なぜ特徴のないスーパーは衰退するのか | 同質化から抜け出し、選ばれる店になるためのポジショニング戦略
いい商品なのに売れない原因は、商品力不足ではなく価値の伝え方にあります。
スーパーマーケットが価格競争に頼らず売上と粗利益を伸ばすためには、
ターゲット設定、
POP、
関連販売、
売場導線
などマーケティング視点で「買う理由」を設計することが重要です。
目次
スーパーマーケットの現場で、経営者や店長、バイヤーからよく聞く悩みがあります。
「いい商品なのに売れない」
「品質には自信があるのに、思ったほど動かない」
「お客さまが本当に欲しがっているものが分からない」
「価格を下げないと売れないように感じる」
しかし、売れない原因は、必ずしも商品力の不足ではありません。
多くの場合、問題は、
商品の価値がお客さまに正しく伝わっていないこと
にあります。
つまり、必要なのは単なる値下げではなく、
マーケティングの視点で“売れる理由”を設計すること
です。
いい商品が売れない最大の原因は「価値の翻訳不足」
スーパーマーケットでは、毎日多くの商品が売場に並びます。
青果、鮮魚、精肉、惣菜、日配、加工食品、菓子。
どの部門にも、品質の良い商品、こだわりの商品、利益を残したい商品があります。
しかし、
いくら商品が良くても、お客さまがその価値に気づかなければ、購買にはつながりません。
たとえば、
糖度の高いトマトを仕入れても、
ただ平台に並べるだけでは、普通のトマトとの違いは伝わりません。
脂ののった魚を仕入れても、
食べ方や美味しさの理由が伝わらなければ、お客さまは価格だけで判断します。
店内手作りの惣菜も、
「手作り」
「出来立て」
「夕食に便利」
「家族で分けやすい」
といった価値が伝わらなければ、単なる惣菜の一品として埋もれてしまいます。
ここで必要なのが、
商品の価値を、お客さまの生活メリットに翻訳する力
です。
これが、スーパーマーケットにおけるマーケティングの基本です。
売場は「商品を置く場所」ではなく「購買心理を動かす場所」
売場づくりを考えるとき、多くの店舗では、まず商品配置や陳列量を考えます。
もちろん、陳列技術は重要です。
しかし、それだけでは売れる売場にはなりません。
売場とは、単に商品を並べる場所ではなく、
お客さまの購買心理を動かすコミュニケーションの場
です。
お客さまは、売場で次のような判断を瞬間的に行っています。
「これは美味しそうか」
「今日の夕食に使えるか」
「家族が喜びそうか」
「価格に見合う価値があるか」
「今買う理由があるか」
「他の商品と一緒に買うと便利か」
この判断を後押しするのが、
POP、陳列、演出、量感、関連販売、試食、売場の導線です。
つまり、売場改善とは、
お客さまの意思決定を設計する仕事
なのです。
マーケティングで重要なのは「売れる要素」を分解すること
成功している売場や商品には、必ず売れている理由があります。
しかし、その理由を表面的に見てしまうと、真似しても成果は出ません。
たとえば、ある店舗でアボカドがよく売れていたとします。
表面的に見れば、
「アボカドを山積みしているから売れている」
ように見えるかもしれません。
しかし、実際には、次のような複数のマーケティング要素が働いている可能性があります。
✓健康志向のお客さまに響く訴求になっている
✓トマトやチーズ、生ハムとの関連販売ができている
✓「サラダにのせるだけ」という簡単な食べ方が提案されている
✓熟度別に分けて、今日食べる用途と数日後に食べる用途を示している
✓POPで「栄養」「時短」「おしゃれな食卓」を伝えている
✓売場の入口近くで、視認性の高い場所に配置している
このように、売れている現象を分解すると、そこには必ず、
・ターゲット、
・ベネフィット、
・用途提案、
・視認性、
・購買導線、
・関連購買
といったマーケティングの要素があります。
重要なのは、売場の形を真似ることではありません。
