中小企業の補助金活用入門|返済不要でも「先にお金が入る」とは限らない、メリット・デメリット

松本尚典

松本尚典

テーマ:資金調達 補助金

目次

補助金は「返済不要」だが、借入金とはまったく違う

補助金は、「採択されたらすぐに入金される」ものではない

「採択」と「交付決定」と「補助金の入金」は別の段階

補助率2分の1・3分の2とは、「その金額が先にもらえる」という意味ではない

補助金活用では、「つなぎ資金」を先に考える

ただし、「すべての補助金が完全な後払い」とも限らない

補助金は、「次の事業のおカネ」ではなく「現在の投資負担を軽減する制度」

補助金のメリット1 原則として元本返済と利息負担がない

補助金のメリット2 自社だけでは実行しにくい成長投資に挑戦できる

補助金のメリット3 事業計画を見直す機会になる

補助金のデメリット1 採択されるとは限らない

補助金のデメリット2 採択されても、満額もらえるとは限らない

補助金のデメリット3 発注・契約・支払いの時期が厳格に管理される

補助金のデメリット4 計画変更は自由ではない

補助金のデメリット5 証拠書類と経理管理が非常に重要

補助金のデメリット6 入金後にも義務が続く場合がある

補助金のデメリット7 税務まで含めて資金計画を考える

専門家へ頼めば、補助金が必ず採択されるわけではない

補助金を使うべき会社と、慎重になるべき会社

補助金は「目的」ではなく、成長投資を支える手段

補助金を使う前に確認したい8つの質問

補助金を「返済不要の資金調達」とだけ考えない

補助金・資金調達・成長投資を一体で考えたい経営者の方へ


補助金は「返済不要」だが、借入金とはまったく違う


中小企業が新しい事業や設備投資を進めるためには、資金が必要です。

代表的な資金調達方法には、

自己資金・営業キャッシュフロー

金融機関からの借入などのデット・ファイナンス

増資などのエクイティ・ファイナンス


があります。

そして、これらとは性格の異なる公的な支援策として、

補助金

があります。

補助金は、国や地方自治体などが政策目的に沿った事業を支援するため、一定の要件を満たした事業者へ交付する資金です。

原則として、金融機関からの借入金のように、

「毎月元本を返済し、利息を払う」

必要はありません。

これは、中小企業にとって大きなメリットです。

しかし、

「返済不要」という言葉と、「自由に使えるおカネが先にもらえる」という意味は、まったく違います。

ここを間違えると、補助金を活用したことで、逆に会社の資金繰りが苦しくなることがあります。

補助金は、「採択されたらすぐに入金される」ものではない


補助金を利用するとき、経営者が最初に理解しておきたいのが、

おカネが入ってくるタイミング

です。

多くの中小企業向け補助金では、

公募



申請



審査・採択



交付申請



交付決定



補助事業の実施



発注・納品・支払い



実績報告



確定検査



補助金額の確定



請求



補助金の入金


という流れになります。

つまり、多くの場合、

設備を購入する。

システムを導入する。

広告を実施する。

店舗を改装する。

などの事業費を、まず会社自身が支払います。

その後、

事業が計画に沿って実施されたか。

補助対象経費として適切か。

証拠書類が整っているか。

などの確認を受け、

最終的な補助金額が確定してから入金されます。

補助金は、「これから使うおカネを先にもらう制度」というより、原則として「適切に行った投資の負担を後から軽減する制度」と考えた方が安全です。

「採択」と「交付決定」と「補助金の入金」は別の段階


ここは特に重要です。

補助金に採択されたからといって、

申請した金額がそのまま必ず入金される

とは限りません。

例えば、

申請時に1000万円の事業費。

補助率2分の1。

補助予定額500万円。

として採択されたとします。

しかし、その後の審査や実績報告で、

一部が補助対象外経費と判断された。

事業内容が変更された。

必要な証憑が確認できなかった。

補助対象期間外に発注・支払いをした。

という問題があれば、

最終的な補助金額が500万円より少なくなる可能性があります。

したがって、

採択
=補助金候補として選ばれた

交付決定
=一定の内容・金額について補助事業を進めることが認められた

額の確定
=実績確認後に、実際に交付される金額が決まった


という違いを理解しておく必要があります。

