不動産を遺産として相続した時に兄妹や親戚でもめることがある理由
「遺言書はもう書いてあるから、うちは大丈夫」
相続のご相談で、よく伺う言葉です。
ところが、いざ実家を売ろう、名義を変えようという段階で、その遺言書では手続きが進まないことがあります。
先日も、お父さまが手書きで「自宅は長男に相続させる」と書き残されたご家族のご相談を受けました。
登記簿を取り寄せると、自宅の土地は2筆に分かれ、さらに前面の私道の持分もお持ちでした。
「自宅」という書き方で、私道の持分まで含まれると読めるのか。ここで手続きが止まってしまったのです。
今回は、遺言書の「中身」が不動産の手続きにどう影響するかを、3つのポイントでお伝えします。
①不動産は「住所」ではなく「登記簿どおり」に書く
ふだん使っている住所(住居表示)と、登記簿上の「所在・地番」は一致しないことがよくあります。
建物も「家屋番号」で特定されます。
遺言書で不動産を指定するときは、登記事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せ、所在・地番・家屋番号をそのまま書き写すのが確実です。
大阪市内の住宅地では、私道の共有持分や、離れた場所の駐車場用地など、ご本人も忘れている土地がよくあります。
記載から漏れた不動産は、結局、相続人全員での遺産分割協議が必要になります。
固定資産税の課税明細書もあわせて確認しておくと、漏れを防ぎやすくなります。
②自筆の遺言は「形式」と「保管」で差がつく
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分で書き、押印する必要があります(民法968条)。
2019年の改正で、財産目録はパソコン作成や登記簿のコピーでもよくなりましたが、目録の各ページに署名・押印が必要です。
日付が「令和〇年〇月吉日」のように特定できないと、無効になるおそれがあります。
また、自宅で保管していた自筆の遺言は、家庭裁判所での「検認」を経なければ、相続登記などの手続きに使えません。
2020年7月から始まった法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を使えば検認は不要で、紛失や書き換えの心配も減ります(保管の申請手数料は3,900円)。
公証役場で作る公正証書遺言も、検認は不要です。
③「誰に・どう渡すか」の書き方で、その後の売却が変わる
特定の相続人に「相続させる」と書かれた不動産は、その方が単独で相続登記を申請できます。
ただし、法定相続分を超える部分は、登記をしなければ第三者に対抗できません(民法899条の2)。
遺言があるからと名義変更を後回しにせず、早めに登記することが大切です。2024年4月からは相続登記も義務化されています。
さらに、「実家を売って、その代金を子ども3人で等分する」という遺言にしたい場合は、遺言執行者を指定しておくと安心です(民法1006条)。
遺言執行者が売却の手続きを進められるため、相続人どうしで足並みがそろわず売れない、という事態を避けやすくなります。
なお、遺言の内容によっては、他の相続人の遺留分(最低限の取り分)が問題になることがあります。偏った分け方をする場合は、専門家に一度ご相談ください。
まとめ
遺言書は「書いたこと」より「その遺言で手続きが進むか」が大切です。
不動産については、
・登記簿どおりに特定する
・形式を守り、保管方法を選ぶ
・渡し方と、売る場合の段取りまで決めておく
この3点を意識してください。
文案の確認は弁護士や司法書士、税金は税理士の領域です。
私たち不動産会社は、登記簿や現地を確認して「この遺言で漏れている土地はないか」「将来売るとしたら、いくらくらいで売れそうか」をお伝えできます。
書き直す前の確認だけでも、お気軽にご相談ください。
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