実家の名義が祖父のまま、このまま売れる?

重村裕一

重村裕一

テーマ:不動産相続

「父が亡くなったので実家を売りたい。でも登記簿を見たら、名義が祖父のままでした」
大阪市内で売却のご相談を受けていると、こうしたケースに年に何度も出会います。
先日のご相談者さまも、祖父が亡くなって30年以上、誰も名義を変えないまま、お父さまが住み続けていたご実家でした。

結論からお伝えすると、名義が祖父のままでは売却できません。売るには、今の相続人の名義に変える「相続登記」が先に必要です。
ただ、慌てる必要はありません。順番さえ整理すれば、解決の道筋は見えてきます。

①まず起きていること:相続人が「増えて」います
祖父が亡くなった時点で遺産分割をしないまま、お父さまも亡くなった。これを「数次相続」と呼びます。
この場合、祖父の家を誰が受け継ぐかの話し合いには、お父さまの立場をご相談者さまたち子どもが引き継いで参加します。さらに、お父さまのご兄弟(ご相談者さまから見て叔父・叔母)や、すでに亡くなったご兄弟がいればそのお子さん(いとこ)も加わります。
「家族で決めればいい」と思っていたのが、会ったこともない親戚を含めて話し合う必要が出てくる。ここが一番の壁です。
相続人を確定するには、祖父の出生から死亡までの戸籍が必要です。2024年3月から、本籍地以外の市区町村窓口でも、ご自身や親・祖父母など直系の戸籍はまとめて請求できるようになりました(兄弟姉妹の戸籍は対象外です)。

②「昔の相続だから関係ない」は通用しません
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。施行前に開始した相続も対象で、原則として2027年3月31日までに登記の申請が必要です(相続を知った日などが後になる場合は、その日から3年以内)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
また、2023年4月の民法改正で、相続開始から10年を過ぎると、生前に援助を受けた分(特別受益)や介護などの貢献(寄与分)を原則として主張できなくなりました。祖父の相続はすでに10年を超えていますので、基本は法定相続分を前提にした話し合いになります。

③話し合いがまとまらない、連絡がつかないときは
・ひとまず義務を果たしたい場合は「相続人申告登記」という手続きがあります。相続人の一人が単独で申し出でき、登録免許税もかかりません。ただし、これだけでは売却はできません。
・連絡のつかない相続人がいる場合は、家庭裁判所で「不在者財産管理人」を選任してもらい、その管理人を交えて遺産分割を進める方法があります。
・途中の相続が一人で受け継いだ形になっていれば、一度の申請で今の相続人へ直接名義を移せる場合もあります。どの方法が使えるかは、司法書士に戸籍を見てもらって判断するのが確実です。

実際の現場では、親戚の方に「売却の見込み額」と「手続きにかかる費用」を最初にお伝えすることで、話し合いがぐっと進むことが多いです。いくらになるか分からない話には、誰も印鑑を押しにくいものです。

まとめ
名義が祖父のままの実家は、売る前に「相続人の確定→遺産分割の話し合い→相続登記」という順番を踏む必要があります。時間が経つほど相続人は増え、話はまとまりにくくなります。
登記は司法書士、税金は税理士の領域です。私たち不動産会社は、ご実家がいくらで売れそうか、どれくらいの期間がかかりそうかを正直にお伝えし、ご親族の話し合いの材料をそろえるお手伝いをします。
「うちも名義が古いままかも」と思ったら、まずは登記簿を一度確認してみてください。

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重村裕一
専門家

重村裕一(宅地建物取引士)

株式会社クレアクロス

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