風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない
この記事は、2026年4月1日に施行された改正民法(離婚原因の規定の整理、離婚後の共同親権の導入)を踏まえて記載しています。個別の事情によって結論は異なりますので、具体的な判断は専門家にご確認ください。
風俗店とのトラブルが家族に知られたことをきっかけに、妻から「離婚したい」と告げられるご相談は少なくありません。店からの請求や警察の動きへの不安に加えて家庭の問題まで重なると、何から考えればよいのか分からなくなる方も多いと思います。
ただ、妻から離婚を求められたことと、実際に離婚が成立することとは別の問題です。また、店とのトラブルと夫婦の問題は、互いに関係していても進め方が異なります。この記事では、風俗トラブルを理由に妻から離婚を求められた場面について、法律上どのように考えられているのか、話し合いの前に整理しておきたいことは何かを解説します。
妻から離婚を求められても、すぐに離婚が決まるわけではありません
離婚の方法は、大きく分けて協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つです。協議離婚は夫婦双方の合意と離婚届の提出によって成立するため、夫が同意しなければ成立しません。
夫婦の話し合いでまとまらない場合、妻は家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。離婚については、原則として訴訟の前に調停を経る仕組み(調停前置)がとられています。調停も話し合いの手続であり、合意に至らなければ調停は不成立となります。そのうえで妻が離婚訴訟を起こし、裁判所が法律上の離婚原因があると認めた場合に、判決によって離婚が成立します。
| 方法 | 離婚が成立する条件 | 夫が同意しない場合 |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 夫婦の合意と離婚届の提出 | 成立しない |
| 調停離婚 | 調停の場での合意 | 調停は不成立となる |
| 裁判離婚 | 法律上の離婚原因が認められること | 判決で離婚が認められることがある |
したがって、離婚に応じるかどうかを、その場で決める必要はありません。一方で、裁判に進んだ場合にどのように評価されるかは、夫婦の話し合いの見通しにも影響します。次に、風俗の利用が法律上どう扱われるのかを見ていきます。
風俗の利用は法律上の「不貞行為」にあたるのか
裁判で離婚が認められる場合は、民法770条1項に定められています。2026年4月1日施行の改正後は、不貞な行為(1号)、悪意の遺棄(2号)、3年以上の生死不明(3号)、その他婚姻を継続し難い重大な事由(4号)の4つです。改正前にあった「回復の見込みのない強度の精神病」は削除されました。
性的な関係があれば、原則として不貞にあたるとする見方
不貞行為とは、配偶者のある人が自由な意思に基づいて配偶者以外の人と性的関係を結ぶことをいうとされています(最高裁昭和48年11月15日判決)。風俗店での利用であっても、性交渉を伴う場合には原則として不貞行為にあたると解説されることが多くあります。これに対し、性交渉を伴わないサービスにとどまる場合には、不貞行為そのものにはあたらないとする見解もあります。
裁判例では判断が分かれている
風俗の利用をめぐる裁判例には、次のようなものがあります。
- 約4〜5年にわたってソープランドに通っていた事案で、不貞行為にあたり、婚姻関係を破綻させる重大なものと判断した裁判例があります(東京地裁平成15年9月11日判決)。
- デリバリーヘルスの利用が1回で、発覚当初から妻に謝罪し、今後利用しないと約束していた事案で、離婚事由にあたるほどの不貞行為があったとは評価できないとした裁判例があります(東京地裁平成31年3月27日判決)。
- ピンクサロンを1回利用した事案で、サービスの内容を認めるに足りる証拠がないとして、不貞行為を認めなかった裁判例があります(東京地裁令和3年11月29日判決)。
いずれも地方裁判所の判断であり、どの事案にもそのまま当てはまるものではありません。ただ、利用の回数や期間、サービスの内容、発覚した後の対応、そして証拠の有無によって評価が変わりうることは読み取れます。
