あなたの会社の資金調達に向いている方法は何か? 借入? 投資? 補助金?
1.会社の資金が足りなくなることは、経営者が誰でも経験するこ
サラリーマンをしていた方が、脱サラをして、会社の経営をはじめたとき、誰でも経験することが、資金の不足です。
会社の経営というものは、外から観ているとわからないのですが、本当に予想以上に資金がかかるものなのです。
実際、起業のときに、事業計画をたてていた方でも、予想をはるかに上回る資金の出方に、おびえる方が多いのです。
サラリーマン時代、会社が負担をしてくれていた日常的な交通費や、出張旅費。
文房具やコピー用紙、コピー機のトナーなどの消耗品。
自分の役員報酬や、ヒトを雇った場合、アルバイトですらかかってくる法定福利費。
そして、決算後に課税される消費税や、法人税・地方税。
運転資金用に借りた借入金には、毎月の元本返済と金利負担。借入金の残高は、どんどん減ってくるため、これが尽きた場合には、営業利益から、これを返済してゆかねばなりません。
サラリーマンを退職して起業した人は、よく、自分の社長としての役員報酬を、最初は多めにとって社長気分を味わうことが多いのですが、数か月もしないうちに、この愚策に気づく、ということもあります。そして、社長の役員報酬を期中で引き下げても、引き下げ分は損金で落ちないことを知って愕然とする・・・。
こんなことは、経営者によくある話です。
とにもかくにも、会社の経営には、従業員には知る由もないほど、出費のおカネがかかるのです。
2.資金が足りない場合の、資金調達法
このように、資金がかかる会社経営では、資金が不足してしまうことは、頻繁に起きます。特に、起業したばかりのころには、それが起きやすくなります。
このようなことに備えて、あるいは、そうなってしまったときの対処法や、やってはいけないことを発信するのが、このコラムの目的です。
銀行からの運転資金の借入と、銀行とよい関係を作る方法
資金の不足に備える最も一般的な方法は、運転資金の借り入れを銀行から行う方法です。
運転資金とは、収益で費用を賄えないで、資金繰りがマイナスになった場合に、会社の運転を続けていくための資金のことです。
この運転資金調達は、一般的には取引銀行から行います。ただ、今はこの取引銀行とのお付き合いを開始するのが、非常に難しいのです。
今、会社を設立する際に、最も難しいのは、銀行口座を開設することです。法人名義の銀行の普通預金口座は、詐欺集団に利用されたりすることを防止するため、銀行は新規開設に非常に慎重です。
特に、メガバンクの普通預金口座の開設手続きは、厳重になっています。会社の設立登記をしても、その後に、メガバンクの普通預金口座を開設できないという事態が、決して珍しいことではありません。
この対策として、最も有効な方法は、会社を設立する地域で経営をされている経営者の方から、地域の取引銀行の紹介を受けて、その銀行の当該支店で普通預金口座を開設し、同時に、そちらの銀行の支店で、運転資金の貸し付けをしてもらえないかどうかを相談する方法です。
通常、創業時の融資は、政策金融公庫などの公的な機関で申し込みます。これが通れば、勿論、その方法が正道なのです。しかし、都市銀行に最初に口座を開設し、政策金融公庫で
運転資金の融資を創業時に受けるのは、代表取締役に、ある程度の信用の基盤がないと難しいのです。
一方、地域の銀行で営業の担当者がついてくれる場合には、口座開設手続きや、運転資金の融資可能額の相談にも乗ってくれることが多く、経営をスタートしたての経営者にとっては、これは非常に頼りになります。
僕も、2015年に最初に日本で会社を設立した際、父親の住む自宅で会社の登記をしてスタートしたのですが、その近くの行きつけの料理屋さんのオーナーマスターから、多摩信用金庫の営業の担当の方をご紹介いただき、スムーズに普通預金口座を開設していただき、その後、はじめての運転資金の融資をいただきました。
口座の開設についても、多摩信用金庫さんは、新しい会社を僕が設立をすると、すぐに、営業担当の方が、口座を開設してくれます。そうすると、その後、メガバンクも、スムーズに口座を開設してくれます。
今では、多摩信用金庫さんの管轄外に設立した会社への融資まで含めて、日本国内のURVグローバルグループ各社の、重要なデッド資金の資金調達先として、お付き合いをいただいております。
こうした銀行とのお付き合いで重要なことがあります。
