自分を受け入れる 第2章.1
他人の評価が気になるのは自然なこと。
でもそれが自分らしさを失わせていないか――過去の自分を振り返りながら、心の整理法をお伝えします。
「他人の評価なんて気にしない」そう言えたらどれだけ楽だろう。かつての私は、頭ではそう思いつつも、心はずっと評価に縛られていました。
このテーマを考えるきっかけになったのは、先日パートナーと交わした会話でした。「昔の自分って、いつも人の目を気にしてたよね」そんな言葉に、過去の自分の姿が鮮やかに蘇ってきたのです。
私は長年、建築の仕事に携わってきました。ある時期、仕事が思うように進まず、受注も減ってしまったときに、焦りが募りました。「大きな建築コンペで賞を取れば、また周囲から認められる」そう思って、本来向き合うべきことを後回しにし、“賞を取ること”が目的になってしまったのです。
いつしか私は「過去の実績」や「外からの評価」だけを拠り所にしていました。そんな自分にブレーキをかけてくれたのが、今のパートナーです。彼女の率直な言葉に、自分の中の「評価への執着」に気づかされ、本来の自分らしさを取り戻すきっかけとなりました。
評価に縛られる心理の背景
「他人からどう見られるか」を強く意識してしまうとき、私たちの内側ではこんな思考が働いています。
よく思われたい(=自己肯定感が揺らいでいる)
バカにされたくない(=劣等感がある)
このような“他人の目”を気にする感情の正体を、心理学では「対人認知欲求」と呼びます。それが強い人ほど、自己評価の軸が外にあり、自分自身の価値を実感しにくくなってしまうのです。けれど、それは「ダメなこと」ではありません。むしろ、その感情の奥にある“本当の願い”を見つめることが、変化の始まりになります。
魔法のように効いた一言
私は年齢のわりに、素直だと言われます。たとえ年下から意見を言われたり、自分と異なる考えをぶつけられても、「それも一つの考え方やね」と、できるだけ受け止めるようにしています。
最初は葛藤もありました。でも、この一言を口に出すだけで、驚くほど相手との距離が縮まることに気づいたのです。「その考え方も、ありやね」この言葉には、相手を認める力があります。自分にも「正解は一つじゃない」と教えてくれます。
ぜひ、一度使ってみてください。
【小さな実践】
モヤモヤした時、まずはその感情の奥にある思いを問いかけてみましょう。
なぜこんなに気になっているのか?
本当は、どう感じているのか?
そして、出てきたネガティブな感情も、「自分を守るために湧いてきたものかもしれない」とリフレーミングしてみる。それだけでも、心の余白が少し生まれます。
評価は、あってもなくても揺らがない自分になるための通過点。
あなたの「心の軸」を少しだけ、自分の方へ戻してみませんか。