不貞にあたらなくても「婚姻を継続し難い重大な事由」が問題になることがある
不貞行為と認められない場合でも、それまでの経緯全体から「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかが検討されることがあります。たとえば、利用を繰り返していた、過去の約束を守らなかった、事実と異なる説明を重ねていた、家計から多額の支出をしていた、といった事情です。
弁護士ドットコムの法律相談にも、以前にも妻に知られて「次は離婚」と言われていたのに再び利用し、正式に離婚を求められたという相談が寄せられています。約束を繰り返し破った経緯があると、夫婦関係の評価では不利に働きやすい点には注意が必要です。
風俗トラブルならではの事情が夫婦の話し合いに影響します
単に風俗の利用が妻に知られた場合と違い、店とのトラブルが絡む場合には、次のような事情が重なりやすくなります。
- 店から「本番行為があった」と主張され、事実関係が定まらないまま妻に伝わっていることがあります。
- 店と交わした示談書や念書に、行為を認める文言が含まれていることがあります。
- 示談金を夫婦の預貯金や家計から支払っていることがあります。
- 警察から連絡が来た、逮捕された、報道されたなど、家族の生活に直接の影響が出ていることがあります。
特に注意したいのは1つ目です。店の言い分は、あくまで相手方の主張にすぎません。しかし、妻の立場からは、店から伝えられた内容がそのまま事実のように見えることもあります。夫婦の話し合いの場で、事実と異なる点まで含めて「全部認める」と言ったり、逆に事実があるのに「何もしていない」と言い切ったりすると、店との交渉や刑事手続での説明と食い違うおそれがあります。
また、店と交わした示談書の記載は、夫婦間の裁判で証拠として扱われる可能性もあります。配偶者に知られた場合の民事上の責任については、配偶者に発覚した場合の民事責任|風俗利用は不貞になるのかもあわせてご覧ください。
離婚を求められたときに、まず整理しておきたいこと
店との問題と夫婦の問題を分けて考える
店との交渉では、短い期限を示されて判断を急がされることがよくあります。一方、夫婦の話し合いは、お互いの気持ちが落ち着くまで時間をかけて進めるべき性質のものです。この2つを同時に、同じ速さで進めようとすると、どちらの判断も誤りやすくなります。考え方の整理については、【風俗トラブル】家族に知られた後の話し合い|夫婦の問題と店との問題を分けるで詳しく解説しています。
妻が店に直接連絡しないよう話し合う
事情を知った妻が、怒りや不安から店に直接連絡してしまうことがあります。そうなると、交渉の窓口が増えて話が複雑になるほか、妻の連絡先などが店に伝わるおそれもあります。すでに連絡してしまった場合の対応は、【風俗トラブル】配偶者が店に直接連絡してしまった|交渉の窓口を整え直すをご参照ください。
離婚届や念書にその場で署名しない
感情が高ぶった話し合いの中で、離婚届への署名や、「離婚に応じる」「慰謝料として○万円を支払う」といった念書を求められることがあります。一度署名した書面は、後から撤回したり効力を争ったりすることが難しくなる場合があります。内容を確かめ、必要であれば専門家に相談してから判断することをおすすめします。
自分の意思と異なる離婚届が提出されることが心配な場合には、市区町村の役所に離婚届の不受理申出(戸籍法27条の2)をしておく方法もあります。念書が後でどのように扱われるかについては、【不貞慰謝料】本人が書いた念書・謝罪文の証拠価値も参考になります。
説明の内容と時期を考える
妻に対して誠実に向き合うことは、関係を修復するうえでも、離婚の条件を話し合ううえでも欠かせません。事実と異なる説明は、後で発覚したときに信頼を大きく損なうため避けるべきです。そのうえで、店がまだ一方的に主張しているだけの内容まで、確定した事実のように伝える必要はありません。刑事手続が進んでいる場合には、何をどこまで話すかを弁護人と相談しておくと安心です。
離婚する場合に問題になるお金と子どものこと
慰謝料
