秀光ビルドの家に調査に入りました
単身者世帯は20年前に比べ倍増している
現在日本では、戸建て住宅の空き家化が社会問題となっています。人口が減少しているのに新しい住宅がどんどんできるから空き家が出来るのは当たり前です。しかし、人口は減って来ているのに、実は世帯数は増えているのです。
これは不思議でも何でもありません。単身者世帯が増えているのです。単身者世帯でよく頭に浮かぶのは、伴侶を無くした高齢者をイメージしがちですが、単身者世帯はそれだけに留まりません。若者中高年を問わず増えているのです。
単身者にとって、戸建て住宅は広すぎます。使いもしない部屋が多すぎるのです。広いだけなら「大は小を兼ねる」で良いのですが、家の場合はメンテナンスを伴います。また、不必要に広い空間は心理的に寂しさを増幅させます。
過去20年間の間に、単身者世帯は倍増しました。単身者の受け入れ先は殆どがワンルーム賃貸マンションです。一時的なブームで終わるかと思われたワンルームマンションですが、社会の需要に支えられて減る事がありません。しかし、単身者に向いた居住空間はワンルームマンションしか無いのも事実です。
戸建て住宅は何故ファミリー向けなのか
新築物件のチラシを見ていますと、間違いなしにファミリータイプです。何年か前に比べて価格が下がっています。しかも質の低下は法律の規制もあって高水準を保っています。つまり、土地の仕入れ値を抑えるか、利益を薄くするかしか生き残りの道はないのです。
殆どのところの建売業者は、新築物件の利益率は10%前後です。建売住宅を10件建てて、9件思い通りに売れても、最後の一件が売れ残れば赤字になる事を意味します。バブルの頃なら、土地は寝かせておけば、勝手に値上がりしましたが、今は寝かせておくと値下がりしてしまいます。値下がりの原因は、自分達が土地の仕入れを買い叩く為と云う、自己矛盾を孕んだまま、買い手が少なくなったファミリー層向けの住宅を必死になって作っているのです。
進まない法整備
社会情勢が単身者世帯が増えているのに、法整備は進んでいません。法律と云うのは規制する法律は社会圧力が加わりますので直ぐに出来ますが、規制緩和は中々進みません。出来てしまった法律は基本的には無くならないのが一般的です。
住宅についてどの様な規制があるのかと云いますと、バブル以前から、高度成長期の弊害として、野放図に乱開発された住宅地を政治主導で計画的に発展させようと云う目論みで、大都市周辺の衛星都市には、開発指導要綱と云う物があります。
開発指導要綱の中で、都市の過密化を防ぐ為に、最適敷地面積を定めているのです。大阪府下の場合、殆どの場所で70㎡以上の敷地が求められています。単身者にとって70㎡の土地は広すぎるのです。建物を小さくして庭を広く取れば良いですが、敷地条件の良い場所では、土地値が高すぎて不経済です。使いもしない庭が広ければ忙しい単身者にとって、手入れする時間が無駄だとなるのです。
単身者が生活するのに丁度良い敷地の広さは40㎡前後です。
しかし、現行開発指導要綱が存在する限り、40㎡の宅地分譲は行われる事はありません。
単身者用戸建て住宅が何故必要か
前述しました通り、単身者の居住空間に対する選択肢は、ワンルームマンションしかありません。一生ワンルームマンションで暮らす事が出来るでしょうか。定年退職し、年金しか入らなくなった時点で、家賃の支払いは重荷にはならないのでしょうか。
老後のために資産(主に不動産)を蓄えると云う選択肢が必要になると考えます。例え小さくてもローンを完済すれば、年金を家賃で圧迫される心配はありません。いざとなれば、土地を売却して現金化し、介護施設に移り住む事も可能です。
単身者はどこに住めば良い?
法律が現状のままでは新築の単身者戸建て住宅は望めません。開発指導要綱が制定される前に開発された土地に目を向けるしかありません。幸いそう言った物件は駅近の、インフラの整った場所に多く存在しています。町のドーナツ化現象の様なモノが起こっていて、狭い敷地の空き家が苦労せずに見つかります。お金のある人はそこで新築するも良いですし、お金が無ければ、リノベーションして単身者に特化させる住宅にして住むのも良いでしょう。
単身者の住環境をどうデザインするか・・・・・これが今後の住宅産業界のキーワードです。