補助率2分の1・3分の2とは、「その金額が先にもらえる」という意味ではない


よく、

「この補助金なら、事業費の2分の1が補助されます。」

「3分の2が補助されます。」

という説明を見ます。

これは魅力的です。

しかし、

1000万円の事業なら、最初から500万円だけ用意すればよい

という意味ではありません。

例えば原則精算払いの制度であれば、

1000万円を会社が支払う。



実績報告をする。



補助対象経費が1000万円と認められる。



そのうち500万円が補助金として後から交付される。

という流れになります。

したがって、補助金を利用する前には、

補助金が入ってくるまでの資金を、どう確保するか

を考えておかなければなりません。

補助金活用では、「つなぎ資金」を先に考える


例えば、

設備投資 2000万円

補助予定額 1000万円

自己負担 1000万円

という計画を立てたとします。

この場合、

「自分は1000万円負担すればよい。」

とだけ考えるのは危険です。

補助金が精算払いであれば、

一時的には2000万円全額を支払える資金が必要になる可能性があります。

したがって、

自己資金。

金融機関からの設備資金融資。

つなぎ融資。

営業キャッシュフロー。

などを組み合わせて、

補助金入金まで資金ショートしない計画を作ります。

補助金の申請より先に作るべきものは、「補助金がもらえた場合の損益計画」だけではありません。

補助金が入金されるまで会社が耐えられる「資金繰り表」です。


ただし、「すべての補助金が完全な後払い」とも限らない


一方、

「補助金は、どんな制度でも事業終了後まで1円も入らない。」

と理解するのも正確ではありません。

補助金の支払いは、

原則として事業終了後の精算払い

となる制度が多い一方、

制度によっては一定の条件のもとで、

概算払い

など、事業終了前の支払いが認められる場合があります。

したがって、

補助金の資金計画は、一般論ではなく、その年度・その公募回の公募要領、交付規程、事務局の手引きを確認して作る

必要があります。

補助金は、「次の事業のおカネ」ではなく「現在の投資負担を軽減する制度」


補助金が後から入金されることから、

「補助金とは、次の事業のための資金調達だ。」

と説明されることがあります。

しかし、より正確には、

現在行う投資の実質的な自己負担を軽減する制度

と考える方がよいでしょう。

例えば、

1000万円を投資する。



500万円の補助金を受ける。



会社の実質負担を500万円へ軽減する。

という効果があります。

結果として、

手元資金が回復する。

次の設備投資へ使える。

新しい商品開発へ投資できる。

という次の成長余力につながります。

つまり、

補助金は、「次の事業のおカネ」そのものではありません。

現在の成長投資の負担を軽くすることで、次の投資余力を生み出す制度です。


補助金のメリット1 原則として元本返済と利息負担がない


補助金の最大のメリットです。

銀行借入であれば、

元本返済。

利息。

場合によっては保証料。

が発生します。

補助金には、通常の融資のような定期的な元本返済や金利負担がありません。

そのため、

設備投資。

DX。

省力化。

新商品開発。

新規事業。

販路開拓。

などの投資負担を軽減できます。

補助金のメリット2 自社だけでは実行しにくい成長投資に挑戦できる


例えば、

5000万円の設備投資。

1000万円のシステム投資。

大規模な新商品開発。

など、自社資金だけでは投資判断をためらう案件があります。

補助金によって一定の負担軽減が見込めれば、

投資回収期間。

ROI。

資金繰り。

が改善し、

本来必要だった成長投資へ踏み切りやすくなります。

補助金の本来の使い方は、「補助金があるから事業を始める」のではありません。

「本来やるべき投資があり、その投資と政策目的が合うので補助金を使う」です。


補助金のメリット3 事業計画を見直す機会になる


補助金申請では、多くの場合、

事業目的。

市場。

投資内容。

必要経費。

売上計画。

収益計画。

事業効果。

などを整理します。

そのため、

補助金申請をきっかけとして、

「この投資は本当に必要なのか。」

「何年で回収するのか。」

「どれだけ利益を生むのか。」

を経営者自身が見直す機会にもなります。

ただし、

