食博の歩き方
10円玉の裏面に描かれていることで有名な宇治の平等院。元々、藤原氏の絶頂期にあった藤原道長の別荘を、息子の頼道がこれをお寺に改修したのが平等院の始まりです。
正面から見て誰もが思うのが左右対称の美。
ヨーロッパではベルサイユ宮殿の左右対称が有名ですが、日本ではこの平等院の右に出る建物はありません。
桂離宮を見て「凍れる音楽」と称した、戦前のドイツの建築家ブルーノタウトがが、平等院を見て「・・・すべてが控えめで日本的な親しみをもっている。」と称えています。
威圧的なベルサイユ宮殿と比較して、同じ左右対称の美でも洋の東西で表現方法に違いがあるようです。
平等院の最大の特徴はなんと行っても左右に張り出した対照的な楼閣。しかし、中央の阿弥陀仏を安置する本堂とは構造的につながっていません。また、用途的にも何の意味合いも持ちません。人が活動出来るスペースがないのです。
中央の本堂は左右の楼閣がなくても完全に自立出来る状態にありながら、無くなったところを想像するとなんとも締まらないデザインになってしまいます。普通のお寺の本堂と比べると明らかに腰高なファサードです。
安置している阿弥陀仏の背の高さにも関係しているのでしょう。
仮説ですが、当初本堂のみを建立してみたものの、腰高である事に気付き慌てて左右の楼閣を取り付けたのではないでしょうか?
こう考えていると、左右の楼閣が構造的に切り離されていること、用途的に全く無意味でデザインだけのために付随されたことも合理的に理解が出来ます。
左右の楼閣も床下を人が歩ける程腰高ですが、左右に広がった分、見た目安定感を増して人々が絶賛するフォルムに仕上がっています。
いやはや、建築の美を追求するのは難しい・・・・