『売れている構造』を読み解くことです。
成功事例は「コピー」ではなく「再設計」して使う
マーケティングの世界では、成功事例から学ぶことは非常に重要です。
ただし、成功事例をそのまま真似るだけでは不十分です。
なぜなら、
店舗によって、商圏、客層、競合環境、売場面積、従業員数、価格帯、来店動機が異なるからです。
大切なのは、成功事例をそのままコピーすることではなく、
自店の条件に合わせて再設計すること
です。
たとえば、
他店で「高糖度トマト」が売れていたとしても、自店で同じ商品を同じように並べれば売れるとは限りません。
自店の客層が高齢者中心であれば、
「甘くて食べやすい」
「少量パック」
「朝食やサラダに便利」
という切り口が有効かもしれません。
40代主婦が多い店であれば、
「子どもが食べやすい」
「夕食の一品に使える」
「時短サラダ」
という訴求が有効です。
若いファミリー層が多い店であれば、
「映える食卓」
「チーズやアボカドとの組み合わせ」
「週末のホームパーティー」
といった提案が有効になることもあります。
同じ商品でも、誰に、何を、どう伝えるかで売れ方は変わります。
これがマーケティングにおける、
ターゲティングとポジショニングの考え方
です。
「商品特徴」ではなく「お客さまの得」を伝える
売場でよく見かけるPOPに、次のようなものがあります。
「産地直送」
「新鮮」
「おすすめ」
「お買い得」
「本日限り」
もちろん、これらの言葉が悪いわけではありません。
しかし、
これだけでは、お客さまにとっての具体的なメリットが弱い場合があります。
マーケティングで重要なのは、商品特徴ではなく、
お客さまが得られるベネフィット
を伝えることです。
たとえば、
次のように変えるだけで、伝わり方は大きく変わります。
「新鮮なレタス」ではなく、
「シャキシャキ食感で、朝食サラダがすぐ完成」
「脂ののった鮭」ではなく、
「焼くだけで、ご飯が進む夕食の主役に」
「店内手作りコロッケ」ではなく、
「忙しい日の夕食に、温めるだけで一品追加」
「旬のいちご」ではなく、
「今だけの甘さ。家族で楽しむ春のデザート」
このように、
商品特徴を生活場面に置き換えることで、お客さまは買う理由を理解しやすくなります。
売場で求められるのは、
商品説明ではなく、『購買動機づくり』
です。
売れる売場には「AIDMA」や「AISAS」の流れがある
マーケティングには、お客さまが商品を認知して購入するまでの心理プロセスを表す考え方があります。
代表的なものに、AIDMAやAISASがあります。
AIDMAは、
Attention:注意
Interest :興味
Desire :欲求
Memory :記憶
Action :行動
という流れです。
スーパーマーケットの売場に置き換えると、次のようになります。
まず、
売場の色、量感、POP、平台展開で足を止めてもらう。
次に、
商品の美味しさ、便利さ、旬、健康価値に興味を持ってもらう。
さらに、
食卓シーンや家族の喜ぶ場面を想像してもらう。
そして、
「今日買っておこう」と思ってもらう。
最後に、
手に取って買い物かごに入れてもらう。
つまり、売場には、
✓注意を引く仕掛け
✓興味を高める情報
✓欲しいと思わせる提案
✓行動を促す理由
が必要です。
これが整っていない売場は、商品が良くても売れにくくなります。
粗利益を残すには「価格訴求」だけに頼らない
スーパーマーケット経営で最も危険なのは、売れない理由をすべて価格に求めることです。
「安くすれば売れる」
これは確かに一面では正しいです。
しかし、
安さだけで売ると、粗利益率は低下します。
粗利益率が下がれば、
人件費、物流費、光熱費の上昇を吸収できません。
結果として、売上はあっても営業利益が残らない経営になります。
これからの中小スーパーマーケットに必要なのは、
価格で売る力だけでなく、価値で売る力
です。
価値で売るためには、次のような工夫が必要です。