採択されやすそうな事業計画を作る

ことが目的になってはいけません。

本当に実行する経営計画を作り、その中で補助制度を使います。

補助金のデメリット1 採択されるとは限らない


補助金は、

要件を満たして申請すれば、必ず交付される

とは限りません。

公募型の補助金では、

申請要件を満たしている。

ということと、

審査を経て採択される。

ということは別です。

予算。

応募件数。

審査基準。

事業計画の内容。

政策目的との整合性。

などによって採否が決まります。

したがって、

「補助金が採択されなければ、この会社の資金繰りが成立しない」という経営計画は危険です。

補助金がなくても事業を実施できるのか。

採択されなかった場合には投資規模を縮小するのか。

投資自体を見送るのか。

という代替案も持っておくべきです。

補助金のデメリット2 採択されても、満額もらえるとは限らない


採択後にも、

交付申請。

実績報告。

確定検査。

などがあります。

その過程で、

補助対象外と判断された経費

があれば、その部分には補助金が出ません。

したがって、

「補助上限1000万円」

と書いてあるから、

1000万円もらえる

という意味ではありません。

補助上限額は、「最大でもここまで」という数字であり、実際の交付額を保証する数字ではありません。

補助金のデメリット3 発注・契約・支払いの時期が厳格に管理される


補助金では、

いつから事業を開始できるのか

が非常に重要です。

多くの制度では、

交付決定前に発注した。

契約した。

支払った。

経費は、補助対象外になる場合があります。

例えば、

「採択されたから、もう設備を注文してよいだろう。」

と判断すると危険です。

補助金では、「採択日」と「事業を開始してよい日」が同じとは限りません。

必ず公募要領・交付決定通知等を確認してから発注します。

補助金のデメリット4 計画変更は自由ではない


申請・交付決定した内容と、

実際に行った事業が大きく違えば、

当然問題になります。

しかし、

「途中変更は一切認められない。」

ということでもありません。

制度によっては、

軽微な変更。

変更承認申請。

事前届出。

などの手続が設けられています。

重要なのは、

勝手に変更してから、実績報告で説明しないこと

です。

例えば、

発注先を変えたい。

設備内容を変えたい。

経費配分を変更したい。

事業スケジュールを変更したい。

場合には、

実行前に事務局へ確認し、必要であれば変更承認を受けます。

補助金のデメリット5 証拠書類と経理管理が非常に重要


補助金では、

「実際にそのおカネを使った。」

だけでは十分ではありません。

例えば制度によって、

見積書。

相見積書。

発注書。

契約書。

納品書。

検収記録。

請求書。

銀行振込記録。

帳簿。

成果物。

などを求められることがあります。

ただし、

すべての補助金で「見積・契約・納品・請求・領収書の5点セット」が必須というわけではありません。

制度ごとに必要証憑は違います。

したがって、取引先を選ぶ際にも、

「補助金に慣れている会社でなければ絶対に使えない。」

と考える必要はありません。

重要なのは、

必要な見積・契約・納品・支払証憑等を、制度のルールに沿って適切に提出できる取引先であることです。

補助金のデメリット6 入金後にも義務が続く場合がある


補助金は、

入金されたらすべて終了

とも限りません。

制度によっては、

数年間の事業化状況報告。

賃上げ要件。

取得財産の管理。

財産処分の制限。

事業成果の報告。

などが求められる場合があります。

条件に違反した場合や、

虚偽の申請。

不正受給。

報告義務違反。

などがあれば、

交付決定の取消しや補助金返還を求められる場合があります。

「返済不要」とは、「何があっても返さなくてよい」という意味ではありません。

交付条件を守って適切に事業を実施したことを前提とした返済不要です。


補助金のデメリット7 税務まで含めて資金計画を考える


補助金を受け取った場合には、

会計・法人税上の処理

も確認する必要があります。

補助金だから、

税金とは無関係

ということではありません。

補助金の内容や交付目的によって税務処理が変わり、

固定資産取得に充てる一定の国庫補助金等については、要件を満たす場合に圧縮記帳が検討できるケースもあります。

したがって、