不貞行為など離婚の原因となる行為が認められると、妻から離婚に伴う慰謝料を求められることがあります。もっとも、風俗の利用を理由とする場合、慰謝料額は一般的な不貞行為の場合に比べて低めになる傾向があると指摘されています。実際の金額は、婚姻期間や子の有無、利用の回数や期間、発覚後の対応などによって変わります。慰謝料の種類の違いについては、不貞慰謝料と離婚慰謝料はどう違うのか|請求先と時効が変わるで解説しています。
財産分与と養育費
財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分けるものです。離婚の原因をつくった側であっても、原則として財産分与を求めることはできます。ただし、夫婦の預貯金から店への示談金を支払っていた場合には、その支出の扱いが争点になることがあります。養育費は子の生活のためのものであり、どちらに離婚の責任があるかとは切り離して考えるのが基本です。
親権
2026年4月1日施行の改正民法により、離婚後も父母の双方を親権者とする共同親権を選べるようになりました。父母の協議で決まらない場合には、家庭裁判所が子の利益を中心に判断します。風俗の利用があったことだけで、直ちに親権者としてふさわしくないとされるわけではありません。これまでの養育への関わりや、子への影響などが総合的に考慮されます。
関係の修復を望む場合に気をつけたいこと
離婚ではなく夫婦関係の修復を望む場合でも、妻の気持ちが整理されるまでには時間がかかることが一般的です。答えを急がせるような働きかけは、かえって関係をこじらせるおそれがあります。
修復に向けて「今後利用しない」「約束を破った場合は○万円を支払う」といった誓約書を作ることもあります。誓約書を作ること自体に問題はありませんが、違約金を高額に定めた場合には、後に金額の妥当性が争われることもあります。弁護士ドットコムにも、公正証書で違約金を定めた後に再び風俗の利用が知られた場合の支払いについての相談が寄せられています。守れる内容か、金額は現実的かを確かめてから作ることが大切です。
なお、離婚の原因をつくった側(有責配偶者)から離婚を求める場合には、別居期間の長さや未成熟の子の有無などを踏まえて、離婚が認められる場面が限られるとされています(最高裁昭和62年9月2日判決)。将来、立場が入れ替わる可能性も含めて、慎重に考えておく必要があります。
よくあるご質問
店の言い分だけで、不貞行為があったと認められてしまいますか?
裁判で不貞行為を主張する側は、その事実を証拠によって示す必要があります。風俗店のカードやチラシを持っていたというだけでは、不貞行為の立証として足りないとされることが多いようです。ただし、店と交わした示談書や念書、本人が送ったメッセージなどに行為を認める記載があると、重視されやすくなります。
妻が店の女性に慰謝料を請求すると言っています
風俗店の従業員と客という関係を超えていない場合には、妻から従業員への慰謝料請求を認めなかった裁判例があります(東京地裁令和3年1月8日判決)。一般に、この種の請求は認められにくいと考えられています。また、妻が店側に連絡をとることで、店とのトラブルがかえって複雑になるおそれもあるため、慎重に話し合うことをおすすめします。
店との示談がまとまれば、妻との関係にも影響しますか?
店との示談は、店や女性との間の問題を解決するものであり、夫婦の問題を直接解決するものではありません。ただ、店からの請求や刑事手続への不安が落ち着き、生活への影響がおさまることは、夫婦が冷静に話し合うための前提になります。家族への影響をできるだけ抑えながら店との問題を進める方法については、家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説もご覧ください。
ひとりで抱え込まずにご相談ください
風俗トラブルを理由に妻から離婚を求められると、店との交渉と夫婦の話し合いを同時に抱えることになり、どちらにも落ち着いて向き合いにくくなります。当事務所では、店との交渉の窓口を弁護士が担い、事実関係と書面を整理したうえで、夫婦の話し合いにどう臨むかを一緒に考えています。順序を整えるだけでも、選べる手立ては変わってきます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


