深夜帰宅、翌朝、理不尽に怒られる
不動産の仕事をしていると、契約直前で話が止まってしまう場面に何度も出会います。今日は代表としての忘備録がわりに、あと一歩で破談になりかけた取引が、ある小さな一言で動き出したときの話を正直に書いてみます。
①「金額」でもめていた、はずだった
数年前、あるご夫婦が中古マンションの購入を進めていました。売主さんも売却に前向きで、条件はほぼ整っていた。ところが最後の最後、数十万円の値引きをめぐって双方が譲らず、契約が止まってしまいました。
金額の話に見えて、実はそうではないことが現場では少なくありません。買主のご主人はこう言いました。「値段よりも、本当にこの家で大丈夫なのか、誰も背中を押してくれない」。不安の正体は、お金ではなく“決めきれなさ”でした。
②数字ではなく、不安に向き合う
私はあえて金額の交渉をいったん脇に置き、奥様が気にされていた水回りの状態や管理組合の修繕計画を、売主さん立ち会いのもと一つずつ確認してもらいました。宅地建物取引業法でも重要事項の説明は義務ですが、大切なのは“書面を読み上げること”ではなく、相手が納得できる形で伝わっているかどうかだと思っています。
売主さんも、長く住んだ家を大切に使ってくれる人に渡したいという思いから、過去の修繕の記録を丁寧に見せてくださいました。
③動いたのは、たった一言
最後にご主人がぽつりと「この家、ちゃんと手をかけて住まれてきたんですね」と口にした瞬間、場の空気が変わりました。売主さんが「だからこそ、気持ちよく引き継いでほしい」と応じ、金額の話は自然とまとまったのです。
私は特別な交渉術を使ったわけではありません。数字の裏にある不安と思いを、双方が言葉にできる場をつくっただけです。仲介の本当の仕事は、価格を詰めることではなく、人と人の納得をつなぐことだと、改めて教わった一件でした。
■まとめ
取引が止まるとき、原因は金額そのものではなく、その奥にある不安や思いであることが多いものです。肩書や交渉力よりも、相手の言葉に耳を傾ける姿勢こそが、最後のひと押しになる。これからも、そんな現場を大切にしていきたいと思います。
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