年収のカラクリ ~年商5億円を超えた経営者たちの、自分の年収の決め方の技~
目次
このコラムは、「事業計画作成法を伝授します①~⑧」から、内容が連続しています。そちらをまだ、お読みになっていない場合、一旦、①~⑧のコラムにお戻りいただき、そちらを読んでから、このコラムをお読みください。
採算計画は、何故、必要なのか?
経営の事業計画の中で、最もメインの部分は、採算計画です。
採算計画とは、事業における一定の将来的な期間にわたる、収益と費用の計画をたて、そこから利益計画と、利益の累積計画をたてることにより、将来の事業投資に振り向けるための資金の計画です。
この採算計画の定義の中に、採算計画が何故、事業の中で必要なのか、という問いに対する答えが含まれています。
「採算計画とは・・・将来の事業投資に振り向けるための資金の計画」という部分です。
これが、採算計画が企業の中で、必要な理由です。
おカネの利用の仕方には、消費と投資がある
そもそも企業というものは、商品・サービスを仕入れ(または製造し)、これを販売して収益をあげ、そこから販売費用や管理費用を支払った後の、利益を獲得し、この利益を再投資して、収益をあげる団体です。
会計学の基本理論に、ゴーイングコンサーンの原則というものがあります。日本語では、継続企業の原則と呼ばれます。
企業は、生命の限界があるヒトと違い、永遠の命を持つ、という前提をとる原則です。
企業が個人をこえて、大きな信用力を獲得し、投資家や債権者から資金を調達して大きな事業を遂行できるのは、企業が、コーイングコンサーンだからです。
従って、企業の経営の中で重要なことは、創業者や社長の寿命をこえて、企業が存続するということです。このようなゴーイングコンサーンであるためには、企業の事業は、成長を継続しなければなりません。そうでなければ、企業は、衰退してしまい、信用力を獲得することはできません。
さて、この継続企業であり続けるための成長を遂げるためには、利益の使い方が重要なポインになってきます。
企業が商品・サービスを販売し、利益をあげたとします。
この利益の使い方には、二つの方法があります。
一つの方法が、消費。
もうひとつの方法が、投資です。
消費とは、おカネを使用して、それが再度、収益として戻ってこない使い方を言います。
例えば、個人が、友人とお酒を呑みに行く、というおカネの使用法は、それが給与を増やす行動ではありませんから、これは、消費行動です。
一方、投資とは、(ここでいう投資というのは、経営上の意味ですから、株式投資とか、不動産投資という意味での投資という意味ではありません)、おカネを使用して、それが、収益として戻ってくることを目指して行う、おカネの使い方を言います。
同じ、お酒を呑みに行くとしても、企業の営業部長が、取引先との関係を良好にするための接待で、お酒を呑みに行く、というおカネの使用は、その取引先との関係を構築して、次の収益を獲得するための意図で行う行動ですから、これは、投資行動です。
同じ、飲食店に支払うおカネでも、おカネの使用の仕方が異なるのです。
成長する企業は、利益を消費せず、投資する
企業の中でも、成長する企業と、いつまでたっても成長しない企業があります。この違いというのは、上記のおカネの使い方の違いにあります。
例えば、個人が会社から得る給与というのは、そのほとんどが消費で使われています。個人というのは、消費者、つまり消費をする主体なのです。
一方、企業は、消費者でありません。企業の経営者が、個人が給与を使うように、会社の利益でえた、おカネを、自分の家族との外食や旅行に使っていれば、企業は成長しません。
そして、このようなおカネの使い方をしても、それは、企業が収益をえるための費用ではないため、法人税の損金に該当もしません。
このようなおカネの使い方、つまり消費ばかりをしてしまうと、企業は、次の収益をえるための投資ができず、将来的に収益が下がってしまいます。そして、そのようなことを続ければ、企業は、その固定費率があがってしまい、結果的に、利益の蓄積ができず、何か有事が起きれば、存続ができなくなってしまいます。
企業の経営を健全に継続するためには、成長が不可欠です。
成長をできない企業は、存続できません。そして、企業が成長をするためには、利益を消費せず、投資に回すことが不可欠です。
投資をいつ、何に対して、どれだけ行うべきかを知るための情報
では、投資を、いつの時点で、いくらくらい、何に対して、実施すればよいのでしょうか?
これを考えるためには、企業は、自分の事業で、いつ、どの程度の利益を生むことができるのかを予測できなければなりません。
そして、その予測の結果、生じる利益を、何の事業に、いつ投資をすべきなのかを計画をしなければなりません。
これこそが、事業計画の役割です。
そして、その要が、将来、もとの事業で、いつ、どれだけの利益を生みだすことができるのかの計画です。
これが、採算計画の役割です。
事業計画・採算計画は、企業の成長のための、道しるべ
経営者の中には、会社の経理を、経理担当者に丸投げし、財務会計と税務を、顧問の税理士さんに、丸投げをしてしまっている人がいます。
僕のような経営コンサルタントが、企業の経営顧問につかせていただき、最初に行うのが、過去の財務の確認です。その時、財務諸表を観ながら、経営者に質問をさせていただくのですが、そうすると、
「税理士先生に、全部任せているので・・・」
と、慌てる方も多くおられます。
勿論、企業の財務会計や、税務申告には、極めて専門的かつ技術的なルールが多いので、経営者が自分で、これを行う必要はありません。
しかし、では、経営者が、一切、会計にタッチしなくてよいのかというと、それは絶対に違います。
財務諸表を作成したり、税務書類を作成したりするのは、企業の外部の利害関係人(株主・債権者である銀行・税務当局など)に、報告するためです。
これに対して、企業の経営の成長のための道しるべのための会計は、財務会計とは別に、管理会計と呼ばれます。
財務会計は、会社法などの法律や企業会計原則、法人税法などのルールによって厳重に縛られています。一方、管理会計には、このようなルールがありません。経営者が、自分の経営上の道しるべとして利用できるように作成をすればよいのです。
この管理会計を、必ず経営者は自分自身で把握する必要があります。
財務諸表は、経営の道しるべとしては、使いにくい!
