梅雨の不動産市場、実は穴場の季節って知ってますか?
こんにちは、クレアクロスの重村です。
今回の忘備録は、高齢のお母さまのマンション売却のご相談で、私があえて手続きを「止めた」日の話です。
ご相談は息子さんからでした。
「母が施設に入るので、大阪市西区のマンションを売って費用に充てたい。手続きは全部こちらでやるので進めてください」
ご家族を思っての、もっともなご相談です。それでも私は、こうお願いしました。
「一度、お母さまとお話しさせてください」
①家を売れるのは「名義人ご本人」だけ
不動産を売るかどうかを決められるのは、登記上の所有者であるご本人です。
お子さんが代わりに署名したり、委任状を用意したりすれば済む、という話ではありません。
民法3条の2では、意思能力(自分のしていることの意味や結果を理解する力)がない状態でした契約は無効とされています。
仮に本人の意思が確認できないまま契約が進めば、後から無効を主張される余地が残ります。そうなれば買主さまにも、ご家族にも大きな負担がかかります。
また、所有権移転登記の場面では司法書士が売主ご本人の本人確認と意思確認を行います。ここで確認が取れなければ、決済当日に手続きが止まることもあります。
②お母さまの口から出た、思いがけない一言
後日、施設の面会室でお母さまとお会いしました。
ゆっくりお話を伺うと、こうおっしゃいました。
「あの部屋は、主人と最後に暮らした家やから。売るのはまだ考えたくないねん」
判断する力はしっかりお持ちでした。ただ、気持ちの整理がついていなかったのです。
息子さんは「母も了解している」と思っておられましたし、お母さまも面と向かって反対できずにいた。どちらが悪いわけでもありません。
私はその場で媒介契約の話はせず、「急いで決めることではありませんよ」とだけお伝えしました。
その後、ご家族で何度か話し合われ、仏壇や思い出の品をどうするかまで決めたうえで、お母さまご本人が「売ってええよ」と納得されたのは約2か月後。
契約の日、お母さまはご自分で署名され、「ちゃんと自分で決められて良かった」と笑っておられました。
③判断が難しくなってからでは、選択肢が狭まる
今回はお母さまご本人に判断能力があったので、時間をかければ前に進めました。
一方で、認知症などで判断能力が十分でなくなった後は、ご家族が代わりに売ることはできず、成年後見制度の利用を検討することになります。
後見人が選任されても、ご本人が住んでいた自宅(居住用不動産)を売るには家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。申立てから売却まで、数か月単位の時間がかかることも珍しくありません。
だからこそ、「親の家をいずれどうするか」は、親御さんがお元気なうちに、ご本人を交えて話しておくことが何より大切です。
■まとめ
不動産の売却は、書類の上では数枚の署名と押印で終わります。
けれど、その家には住んできた方の人生があります。
ご家族からのご相談であっても、私は必ず「名義人ご本人の言葉」を聞くようにしています。それが、法律上のトラブルを防ぐことにもなり、何よりご本人の気持ちを守ることにもつながると、この仕事で学びました。
ご両親名義の不動産のことで迷っておられる方は、まず「お母さん(お父さん)はどうしたい?」と、ご本人に聞いてみてください。そこから先の進め方は、一緒に考えさせていただきます。
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