的な方法として、ここでは、デットエクイティスワップを使って改善する方法をご紹介します。

デットエクイティスワップとは、デット(負債)と、エクイティ(純資産・株主資本)を、スワップ(交換)する方法です。

名前は、難しそうですが、手続き的には、まったく難しいことではありません。

社長が持っている債権を会社に対して、現物出資をし、その出資に見合う新株を発行して増資を行い、増資の変更登記を行って、行政機関に届けるという手続きを踏みます。

そして、短期借入金を負債から消して、資本金をその分増やす、というの帳簿上の手続きを行います。

従来、現物出資は、
・その価額が500万円を超える場合
・もしくは発行する株式総数が全体の10分の1を超える場合
・新株発行数が5分の1を超える場合
には、検査役の調査が必要とされ、非常に手続きが難しかったのです。


これが、2006年の新会社法によって、検査役の調査が不要になりました。
そのため、上記のような手続きで、デットエクイティスワップが行えるようになったのです。

7 デットエクイティスワップのメリット


デットエクイティスワップを使うことで、株主持ち分である純資産を増やし、一方で、短期借入金を減らすことができます。

これにより、債務超過を解消し、流動性比率を高めることができ、与信調査やM&Aによる資本受け入れや売却にも、非常によい影響があります。

ただ、社長は、会社からの返済を受けることができなくなります。

しかし、株式を取得することができますから、債務超過を解消させて、会社を再建したり、成長企業M&Aで投資を受けることができるようになります。

このような手法のM&A 成長企業M&Aは、こちら
https://urv-group.com/services/consulting/growing-manda/


会社に対して、資金を入れ過ぎてしまった社長は、早めに、デットエクイティスワップを実行して、会社の財務を健全な形に戻してください。

資金が完全にショートしてからでは、遅すぎますので、心当たりのある経営者は、お早めに対策を立てましょう。

続く

松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス

https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/

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