もちろん、財務会計の結果、作成される財務諸表も、経営の重要な指針を提供してくれます。
しかし、財務諸表には、経営上の指針として使いにくいところが、幾つかあります。
その代表的なところが、以下の2点です。
・財務諸表では、キャッシュフローの流れ(資金繰り)が把握できない
・財務諸表は、過去の会計であり、採算計画のような将来の資金の予定をたてるものではない
財務諸表は、キャッシュフローとかけ離れている
財務会計の基本ルールは、発生主義会計です。
例えば、売上を把握する時期は、入金時ではなく発生時です。
もちろん、現金会計のみの、小規模な商店であれば、売上の発生と入金は一致します。
しかし、通常、企業の取引は、掛け売りが原則です。発生の翌月末に入金がすべてなされれば、少なくとも、発生と実現の差は、1月ですが、売掛債権が長期にわたって現金化されないこともあります。
場合によっては、貸し倒れ損失を受ける可能性もあります。
それでも、売上を発生時点で把握するのが、財務会計のルールです。そして、消費税や法人税の益金計上も、入金が行われなくてもしなければなりません。
しかし、このため、経営上のお金の有り高が財務会計と一致しません。そして、入金がないのに、費用の支払いや、税金の課税が行われてしいます。
経営にとって重要な意思決定は、現金、すなわちキャッシュで判断を行わなければなりません。
従って、発生主義で把握する財務会計とは別に、キャッシュベースで把握する管理会計が必要なのです。
また、例えば、銀行などからの借入金を考えてみましょう。
借入金の返済を毎月行う場合、この返済額は、元本の返済と、利息の支払いから構成されています。元本返済が50,000円、利払いが3,000円であった場合、現金の支出は、53,000円です。
しかし、財務諸表では、この53,000円の支出の内訳は、分解されてしまいます。利息の支払いは、損益計算書の営業外費用の勘定科目で記載されます。一方、元本部分の返済は、損益計算書には現れてきません。貸借対照表の負債の部に記載されている借入金のマイナスに計上されます。
つまり、有利子の借入金を返済している企業の場合、損益計算書の税引き後利益が、会社に現金として貯まるわけではないのです。税引き後利益が、期中の有利子借入金の利払い金額の合計より少ない場合、財務諸表上では黒字決算でも、会社の流動資産は、実質的に前期末から比較して、赤字になっているのです。
キャッシュの減少がなくても、管理会計上、費用としてみておか
一方、採算計画は、キャッシュフローをそのまま立てればよいというわけではありません。
キャッシュの減少をしていなくても、税務上の損金計上が認められなくても、採算計画上は、費用としてみておかなければならない項目もあります。
その代表的な項目が、引当金です。
例えば、このコラムを読まれている方が、中小企業の経営者でいらしたとします。その貴方にお聞きしたいのですが、御社では、社員の退職給与引当金を、財務上、計上していますか?
就業規則に社員に退職金がない旨が明記され、雇用契約にも退職金がない旨が明記されている企業であれば退職金支払い義務は企業にはありませんので、社員の退職に備えた財務上の義務はありません。
しかし、就業規則として退職金規定がある場合はもちろん、社員10名未満の企業で就業規則の作成義務がなく、雇用契約も締結していない、というような会社の場合は、退職金を企業が支払う義務が発生してしまいます。
最高裁判所の判例でも、退職金は「給与の後払い」と解釈されているため、退職金がないことを、従業員と契約をすれば別ですが、そうでなければ、退職後、退職者から退職金の支払いを求められる可能性があります。
退職金は、非常に高額になりますから、下手をすれば、退職金の支払いで、企業のキャッシュがアウトしてしまう可能性すらあります。
そこで、必要になってくるのが、退職給与引当金です。引当金というには、負債の勘定科目に設定されますが、退職給与引当金のほかにも、貸倒れ引当金などもあります。
引当金は、税務上、損金計上が非常にしにくいもののため、税理士さんは、あまり、中小企業に引当金の設定を勧めません。また、税理士さんは、法務の専門家ではないので、企業の設立は、司法書士さんが実務を担当し、労務では社労士さんが実務を担当していますから、設立時の法務や、就業規則などの労務の書類を、確認しないで、税務だけを進める方が多いわけです。
そのため、退職金支払い義務がある会社でも、退職給与引当金が財務上、計上されてない企業が多いのです。
財務上では、損金不算入などの事情もあるため、引当金を計上しないことなども、やむを得ないかもしれません。しかし、だからといって、従業員の退職は、突如、やってくるわけですから、これに備えないでよいはずはありません。
そこで、財務上は計上しておらず、また、キャッシュフローでも出金がない引当金も、採算計画上は、これを費用としてみて、社内留保を考えておかないと、会社経営者としては、まずい事態となります。
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このようにみてくると、採算計画は、なかなか難しいと思われる方も多いと思います。
事実、財務会計と違い、採算計画にはルールがないだけに、その企業独自の事情や、経営者の経営戦略や経営計画を考慮して計画を立案する必要があり、また、それができるものです。
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