一番観えてないのはあなた
「どうして分かり合えないんだろう」と感じることはありませんか。
家族、友人、職場の誰とでも、そんな経験は珍しくありません。でも、それは「分かろうとしていない」からではなく、そもそも見えている世界が違うから生じるものです。このコラムでは、その「視点の違い」を理解し、コミュニケーションをより円滑にするヒントをお伝えします。
同じものを見ても、同じようには見えない理由
美術館で同じ絵を見ても、人によって感想が違うことがあります。
「この青が本当に美しい」
「人物の表情に心を奪われた」
「この絵の背景をもっと知りたい」
同じ絵を見ても、注目するポイントは人それぞれです。これは、自分の興味や経験を通して世界を見ているからです。心理学では「注意の偏り」と呼ばれています。脳は膨大な情報から、自分にとって重要なものだけを選んで処理する「フィルター」を持っています。
例えば「白いシャツの人がパスする回数を数えてください」という実験映像では、途中で熊の着ぐるみが横切っても多くの人が気づきません。私たちは「見たいものしか見えない」という性質があるのです。相手とのすれ違いも、このフィルターの違いから生まれます。
日常に潜む視点の違い
こうした違いは特別な場面だけでなく、日常の会話にも表れます。
職場での例
営業:「お客様の反応は?」
エンジニア:「システム性能は問題ない?」
デザイナー:「見た目の印象は?」
同じプロジェクトでも注目するポイントが異なります。
家庭での例
お母さん:「栄養バランスは大丈夫?」
お父さん:「値段はどう?」
子ども:「美味しそう?楽しい?」
同じ夕食の話題でも関心ポイントがバラバラです。「分かってくれない」と感じるのは、実際には「見ている世界が違うだけ」なのです。この「フィルターの違い」を理解するだけで、コミュニケーションは驚くほど変わります。以下の4つのステップを試してみてください。
1. 相手の世界を知ろうとする
どんな話題で目が輝く?
SNSでシェアする内容は?
休日の過ごし方は?
観察するだけでも会話のヒントが得られます。
2. 気軽に質問する
「最近ハマっていることは?」
「面白かったことは?」
といった軽い問いかけで、相手の関心を知ろうとすると自然に会話が広がります。
3. 共通する感覚を見つける
同じ趣味でなくても、根底の感覚でつながれます。
音楽と料理 → 創作の楽しさ
旅行と読書 → 新しい世界を知る喜び
スポーツと手芸 → コツコツ続ける満足感
4. 相手の言葉で伝える
同じ内容でも相手に合わせた表現を工夫します。
数字好き:「効率が20%上がる3つのポイントがあるよ」
感情重視:「みんなが喜んでくれると思う」
実用重視:「業務がぐっと楽になるよ」
今日から試せるヒントとして、おすすめは、家族や友人と同じ映画を観たあとに感想を聞くことです。
「どのシーンが印象に残った?」
「どのキャラクターが気になった?」
「この映画の魅力は?」
注目ポイントの違いを「面白いね」と受け止めるだけでも関係は深まります。
まとめとして、「なんで分かってくれないの?」という思いを「なるほど、そんな見方もあるんだ」に変えてみましょう。人それぞれのフィルターを理解し、相手の世界を知ることで、コミュニケーションはもっと豊かになります。ぜひ、次の会話で試してみてください。



