住まい再好築【今どきの家は何故和風住宅が減っているのか】
【工業製品の宿命】
価値の下がらない家。。。。
あれば理想ですが、本当にそんな家ができるのでしょうか。家も他の工業製品と同じく出来上がった新品が最も性能が良く使っていくうちに、どんどん性能が落ちて行きます。車や電化製品と同じ宿命です。メンテナンスを怠れば数十年で寿命を終えます。
【メンテさえしていれば価値は下がらないのか】
メンテナンスを適切に行えば建物の寿命を延ばす事が出来ます。車も車検制度があるから安心して乗ることが出来るのです。では、車検制度さえ受けていれば車の価値が下がらないのでしょうか。実際はいくら車検を受けても年式と走行距離によってどんどん値打ちが下がっていきます。幾ら整備しても流行遅れと云うだけで価値がなくなってしまうのです。
実質的な性能よりも、飽きられてしまえば価値はなくなるのです。
【飽きの来ない家】
ハウスメーカーの家が象徴するように、今の住宅は工業製品の観があります。しかしハウスメーカーが出現するまでの家は大工さんが技を競う、工芸品の趣きあありました。工業製品と工芸品の違いとは何でしょう。工業製品は先に述べたように、出来た当初が最も価値が高いものを指します。工芸品は出来た当初よりも年代を経る毎に価値を高めていくものです。
京都や奈良と云った日本の古都には、築後200年以上を経過する家がザラにあります。それらの家々を拝見していると、住まう人々に愛され続けて来た、家の誇りを感じます。肌色の真新しい柱よりも、煤けて黒ずんだ柱の方が伝統の重みを感じ、手入れの行き届いた住まいは、住まう人の品性すら感じます。
【伝統美を継承する家】
最近クライアントから、「和風の家を設計してくれ」と云うリクエストを多く聞くようになりました。和風住宅は派手さが無く表面に見える柱や梁も塗装しない為、直ぐに変色し今までは敬遠されて来ました。しかし今風の新築当初は派手で綺麗な家でも、時間を経るにつれ飽きられてしまう家に疑問を持つようになったのでしょう。
最近になって耐震性能や温熱性能の大切さが人々に浸透するようになり、耐震性や温熱性は重要なのは大前提として、その上で建物の価値とは何かを人々が考え始めた結果かと考えます。
幾ら柱の色が変色しても、柱の性能が落ちる訳ではありません。自然素材ですので変色して当然、その変色した後に建物としての落ち着きを表現しているのです。家造りを真剣に考えておられるクライアントは故意偶然を問わず、そう云った価値観で建物を考えておられます。