「補助金が500万円入るから、その500万円を全部次の投資へ使える」と単純に考えず、税務まで含めた資金計画を作る

ことが重要です。

専門家へ頼めば、補助金が必ず採択されるわけではない


補助金申請には、

行政書士。

中小企業診断士。

税理士。

公認会計士。

金融機関。

経営コンサルタント。

認定経営革新等支援機関。

など、さまざまな支援者が関わる場合があります。

しかし、

専門家に依頼したから採択される

という制度ではありません。

また、支援報酬が業界で一律に決まっているわけでもありません。

重要なのは、

制度に詳しいか

だけではありません。

御社の事業を理解しているか

投資自体が合理的か判断できるか

採択後の実績報告まで考えているか

資金繰りまで確認しているか

申請内容を経営者自身にも説明しているか


です。

特に電子申請では、制度によって申請事業者自身による確認・申請を求めるものがあります。

補助金申請の主役は、申請書を書く専門家ではありません。

その投資を実際に行い、その結果に責任を負う経営者です。


補助金を使うべき会社と、慎重になるべき会社


補助金との相性がよいのは、

もともと実施する合理性のある投資がある

補助金がなくても一定の自己負担ができる

補助金入金までの資金繰りを確保できる

申請した計画を現実に実行できる

証憑・経理を適切に管理できる

投資後に売上・利益・生産性向上が見込める


会社です。

反対に、

「補助金がなければ支払いができない。」

「採択されることを前提に大型契約をしたい。」

「とにかく使える補助金を探して、その後で事業を考えたい。」

という状態であれば、慎重になるべきです。

補助金は「目的」ではなく、成長投資を支える手段


補助金の公募が始まると、

「何か使える補助金はありませんか?」

と探し始める経営者もいます。

しかし、順番は逆です。

まず、

3年後にどのような会社をつくりたいのか。

そのためにどのような投資が必要なのか。

いくら必要なのか。

その投資から、どれだけ利益・キャッシュが生まれるのか。

を考えます。

そのうえで、

自己資金。

金融機関借入。

エクイティ。

補助金。

などを組み合わせます。

よい補助金活用とは、「補助金に事業を合わせること」ではありません。

会社の成長戦略に合う補助制度を探し、投資負担を軽減することです。


補助金を使う前に確認したい8つの質問


1.補助金がなくても、本当に実施すべき投資か

2.採択されなかった場合の代替案はあるか

3.補助金が入金されるまでの資金を確保できるか

4.交付決定前に発注してはいけない経費を確認したか

5.どこまでが補助対象経費なのか

6.事業途中で変更が必要になった場合の手続きを確認したか

7.実績報告に必要な証憑を管理できるか

8.補助金入金後の報告・財産管理・税務まで確認したか


この8つを確認してから、

申請するかどうか

を判断することをおすすめします。

補助金を「返済不要の資金調達」とだけ考えない


補助金には、大きなメリットがあります。

借入金のような定期的な元本返済がない。

成長投資の負担を減らせる。

思い切った設備投資や新規事業へ挑戦しやすくなる。

一方で、

採択されるとは限らない。

入金まで資金が必要。

対象経費が限定される。

事務管理が必要。

事後報告義務がある場合がある。

という制約があります。

だからこそ、

補助金だけを資金調達戦略にするのではなく、自己資金・銀行借入・エクイティ・補助金を組み合わせる

ことが重要です。

補助金は、

会社を救ってくれるおカネ

ではありません。

補助金とは、成長する意思と投資能力を持つ会社が、政策目的と合致する投資を実行するとき、その負担を公的に軽減する仕組みです。

補助金・資金調達・成長投資を一体で考えたい経営者の方へ


「設備投資に補助金を使えるか知りたい」

「補助金が入るまでの資金繰りをどう組めばよいか分からない」

「補助金と銀行融資を組み合わせたい」

「新規事業に使える補助制度があるか確認したい」

「採択されることより、投資そのものが経営的に正しいか判断したい」

こうした課題では、

補助金申請だけを見るのではなく、

事業計画。

投資回収。

キャッシュフロー。

銀行借入。

資本政策。

補助制度。

を一体として検討することが重要です。

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