年商1億円の壁を超える中小企業の経営者は、まず価格の基本を知ろう
先のコラムでは、マーケティングミックス 4P戦略の、価格戦略について発信し、ミクロ経済学が教える価格のメカニズムについて話をしました。
今回のコラムは、その価格のメカニズムの知識を、御社のマーケティングに適用させるという、発展編の話です。
したがって、以下のコラムを読んでいない方は、下記のページに一旦いっていただき、価格のメカニズムの知識をいれてから、今回のコラムを読んでください。
今回のコラムは、経済学の用語ができきますから、予備知識がないと、専門用語で、ちんぷんかんぷんになってしまいます。
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/column/5074080/
御社の製品の需要は、「弾力的」か?
企業が、マーケティングミックスの価格戦略を立案する場合、絶対に欠かせない知見があります。それは、自社の製品に対する需要が、どの程度弾力的であるか、という視点です。
需要の価格弾力性は、決して、時間軸の中で一律ではありません。
短期的な需要は、より価格が非弾力的であり、長期的な需要は、より弾力的になります。
しかし、このような時間軸の観点を除いても、やはり製品によって価格弾力性はかわります。
・競合がより激しい市場で販売される製品は、価格弾力性が高いのが一般的です。
・代替品が豊富にある製品もまた、価格弾力性が高くなります。
・日常的な買い回り品は、専門的な商品よりも価格弾力性は高くなります。
・特定の用途に特化している製品や、ニッチなマーケットをターゲットにしている製品は、価格が非弾力的です。
まずは、御社の製品に対する需要が、どの程度、弾力的であるか、という知見を、社長は持たなければなりません。
そのうえで、御社の価格戦略を、需要の弾力性別の観点から、以下、書いて参りたいと思います。
弾力性による、売上公式を使った、マーケティング戦略のパターン
売上=製品単価 × 販売数
これは、当然ながら、企業の経営者が誰でも、販売戦略を考えるとき、念頭に置く売上公式です。
さて、御社の製品が、需要における価格弾力性が低いとしましょう。
この場合、社長が、売上高をアップさせるには、端的に短期勝負で、価格を値上げする戦術が、売上を向上させます。価格弾力性というのは、結局のところ、上記の売上公式でいえば、製品単価をあげても、販売数が下落しにくいということを意味します。
したがって、価格を値上げしても、その分の販売数が反比例して下落する率が低いのです。そうなると、値上げが、売上高を押し上げてくれます。
但し、先に書いたように、需要の弾力性は、短期よりも長期では弾力性が向上するという性格があります。従って、仮に需要の価格弾力性が低い製品でも、長期勝負で値上げを継続すれば、販売数量は下落を始めます。
したがって、値上げによる売上高向上を狙う戦略は、原則として、短期決戦型の戦略です。
値上げをして、売上があがり、いい気になっていると、気づかぬうちに、販売数量が下落し、売上減少の憂き目にあいます。
従って、需要の価格弾力性が低い製品の値上げは、引き際を必ずどこかで決めることが肝要です。短期的に出た売上の上昇による利益を再投資し、値下げ後の次の戦略の元手にするのが、賢い社長の戦略です。
一方、御社の製品が、需要における価格弾力性が高いとしましょう。
この場合、価格の安易な値上げは、禁物です。
価格の値上げをすれば、需要は一気に反応し、販売数量がみるみるうちに低下してしまいます。従って、安易な値上げは慎まなければなりません。
しかし、価格弾力性が高いということは、反対に、販売価格の値下げに対する販売数量の増加もしやすいことを意味します。
したがって、長期的なディスカウント戦術をとることで、販売数量の増加を図らなければなりません。
販売価格を下げ、販売数量をあげるのですから、売上は非常にアップしにくいのが、価格弾力性の高い製品の特長です。
したがって、この場合、経営者は売上のアップよりも、まず原価の圧縮をすることで、ディスカウントに耐えられるようにし、その分でディスカウントを行って、利益率を維持しつつ、販売数量の増加を狙うべきなのです。そうすれば、売上高はあがらなくても、粗利益はアップさせることができます。
製品の需要の価格弾力性の違いは、企業の売上・利益戦略を変える
以上を纏めると、次にようにいえます。
・需要の価格弾力性が低い製品の価格戦略
短期的に価格をひきあげ、売上高の向上を図って利益を獲得し、その利益を再投資して長期的な価格の引き下げによってもたらされる売上減少に備える戦略を採用する
・需要の価格弾力性が高い製品の価格戦略
長期視点にたって、製品原価コストの見直しを行って、製品ごとの原価率をさげ、その原価率の合理化による余剰を再投資して、価格の引き下げを行い、利益率を維持しながら、販売数量の増大を図って、利益を増大させる戦略を採用する
以上、今回は、少し難しい内容のコラムになりました。
具体的に、自分の会社の製品の価格弾力性を検証したい、あるいは、価格戦略について相談したいという方は、遠慮なく、僕のページの問い合わせメール、またはLINEワークスから、ご連絡ください。
続く
[囲み装飾]松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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