男と女は脳がちがう
心が通う言葉と、耳を傾ける姿勢
昔のことですが、友人宅にお邪魔した時の話です。
奥さんに「ご主人のどんなところに惹かれたの?」と尋ねると、少し恥ずかしそうに、けれどとても嬉しそうな笑顔でこう答えてくださいました。
「どんなときでも、手を止めて私の話を聴いてくれるんです。」その返答だけで、ふたりの間に流れる信頼や安心感が伝わってきました。どんなに忙しくても、相手の声に耳を傾ける姿勢は、“大切にされている”という感覚や存在感を伝えてくれるのかもしれませんね。
ご主人にも同じことを尋ねてみると、返ってきたのはこんな言葉でした。
「もしかすると、それがとても大事な話かもしれないから。」
相手の気持ちや状況を想像し、それを当たり前のように行動に移せる人。奥さんを「綺麗だね」と自然に褒め、誰の前でも目を見て話す姿に、「自分の気持ちを素直に伝えること」は特別な才能ではなく、日々の信頼の積み重ねで育まれていくものなのだと感じさせられました。
「こんな人と出逢いたい」その想いが動かす現実
さらに奥さんは、こんなふうにも話してくれました。「実は、こういう人と出会いたいって、心の中でずっとイメージしてたんです。そしたら、本当に出会えたんですよ。」
これはまさに、「引き寄せの法則」の実例なのかもしれません。自分の中にある理想を明確にし、その理想にふさわしい自分であろうと心がけていたからこそ、巡り合えたご縁。人との出会いや関係は、偶然のようでいて、実は日々の思考や行動が少しずつ編んでいく必然の糸なのかもしれません。
ふたたび言葉が行き交うようになるために
今、3組に1組の夫婦が離婚すると言われる時代。昔はあんなに話していたのに、いつの間にか会話がなくなった――そんな声も少なくありません。でも、たとえ沈黙が続いていても、そこからまた関係を育て直すことはできると私は思います。大きなことではなくていい。まずは、“相手の言葉をやわらかく受けとめて返す”という、小さな工夫から。
例えば、
奥さん:「○○したけど、つまらなかったの」
ご主人:「○○したけど、つまらなかったんだね」
これだけのやりとりでも、「ちゃんと聴いてもらえた」と感じるものです。同じ言葉を繰り返すだけのようでいて、声のトーンや間合いによって、そこに込められる思いやりはまったく違ってきます。
すると自然に、「なぜそう感じたのかな?」「何があったのだろう?」と、興味や対話が芽生えていく。まさに、言葉を交わすきっかけの種になるのです。思考のクセを整える、日常の言葉の選び方やどんな言葉を自分に使っているかも、夫婦関係を整える大切なポイントではないでしょうか。
理想の夫婦関係は、遠くにある理想郷ではなく、日々の小さな積み重ねの中に育まれていくもの。すれ違う日があってもいい。何も話せない夜があってもいい。でも、「また話してみよう」「聴いてみよう」と思える心の余白を、ふたりの間に持ち続けること。それが、何よりの絆になるのだと思います。