それは、融資をいただいた会社の決算が確定し、申告を終えたら、できるだけ早く、営業の担当の方を、こちらからアポ訪問し、税務書類一式の資料の提供を、融資を受けている銀行に対して行い、業績を報告することです。
このようなことをきちんとしておくと、借りっぱなしの企業に比較して、銀行の印象は格段によくなります。
税務書類を銀行に決算後に提出しておくと、次に、資金が必要になった際、銀行は、非常にスムーズに融資の審査を行ってくれますし、また、返済の進捗状況や利益剰余金の状態がよければ、銀行側から、
「資金が必要な時は、いつでも融資をしましょう」
と、提案をしてくれるようになります。
銀行の支店は、政府や行政機関からの指導で、企業融資を進める圧力を受けています。だからと言って、銀行は、どこの会社にでも融資をしたいわけではありません。
事業が計画的に進められ、利益も毎年、利益剰余金として留保されており、決算もしっかり行われていて、かつ金利や元本返済に確実に実績と信用のある企業に、優先的に資金を供給したいと思うのは、当然です。
よく、銀行の悪口を言う経営者は、
「銀行は、晴れているときには傘を貸したがり、雨が降ると傘を貸さない。」
と言います。
しかし、これは、銀行側の論理からみると、当然のことです。
従って、経営者は、晴れているときに、きちんと資金調達をして、これを事業に投資し、利益をあげて留保し、雨が降っても、返済をしっかり続ける体力を作ることが必要です。
そうすれば、資金が苦しくなったとき、銀行はいつでも協力をしてくれるようになります。
資金が逼迫したときの借入先と、やってはならない対処法
さて、理想的な経営は、上記のような方法なのですが、理想通りにいかないのが、これもまた経営の現実です。
経営資金が逼迫し、経費や税金の支払いに支障が生じるなどの問題が、企業ではよくあることです。
その場合、銀行との関係が薄く、機動的に貸してくれなかったりする場合、どうしたらよいでしょうか?
このような場合、比較的、少額の経費の支払いや税金の支払いであれば、ビジネスカードを作っておいて、これで経費の支払いにあてる方法が、最近は便利です。ビジネスカードにリボ払機能をつけておき、支払いを繰り延べれば、借入と同様の効果が発揮します。
但し、リボカードの金利は、利息制限法が定める最高利率に近いため、資金繰りが改善したら、優先的に繰り上げ返済をして、恒常的にリボ残高が残らないようにすることが重要
です。金利は営業外費用であるため、営業活動に必要な投資である販管費ではありませんので、できるだけ圧縮をすべき費用です。
尚、個人が作っているクレジットカードは、カード会社の規約上、事業用に利用することが禁じられています。
例えば、事業で、新幹線回数券を個人のクレジットカードで繰り返し購入するなどしますと、クレジットカード会社から、「カード枠の現金化」であるという疑いをもたれる危険性があります。
このような場合、クレジットカード会社から本人に調査が入り、個人のクレジットカードを事業用の旅費交通費の決済で利用していることが判明した場合、クレジットカードの利用を止められてしまう可能性がありますので、注意してください。
個人用のクレジットカードを持っていても、事業用に利用する場合、ビジネスカードを作って利用するというのが、ルールです。
以前は、会社名義のクレジットカードは作るのが難しかったのですが、現在は、AMEXやVISAなどで、社長個人の信用を基礎に、比較的簡単に、創業時でも、ゴールドカードクラスのクレジットカードを作ることができますので、作っておくと、資金が緊急に逼迫したときなどに便利です。
現在は、納税もクレジットカードで行い、リボ機能分割払い機能で、分散して支払うことができます。
3.他人資本と自己資本
以上の資金の調達は、会社の貸借対照表に負債として計上される方法です。
負債の部は、企業の資産の内訳で、他人資本ですから、負債を大きく増やしてしまうと、資産における自己資本比率が落ちてしまいます(つまり、会社の持っている財産のうち、自分のチカラで取得したものの率が落ちていってしまうということです)。
個人で言い換えますと、外側からみると不動産をたくさん持っているように見えて、実は、全部借金で買った不動産で、まだ返済がおわっていないものばかり、というイメージです。
この状態を膨らませていきますと、誰も、おカネを貸してくれなくなってしまいます。
