一流ホテルに学ぶ、不動産接客3つの気づき
不動産の仕事を続けていると、うまくいった話よりも、自分が間違えた日のことのほうが、はっきりと記憶に残ります。
今回は、私自身が確認を誤り、引渡しの前日にお客さまのところへ頭を下げに行った日の話を、忘備録として残しておきます。恥ずかしい話ですが、同じことが誰かの取引で起きないようにという気持ちで書きます。
①「たぶん大丈夫」と思った時点で、もう間違えている
あるご夫婦が中古マンションを購入されたときのことです。ご主人が車をお持ちで、「駐車場は空いていますか」と早い段階で聞かれました。
私は売主さまから「今は空きがあると聞いている」という話を伺い、その内容をそのままお伝えしてしまいました。管理会社に書面で確認を取ったわけではなく、人づてに聞いた話を、確認したつもりになっていたのです。
結果として、契約後に管理組合へ正式に照会したところ、駐車場には待機の申込みが複数入っており、すぐには借りられない状態でした。それが分かったのが引渡しの直前です。
駐車場の空き状況は、それ自体が宅地建物取引業法第35条で必ず説明しなければならない法定の項目というわけではありません。ただ、お客さまが購入を決めるうえで重要な判断材料だと分かっていながら、不確かな情報を確かなことのように伝えたのは、私の落ち度です。宅建業法第47条は、契約の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げないことや不実のことを告げることを禁じています。悪意がなかったから許されるという話ではありません。
②謝りに行くときは、言い訳より先に「事実」を置く
翌日、私はご夫婦のご自宅に伺いました。そのとき自分に課したのは、順番を間違えないことだけでした。
最初に、誤ってお伝えした内容と、正しい事実。次に、なぜそうなったのかという原因。そして最後に、これからどうするかという提案です。
「売主さまがそうおっしゃっていたので」と口にしたくなる気持ちは、正直ありました。けれど、原因の説明を先に出すと、それは説明ではなく言い訳になります。お客さまが最初に知りたいのは、誰のせいかではなく、自分たちがこれからどうなるのかということです。
そのうえで、近隣の月極駐車場を私のほうで五件ほど当たり、料金と空き、契約条件を一覧にしてお持ちしました。管理組合の待機順位についても、書面で回答をもらい直しました。
ご主人からは「先に言ってくれたからよかった」と言っていただきましたが、それは私の手柄ではありません。本来は、先に調べておくべきことでした。
③ミスを減らすのは、気合ではなく仕組み
この一件から、私は自分の中でひとつの基準を決めました。お客さまに伝える情報は、必ず一次資料まで戻る、ということです。
分譲マンションであれば、管理規約と使用細則、直近の総会議事録、管理会社からの管理に関する重要事項調査報告書。土地であれば、法務局の公図や地積測量図、登記事項証明書。そして最後は、自分の足で現地を見ること。
大阪市内、特に西区や中央区のように築年数を重ねたマンションが多く流通しているエリアでは、駐車場やバイク置場、駐輪場の空き、ペットの飼育可否、リフォームの範囲といった「住んでから効いてくる条件」が、管理規約や細則の中で細かく決まっていることが少なくありません。パンフレットや募集図面の一行だけでは分からないことばかりです。
「聞いた話」を「調べた事実」に変える作業を省かないこと。これだけで、防げるトラブルの大半は防げると思っています。
まとめ
不動産会社が完璧だとは、私は思っていません。人がやる仕事である以上、間違いは起こります。大事なのは、間違えないふりをすることではなく、間違えたときに隠さず、早く、順番を守って伝えることだと考えています。
もし今、どこかの物件の購入や売却を検討されているなら、担当者に一度こう聞いてみてください。「それは、どの資料で確認された内容ですか」。
その場で資料名が出てくるか、「確認しておきます」と言えるか。そこに、その担当者の仕事の丁寧さが表れます。即答を取り繕う人より、調べ直すと言える人のほうが、私は信頼できると思っています。
私も、あの日のことを忘れないようにしています。
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