・重点商品の選定。
・売場での見せ方。
・関連購買の設計。
・POPによる用途提案。
・試食や実演による体験価値。
・旬や限定感の演出。
・買上点数を増やすクロスMD。
・粗利益率を意識した販売計画。
こうした取り組みは、単なる販促ではありません。
営業利益を改善するための、
マーケティング戦略そのものです。
他業種の成功事例から学ぶ視点
スーパーマーケットの売場改善は、同業他社だけを見るよりも、他業種から学ぶことで大きく広がります。
・飲食店は、食欲を刺激する見せ方が上手です。
・アパレル店は、選ぶ楽しさを演出するのが上手です。
・雑貨店は、ついで買いを生み出す導線設計が上手です。
・観光地の土産店は、限定感と今買う理由づくりが上手です。
・通販サイトは、比較、レビュー、ランキング、セット提案が上手です。
これらの技術は、スーパーマーケットにも応用できます。
たとえば、
通販サイトのランキング表示は、
売場での
「今週の人気商品」
「店長おすすめベスト3」
として活用できます。
飲食店のメニュー表現は、
惣菜売場のPOPに活用できます。
雑貨店の関連陳列は、
青果とドレッシング、精肉と焼肉のたれ、鮮魚と薬味、惣菜と即席味噌汁のクロスMDに応用できます。
つまり、成功事例を見るときには、
何が売れているかではなく、なぜ人が動いたのか
を見ることが重要です。
スーパーマーケットに必要なマーケティング視点
これからのスーパーマーケット経営では、現場の努力だけでは成果が出にくくなっています。
人手不足。
賃金上昇。
競争激化。
値上げによる消費者の節約志向。
ドラッグストア、ディスカウント店、ネット販売との競合。
このような環境では、勘と経験だけに頼る売場づくりでは限界があります。
必要なのは、次のようなマーケティング視点です。
①誰に売るのか
ターゲット顧客を明確にする。
②何を訴求するのか
価格、品質、時短、健康、旬、楽しさなど、価値の軸を決める。
③どこで売るのか
入口、主通路、エンド、平台、定番棚など、購買導線を設計する。
④どう見せるのか
色、量感、POP、写真、陳列、関連販売で視認性を高める。
⑤どう利益を残すのか
売上だけでなく、粗利益率、ロス率、在庫回転、作業工数を管理する。
この5つを整理することで、売場は単なる陳列場所から、利益を生む仕組みに変わります。
まとめ:売れる店は「商品」ではなく「買う理由」を設計している
「いい商く「買う理由」を設計している品なのに売れない」
この悩みを解決するために必要なのは、商品の見直しだけではありません。
本当に見直すべきなのは、
お客さまに買う理由を伝えられているか
という点です。
売れる店は、売れる理由を偶然に任せていません。
①ターゲットを決め、
②ベネフィットを整理し、
③売場導線を設計し、
④POPで価値を伝え、
⑤関連販売で買上点数を増やし、
粗利益が残る販売を組み立てています。
つまり、売れる売場には、マーケティングの技術があります。
商品を変えなくても、売り方を変えれば売れ方は変わります。
売場を変えれば、お客さまの反応は変わります。
伝え方を変えれば、価格以外の価値で選ばれる店になります。
スーパーマーケットの利益改善は、
商品を並べる発想から、購買行動を設計する発想へ変えること
から始まります。
(文:新谷千里)
スーパーマーケットの販促・インストアMD・粗利益改善のご相談
私はこれまで、全国の中小スーパーマーケットに対し、
•営業利益改善
•生産性向上
•インストアMD改革
•チラシ改善
•売場改善
•粗利益改善
•店舗オペレーション改革
を支援してきました。
「価格競争から抜け出したい」
「粗利益率を改善したい」
「売場と販促を連動させたい」
そして、
その具体策を知りたいという経営者・幹部・バイヤーの方は、
お気軽にご相談ください。
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