また、負債のうち、流動負債(1年以内に返済や弁済をしなければならないものがここに含まれます)が多くなると、流動資産(現金や預金、商品など、1年以内におカネになる財産)で流動負債が賄えないと評価されるようになります。こうなると、倒産予備軍と評価されかねず、取引先からも取引を打ち切られることにもなりかねません。
そこで、資金の調達については、中小企業でも、自己資本による調達、つまり出資を受け入れることが不可欠です。
一般的な非公開会社の場合、株式の譲渡制限が定款に規定されているわけですから、自己資本は、株主から増資の形で受け入れることになります。多くの会社の場合、それは、オーナー社長が会社に資金をいれる形でしょう。
ちなみに、第三者から出資を受けて、会社を成長させる方法が、成長企業M&Aの手法です。
これは、自分の資本金では達成できない成長を、M&Aの手法で目指すもので、アメリカでは、ベンチャー企業で一般的に利用される方法です。
今後、日本でも、増えてきます。
成長起業M&Aについては、URVグローバルグループで、投資家とのご紹介から、投資を受けるまでのすべての業務の仲介をお引き受けしています。
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4.社長が会社に資金を出す場合の注意点
ここで、オーナー社長が会社に資金をいれる場合の注意点を書いておきたいと思います。
一般的に、会社に資金が足りなくなり、支払いができなくなると、社長は役員報酬を会社に戻して支払いにあてます。
役員報酬の減額は、損金計上できないことに注意
この時、注意しなければならないのは、代表取締役の役員報酬は、従業員の給与と違い、期中で減額・増額した場合、損金性が否認され、法人税が増額してしまうということです。
取締役が受け取る役員報酬には、税務上、役員報酬として扱われるものと、従業員の給与分として扱われるものがあります。
代表取締役の役員報酬は、従業員の給与分を設けることはできません。そして、税務上、役員報酬として扱われるものは、期の開始から3か月を超えた後に増減額をしても、税務上の損金計上ができません。
つまり、代表取締役には、臨時のボーナスを出したり、あるいは、役員報酬を期中で減額をした場合には、その増額分または減額後の額を超える減額前の分の、損金性が否定されます。
例えば、代表取締役が100万円の役員報酬を受けていたとします。当期がスタートした6か月めで、重要な取引先との取引が切られてしまったとします。そこで、代表取締役が、下半期の役員報酬を50万円に減額して資金を作ったとしましょう。
この場合、当期で代表取締役の役員報酬が、減額分50万円×6か月=300万円を資金として浮かせたことになります。
しかし、法人税務上は、この300万円は損金性が否定される結果、法人税・法人地方税等の税率が仮に35%とすれば、105万円を法人税で余分に課税されてしまいます。300万円を資金不足にあててしまえば、法人税の納税資金がショートしてしまうのです。
このように、代表取締役の役員報酬は、法人税法上、期中で増減額できないため、代表取締役が自分の報酬を減額して資金を作ることは、得策ではありません。
これは、重要なことなので、覚えておいてください。
代表取締役が会社に貸し付ける方法を採用してよいか?
一般的に、上記のようなことがあるため、代表取締役は、一旦、役員報酬を受領し(そうなると、社会保険や所得税・住民税は、課されます)、そのうえで、その振込金額を会社に戻す、という操作をすることになります。
ただ、この方法は、できる限り避けるべきです。
この場合、その振込金額は、会社への役員からの貸付となり、会社と役員との間で、長期賃貸借契約を締結していない限り、短期借入金として会社の流動負債となります。
これを繰りかえしてしまうと、会社にとって、最も危険な流動負債が貸借対照表の中で、増大してゆきます。そうなると、銀行からの借入がどんどんしにくくなってしまい、最終的に、完全な資金の破綻を起こしてしまう怖れがあります。
もし、万一、このような形になってしまっている場合、早めに対処をする必要があります。
早期であれば、対処法も存在しますので、もし、このような状態の場合、僕にメールでご相談ください。
以上、参考にしていただければ幸いです。
続く
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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