労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いについて

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:法律改正

2019年4月1日より、心身に関する情報の管理について適切な形での収集・保管・使用が義務付けられます。(本人の同意がある場合や正当な理由がある場合は、この限りではありません。)これにより、事業者は、心身の状態に関する情報を適正に管理するための措置を講じる必要があります。
厚生労働省により「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下「取扱規程」)及び「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(以下「手引き」)が公表されました。

<取扱規程の目的>
事業者が、労働安全衛生法に基づき実施する「健康診断」や「ストレスチェック」等で得た心身に関する情報(以下「情報」)は「特に配慮が必要な個人情報」です。そのため、事業場において労働者が安心して、産業医等による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が必要な情報を集め、労働者の健康措置を十分に行えるようにするために、適正に取扱われる必要があります。取扱規程に定めるべき事項・策定の方法・運用等について定めています。
*労働者の業務内容や事業場の状況に応じて適切に運用されることが重要であることから、指針に示す原則を踏まえて運用を図る必要があります。

<取扱規程に定めるべき事項>
①情報を取扱う目的及び取扱い方法
②情報を取扱う者及びその権限並びに情報の範囲
③情報を取扱う目的等の周知方法及び本人同意の取得方法
④情報の適正管理の方法
⑤情報の開示、訂正等及び使用停止等の方法
⑥情報の第三者提供の方法
⑦事業継続、組織変更に伴う情報の引継ぎに関する事項
⑧情報の取扱いに関する苦情の処理
⑨取扱規程の労働者への周知方法

<取扱規程の策定方法>
衛生委員会または安全衛生委員会を活用して労使関与の下で検討し、作成したものを共有(就業規則や社内規程に定る、見やすい場所に備え付ける、イントラネットに掲載等)する必要があります。(取扱規程の検討(策定)は、事業場単位ではなく企業単位でも問題ありません。)
*衛生委員会等を設置する義務がない常時50人未満の労働者を使用する事業場については、「関係労働者の意見を聞くための機会をもうけるようにしなければならない」(安衛法第23条の2)を活用する等により、労働者の意見を聞いたうえで規程を作成し、共有する必要があります。

<運用>
事業者は、取扱規程について、心身の状態の情報を取り扱う者等の関係者に教育を行い、その運用が適切に行われるようにすると共に、運用状況を確認し、取扱規程の見直し等の措置を行うことが必要です。
取扱規程の運用が的確に行われていないことが明らかになった場合は、事業者は労働者へその旨を説明するとともに、再発防止に取り組む必要があります。

<心身の状態の情報の分類と、取扱いの原則> 
〇事業者が直接取り扱うこととされており、労働安全衛生法に定める義務を履行するために、事業者が必ず取り扱わなければならない情報
→すべての情報をその取扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、事業者等が取り扱う必要がある。
【例】・健康診断の受診、未受診の情報
・長時間労働者による面接指導の申出の有無、事後措置について医師から聴取した
意見
・ストレスチェックの結果により高ストレスと判断されたものの面接指導の
申出の有無、事後措置について医師から聴取した意見
・健康診断の事後措置について医師から聴収した意見

〇事業主が本人の同意を得ずに収集することが可能であるが、事業場ごとの取扱規程により事業者等の内部における適正な取扱いを定めて運用することが適当である情報
→事業者等は、当該情報の取扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、取扱うことが適切であり、事業場の状況に応じて、情報を取扱う者を制限する・情報を加工する(目的達成に必要な範囲内で使用されるように変換する)等、事業者等の内部における適切な取扱いを取扱規程に定め、の当該取扱いに対する労働者の納得性を高める措置(取扱いの目的及び方法等について労働者が十分に認識できるよう、丁寧な説明を行う等)を講じた上で、規程を運用する必要がある。
【例】・健康診断の結果(法定の項目)
・健康診断の再検査の結果(法定の項目と同一のもの)
・長時間労働者に対する面接指導の結果
・ストレスチェックの結果により高ストレスと判定された者に対する面接指導の
結果 

〇あらかじめ労働者本人の同意が必要であり、事業場ごとの取扱規程により事業者等の内部における適正な取扱いを定めて運営することが必要である情報
→個人情報保護法に基づく適切な取扱いを確保するため、事業場ごとの取扱規程にのっとった対応を講じる必要があります。
【例】・健康診断の結果(法定外の項目)
・健康指導の結果
・健康診断の再検査の結果(法定外の項目)
・がん検診の結果
・職場復帰のための面接指導の結果
・治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書 

なお、心身の状態に関する取扱規程のひな形が、手引き(以下URL)に記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000494874.pdf

(2019年4月1日現在)

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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